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なぜか、ふわふわもふもふが、みんな私に使役する  作者: まくのゆうき


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ハリィの嫉妬

とりあえず現状を団長に報告したセルビアたちだが、現時点で何も起こっていないためどうすることもできない。

得られたのはこのウサギをとりあえずここにおいていいという許可だけだった。


「まだ子供なのかな。小さいよねぇ。真っ白でふわふわだぁ」


セルビアとニコルがそう言ってウサギの背中を撫でている。

最初はおびえていたウサギだが、ハリィやグレイが近くにいるからか、危害を加えられる心配のない相手と認識したのか、はたまたあきらめたのかわからないが、体を丸めて小さくなりながらも二人におとなしく触られている。



しばらくそうしていると、ハリィが急になぜかおなかを見せて寝転がった。


「ぴぴっ!」

「ハリィ、どうしたの?」


急にあおむけのような状態になったハリィにセルビアは驚いて声をかけた。

具合が悪いわけではなさそうだが、ハリィはおなかを出した状態で顔をこちらに向けて様子をうかがっている。

腹筋を頑張ってみたけれどうまくできていない子のようになっている。

亀のようにひっくり返って起き上がれなくなってしまったのかなど、余計なことを考えて困惑するセルビアにニコルが言った。


「もしかしておなか触っていいって言ってるんじゃない?」

「そうなのかな。でも急にどうしたんだろう?」


これまでそんなことはなかった。

でも今、目の前のハリィは転がったままだ。


「うーん、わかんないけど、私たちがウサギさんばっかり撫でたり褒めたりしてるから嫉妬したのかもしれないね」


ハリィの場合、大半はグレイの背中に埋まるように乗っかっていたし、グレイのようにセルビアにすり寄ってくることもなかった。

ウサギさんから注意を引こうとしているのかもしれないけど、それがウサギのためなのか、自分のためなのかもわからない。


「そうなのかなぁ」


自分で考えているものがどれもしっくりこないとセルビアが首を傾げながらも、とりあえずセルビアは思ったことを口にする。


「っていうか、ハリィ、おなかの毛は真っ白なんだね」

「ぴぴっ」

「ウサギさんと同じだってことかなぁ?」

「くぅ~ん」


もしかしたら真っ白なウサギと自分のおなかは同じだよと言っているのかもしれないと、思い付きを言ったセルビアに、グレイが苦言を呈するように鳴く。


「グレイが違うって言うなら、ニコルちゃんの言ってることが正解で、ただのアピールじゃないのかも。触ってみようかな。ハリィ、嫌だったら逃げるんだよ?」


セルビアがそう言ってハリィに手を伸ばす。

そしてなでてやると気持ちよさそうに目を細めた。


「ぉぉ。こっちもふわふわだぁ」

「ぴぴっ!」


少しの間おなかに触られていたハリィは、急に体制を変えていつもの通りとげとげの背中を見せた。


「もしかして背中も触っていいよってこと?痛そうなんだけど」

「ぴぃ~」


ハリィがセルビアの言葉にしょんぼりとした鳴き声で答えると、突然グレイがハリィの背中に前足を乗せた。

それに慌てたのはセルビアだ。


「ちょっとグレイ?」


ハリィがつぶされても困るし、グレイが怪我をしても困る。

セルビアが慌ててハリィを見ると、ハリィの様子は変わらない。

そしてグレイの方を見ても同じだ。

でもそれが何を示しているのかわからず、セルビアが困惑していると、今度はハリィの背中にグレイが顔を寄せてすりすりし始めた。

そこでようやく、グレイのくっついたところの毛が一緒に倒れていることに気が付いた。


「あ、もしかして、触っても大丈夫ってこと?」

「わぅわぅ!」


どうやら背中も触って問題ないらしい。

グレイは撫でるしぐさをしようとするが、さすがにうまくは撫でられないらしい。

押してるか突っついているか、そんな状態だ。

それを見たセルビアが思わずニコルに助けを求めると、ニコルは笑った。


「ゆっくりっていうか、静かに触ってみたら?もし手に当たって痛かったらやめればいいんじゃないかな?」


いきなりわしゃわしゃ触って間違っていたら痛いかもしれないが、それならば様子を見ながら触ればいい。

ニコルの言うことはもっともだ。

そこでセルビアは恐る恐るハリィの背中に手のひらを近づける。


「そっか。あれ?確かに痛くないね。もしかしてずっと撫でてほしかったの?」

「ぴぴっ」


セルビアが恐る恐る針のところに触れると、それはただの毛の塊で、痛くない。

普段から悪いものを寄せ付けないようトゲトゲしているハリィの毛も、警戒していなければ硬くなることはないようだ。

そうしてハリィを撫でながら、セルビアはふとグレイとハリィが戯れている様子を思い浮かべる。

ハリィは確かにふだん、グレイの背中に乗っている。

でも乗る時や下りる時、もしハリィの毛が痛かったら、グレイはハリィをちょくちょく背中に乗せたりはしていないかもしれない。

特に下りる時、ハリィはグレイの背中から滑り台のように下りている時がある。

背中を当てて滑っている時に針が当たって傷がついていたら、翌日グレイが血まみれになっていたはずだ。

もちろん、夜中にグレイが出かけることを知ってから、セルビアは朝、グレイを撫でるついでに体に傷はないか、怪我はしていないか、しっかり見るようにしている。

つまりグレイとハリィに関してはこれまで問題がなかったということになる。


「そっか。ごめんね。てっきり触られるの嫌なのかなって思ってたから」


そう言ってセルビアがハリィの背中を撫でると、ハリィは満足そうに鳴いて、しばらく続けるとおとなしくなった。


「二匹とも寝たのかな?」

「そうみたいだね」


結局ハリィと隣にいるウサギは並んだまま動かなくなった。

特にウサギは疲れていたのかもしれない。

ここが安心できる場所だと認知されたのなら嬉しい限りだ。


「じゃあ、このままにしておこうか」

「わぅわぅ」


セルビアが声を潜めてニコルに言うと、代わりにグレイが答えた。

セルビアの声に合わせてか、鳴き声は小さめだ。


「グレイもありがとね」

「わぅっ」


とりあえずいつもの調子に戻ったところでニコルが立ち上がった。


「じゃあ私も戻って寝るよ。何かあったらいつでも起こしてくれていいから」

「うん。ありがとう。おやすみ」


状況が落ち着いたと判断したニコルは、自分の部屋に戻っていった。

そしてセルビアも体を横たえるとそのまま睡眠モードの入ったのだった。

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