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そしてふたりは 2

 朝、アルノルドが近衛の控え室の扉をせわしなく叩いて、緊急事態を告げた。

「姫が行方不明だ」

 クラーエスは即座に立ち上がった。

「侍女が起こしに行くと、ベッドに姿がなかったらしい」

「またか」

 誰かがつぶやく。

 朝一番から、と()んだ顔をした近衛たちだったが、

「さ、これも通常業務だ」

 マグヌスがおどけたように言うと、みな失笑し、いっせいに部屋を出て心当たりへ散っていった。

 クラーエスは姫の部屋に向かい、慌てている侍女たちを確かめた。

 姫はどこへ向かわれたのだろうか。

 早朝の廊下を見渡す。とにかくクラーエスは歩き出した。しばらく城内を巡っていたら、あそこだ、と誰かが耳元でささやいたかのようにひとつの場所に思い当たった。

 すぐに(きびす)を返すと、登城してきた様々な宮廷官とすれ違い、東側に並んだ窓から朝日が輝やかしく注いでいる廊下を、城の最上階の懐かしい扉まで歩いて行った。


 「マグヌス。せっかくだから、この機会に話しておく」

 アルノルドとマグヌスはつるんで前庭を歩いていた。姫を探して城門へ向かう道すがらだった。

「クラーエスの父上が追放から帰都されたのは知っているな?」

 アルノルドは小声で言った。

 胡乱(うろん)な話が始まる、と察したマグヌスはうなずいて、さりげなく遠くへ目をやった。

「現世襲一等公爵さまは、国王の重鎮だった左右のまなこ、どちらも亡くなられて今は空白となっている宮廷での権力を、掌握(しょうあく)するおつもりだ。我が家は公爵家につく」

 言って、アルノルドが同僚の胸元を指差した。

「マグヌスもよく心づもりしておくんだ。いずれ、旗幟(きし)鮮明(せんめい)を迫られる日が来る」

 マグヌスは目をまたたいた。前をゆく近衛の同期の背中が、これまでになくたくましく感じられるではないか。

「ああ」

 とうとうその日が来たのだ。マグヌスは自分につぶやいた。

「俺たちの青春は終わるんだな」

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