プロローグ
新連載です。よろしくお願いします。
リアクション、ブックマーク、評価が本当に励みになっています。 一つひとつの反応に力をいただいています。
「私が君を求めることは――」
新婚初夜に、予想通りの言葉。
「旦那様!申し訳ありません……!」
この言葉を“予言”され、知っていた私。
『初夜では、俺をボコボコにしてくれ。……よし、次は踵落としだ!』
なぜか猫になって、未来から止めに来た旦那様。
これは、“夫のやらかし(予定)初夜”から、幸せな結婚生活へ向けて動き出した三人(のち一匹)の物語である。
◇◇◇
――初夜の夫婦の寝室。
旦那様はノックの音と共に現れた。
レイナルト・ヴィセルク伯爵。
そして新婦の私、クララ・ルノー改め、クララ・ヴィセルク夫人になりました。
そう、今日から人妻なのです。
私が夫人。なんとも不思議な気分です。
旦那様は、金髪に緑眼の貴公子として有名でした。
――少なくとも一般的には。
確かに、初めてお会いしたときは胸が躍ってしまいました。
そして今。
旦那様は、見たこともないような不機嫌そうな表情で現れた。
『貴公子?そんな評判は嘘っぱちだから気をつけろ』
頭の中で、一匹の猫が語った言葉が再生された。
(確かに、“彼”の言う通りですね)
なら、次に出る言葉は――。
“彼”の予想通りなはず。
「私が君を求めることは――」
きたー!ここだわ!
ぎゅっと拳を握り込む。
旦那様は目を閉じ、整った眉を寄せ、深刻そうな顔で話し始めた。
想定通りだ。
「旦那様!申し訳ありません……!」
ドゴォ!
想像以上に大きな音がした。
「ない……ぐほぅッ」
硬い!腹筋!?
うわぁ。人を殴ると、自分の指も痛いんだ。
知りませんでした。
噂通り『お前を殴る俺のほうが痛い』は本当でした。
「……ごめんなさい。これも仕方がないんです」
鳩尾を押さえて蹲る旦那様に謝りながら、私も痛む手をぷらぷらと振る。
うん、突き指はしていない。
「き、君は……いったい……何を……」
旦那様――レイナルト様は、息を切らせて私を見上げる。
あら?まだ話せるようです。
どうするべきか。
「“ニャン旦那様”次はどうするのですか?」
私は、足元にいる猫に話しかけた。
猫は緑色の目をきらりと光らせ、一瞬だけ私に視線を向ける。
そして、レイナルト様を睨みつけた。
『よし、殴るのはもういい。君の手が心配だ』
「まあ……。私を心配してくださるの?」
目の前のうめき声よりも、私を心配してくれる猫ちゃん。
心がほっこりしてしまう。
金茶の毛並みを撫で撫でしたい。
『……踵落としだ』
「え。やったことがありませんが……」
ただの蹴りでもいいかしら?
しかし、ニャン旦那様ったら容赦がない。
次はどこを狙えばいいのか。
お顔だと、翌朝に大騒ぎになるわ。
大喧嘩疑惑は、私もニャン旦那様も望んでいませんし。
じゃあ、足がいいかな。
仕方がない、脛か。
ここは、心を鬼にして――。
「待て待て待て!悪かった……!話し合おう!」
「……えーと。どうしましょう」
『どうせ、ろくな事は言わないぞ。手加減無用!』
パシパシ!と尻尾で床を叩きながらニャン旦那様が指示を出した。
うん、なるほど。
彼“本人”がそう言っているなら。
意を決して――。
「すまなかった!先程の態度は本当にこちらの落ち度だ!……しかし、なんだその猫!喋っているじゃないか!?」
レイナルト様は、足を振り上げた私を慌てて止めた。
実に素早い動きだ。
不意打ちじゃなければ、最初の一撃も避けられていたかもしれない。
“ニャン旦那様”がタイミングを教えてくれて良かったです。
さすが、ご本人なだけあります。
「えっとですね……。未来から来た貴方らしいです。なので“ニャン旦那様”と呼んでおります」
レイナルト様が、困惑気味に固まった。
「は?」
そんな彼の表情も気にせず。
ニャン旦那様は、とん、とサイドテーブルの上に乗った。
窓から差し込む月明かりに浮かび上がる、猫のシルエット。
緑色の瞳が冷たく光る。
それはまるで、すべてを見透かしているような視線だった。
レイナルト様が、息を呑んだ。
思わず私も、ニャン旦那様に魅入ってしまった。
『俺は二年後の未来から来た。レイナルト――お前自身だ』
レイナルト様(24)
例のごとく、私のヒーローは"イメケン(イケメンっぽい何か)"ですが、『どこか憎めない』を目指しております。(言い訳です)
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
もし物語を楽しんでいただけましたら、
★やブックマークで応援していただけると励みになります。




