気づいたら俺と仲良しっつ!
そんなこんなで、
娘の恋人は、どうやら――
オタクになってしまったらしい。
最初は、
「調べてみました」
その程度だった。
次は、
「設定資料って、あるんですか」
になった。
そしてある日、
娘抜きでLINEが来た。
《サクラ大戦って、何作目までが正解ですか?》
正解も何もない。
だが、そう聞いてくる時点で、
もう戻れない。
気づけば、
恋人は娘よりも、
俺と話している時間のほうが長くなっていた。
「お父さん、
この時代のゲームって、
尖りすぎじゃないですか」
「そういう時代だったんだよ」
そう返すと、
素直にうなずく。
変に否定もしないし、
上書きもしない。
娘は、
その様子を見て、
ため息をついた。
「なんで二人で
そんなに盛り上がってるの」
「気づいたら、な」
恋人は少し困った顔で、
でも楽しそうだった。
「すみません、
なんか……
話しやすくて」
それを言われたとき、
俺は少しだけ考えた。
ああ、
俺はもう
“父親役”じゃないんだな、と。
オタクとして、
ただの年上の人間として、
話している。
それが、
不思議と心地よかった。
娘は言った。
「……私、
どっちの彼氏なの」
俺と恋人は、
一瞬顔を見合わせて、
同時に黙った。
その沈黙で、
十分だった。
後日、
恋人は真面目な顔で言った。
「大事にします」
俺は、
軽く手を振った。
「うん。
それはもう、
娘に言え」
俺の役目は、
とっくに終わっている。
今はただ、
同じものを知っている
年上のオタクだ。
それでいい。




