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【4/1書籍発売&コミカライズ連載中】死に役はごめんなので好きにさせてもらいます  作者: 橋本彩里
第二部

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葛藤 sideデューク


 まずはユリシーズを捕まえ事情を説明し、彼にヨネバミア国側の連絡は任せ、もしもの時のために連携がとれるようにテレンスに話をつけ、デュークは教室に戻った。

 しばらく落ち着かなく窓の外を眺めていたが、時計に視線をやりフェリシアと約束の時間になったことを確認する。だが、フェリシアが戻って来る気配はない。

 捜しに行くべきかと教室を出たところで、ユリシーズと一緒にベンがこちらにやって来るのが見えた。


「そこでベンと出会ったが、彼はイレイン殿下と一緒にいたらしい」

「事情は聴きました。オルブライト嬢は見ていないですが、イレイン殿下でしたら先ほどまで一緒にいましたよ。それから通りかかったウォルフォード殿の弟君が、セラフィーナ嬢のところに送り届けると申し出てくれましたので任せました」


 ザカリーといるならば、イレイン王女のほうは大丈夫だろう。ひとまず安心だと息をつく。

 夢ではピンクローザの窃盗事件の後、街に出ているところでイレイン王女は誘拐されていたため、学園内ではあるが時期も時期なので気が気でなかった。


「なら、一年のクラスにまず出向こう」

「ここで待たなくても?」

「フェリシアが理由もなく時間を越すとは思えない。イレイン殿下と出会えないまま、不測の事態が起こったのかもしれない」


 一刻も早く王女の安否確認とともに、ザカリーたちにも協力を得るべきだろう。デュークは時間が惜しいと動き出した。

 それからイレイン王女の無事を確認し、ザカリーに事情を話し、王女の護衛の一人に三年の教室で待ってもらい、デュークはユリシーズたちと庭園まで足を運んだ。


 自責の念に駆られたイレイン王女もついてきて、王女を心配したザカリーも一緒に移動する。

 びゅうっと冷たい風が頬を打つが、フェリシアへの心配が勝り寒さなど気にしていられない。


「どうしてここに?」

「勘だ」

「勘……」


 ユリシーズにこいつ大丈夫かと向けられた視線を無視して、デュークはそのまま歩く。


「兄さんのフェリシアを見つける技術? はここ最近かなり磨きがかかっているので、問題ないと思いますよ」


 ザカリーは兄の行動に慣れたもので、勝手なことをしたからと落ち込むイレイン王女を励ましていた。

 イレイン王女は庭園に行っていないと言っていたからこそ、これまでの話からこの場所を捜す可能性もあるのではないかと考えた。あとは勘だ。


 少しでも早くフェリシアの無事を確認しないと落ち着かず、フェリシアのことばかりを考え感覚が研ぎ澄まされたデュークの歩みに澱みはない。

 ざっと見た感じ人の気配はないが、どうしてもこの場を立ち去ることを心身ともに拒む。

 何かあるはずだと視線を下にやった際にきらりと反射する物を見つけ、デュークは屈んで拾い上げた。


「これを」


 フェリシアの物ではないが、中央にあったであろう欠けた石以外は高価な宝石。

 身に覚えがないだろうかとユリシーズに見せると、彼ははっと目を見張った。その横で、同じように視線を投じたイレイン王女が声を張り上げた。


「セラフィーナのブレスレットよ。彼女はそれをとても大事にしていてメンテナンスも欠かさないし、落ちたことに気づかないはずはないわ」


 その返答にデュークは眉を寄せた。


「なぜ、それがこんなところに?」


 もしものことを考えると思考が停止してしまいそうで、デュークはこの先のことを思案するため注意深く周囲を見渡した。

 ずっと葛藤していた気持ちが今にも溢れ出しそうで、手のひらに爪を立てた。激しそうな気持ちを無理やり鎮めようとするが、そうすればするほど荒れ狂う。

 やっぱり一緒にいなかったからこんなことになったのか。


 ――何がなんでも一緒に行動するべきだった……。


 夢を見出してから、ずっとフェリシアのことが心配だった。

 フェリシアの行動を制限しても常にピンクローザの存在は付きまとい、窃盗事件を防げずフェリシアを落ち込ませてしまった。


 夢見の話をし、信じてくれたフェリシアの意図を汲むべきだと思った矢先のことだった。

 どうしてうまくいかないのかと、肝心なときに守れないでどうするのだと、脳が沸騰しそうなほどあらゆる思考が錯綜(さくそう)する。


 どうしても付きまとう不安を押し出し、今は手がかりを見つけるのだと周囲を注視する。

 ブレスレットが落ちていたところだけ、ほかのところに比べ葉が落ちている。もしかしてとデュークはずいっと身体を入れ、その先の向こうの光景に絶句した。


「道が繋がっている……」

「えっ? 隠し通路のようなもの?」

「どこに出るかで変わるが、このような物があることを俺は一度も聞いたことはない。これが外に繋がっていたら最悪だ」


 デュークは睨むように通路の先を見た。

 イレイン王女たちはここに残るように告げ、もしものことを考え騎士たちを校門前に配置するように伝える。

 急く思いで身体を入れ込み、通路を走った。ユリシーズもついてくる。


「どこまで行くと思う?」

「行き止まりであることを願っているが、痕跡があるのにフェリシアたちがいない今は外に出る可能性のほうが高い」


 土や草など長らく人が通っていなかっただろう荒れた細い道には、真新しい足跡が二つずっと続いていた。


「そうか……。つまり攫われた可能性があるんだな。どちらかが狙われていたのか、誰でもよかったのか」

「……」


 言葉にすると現実になりそうで、デュークは避ける。ただ、今は少しでも早くこの足跡に追い付き、フェリシアのところにたどり着くことだけを考える。

 最悪なことに道は学園の外へと続き、デュークは門まで走ると待機していた騎士に剣を借り、ある建物へと向かうように告げた。



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