そしてふたりは 1
「王配殿下」
と、父がクラーエスのことを呼んだ。
父、現アールストレーム世襲一等公爵と、その近衛の同期たちの夕食会の席でのことだった。
クラーエスがウルリーカ姫と結婚すれば、クラーエスは王配殿下と呼ばれる身となる。だが、まだ公式に決まっていないうちからそう呼ぶのは、気が早い。
この夕食会は、クラーエスを未来の王配にする盟友の会なのだった。
クラーエスは父と同年配の貴族たちや有力者たちの顔をひとつひとつ、さりげなく見回した。
ファルク男爵の顔がある。アルノルドの父ヴェステルベリ伯爵もいる。ベルツ卿が話し込んでいるのはダール子爵だ。
彼らの顔、彼らの言動。
よく見覚えておき、慎重に吟味し、心に留めていく。
「期待しておりますぞ、王配殿下」
ある侯爵がにこやかに握手を求めてきたので、それに応じながら、
「期待されることには慣れております」
と答えておいた。
夕食後、酒とパイプのくつろぎの時間、一人でソファに腰掛けていると、父が隣にやってきて息子を感心したような、値踏みするような、探るような目で眺めてきた。
「腹が決まったようだな」
「ええ」
「頼もしい」
「わたしはわたしの決意に従いますよ」
父がパイプをくわえなおし、一服した。
「ふむ、決意とは? どのような決意かな?」
「まず、姫と結婚したい」
「それはよい。うん。よい。それから?」
「今は、まだ、秘密です。何者でもないうちから語っては、ただの大言壮語だ」
「気宇壮大でよいではないか。ここにいる仲間たちも盛り上がる」
父が、パイプをくゆらせ酒盃をかたむけながら話し込む自分の仲間たちを顎で示す。
「その役目は、姫の方がお得意かもしれませんよ?」
「ほお? そうなのか? なるほど。そして、両脇でわたしたち父子が、ふむ、協力する」
父は、姫を操ると言おうとし、言葉を変えたと、クラーエスは確信した。
「で、もしや、わたしたちは対立する場合もある、のかな?」
「やむを得ぬ場合には」
即答すると父はしばし黙ってから、口角を上げてうなずいた。
「その時は、お手柔らかに頼みますよ。王配殿下」




