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異世界に神様はいらない  作者: 春野 いつき
第2章 猫耳の少女
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第14話 SSランク

 


「にゃんで!?にゃんかキレイににゃってる!」


「店の中が明るい……だと?」



 錬金術師の女性が店を出て行った後、程なくしてニックとナナが帰ってきた。

 二人は店に入るなり、店内を落ち着かない様子で見回している。

 勇馬が暇つぶしに掃除した店内を見て驚いているようだった。



 「時間があったんで掃除したんですけど、ダメでしたか?」



 流石にヒマだったとは言い難いので言葉を選んで伝えると、ニックから(しき)りに感謝された。

 どうやら二人とも掃除は苦手らしい。

 因みにニックの奥さんのマリアは別の仕事をしていて、基本的に店の事はノータッチなのだそうだ。


 それはともかくとして、ニックは昼食として黒パンのサンドイッチをとミルクを買ってきてくれていた。

 ハムとチーズとレタスのような野菜が挟んであるだけのシンプルなそれに、勇馬は思い切り噛み付く。

 それは堅く、そして痛かった。

 まるで2日目のフランスパンのような堅さだ。

 無理矢理引き千切って、口の中に入れるがなかなか噛み千切れない。

 水分があればと思いミルクを口に含むが、これがかなりケモノ臭い。

 聞けばヤギの乳だそうで、勇馬はゲンナリしながらも残すのは悪いと思い食事を続ける。


 食事をしつつ、勇馬は先程のポーション買取の件をニックに伝えた。



「勝手な事してすいません。もし無理なら、日当と相殺してもらっていいんで……」


「ダメじゃねえし、その必要もねえよ。店は任せたって言ったろ?」


「えっ、いやいやそんな適当で良いんですか?俺、鑑定とか出来ないし、他にもまだ知らない事だらけなんですけど」


「問題ねえよ、てか対応としては上出来だろ?ナナだったらぜってえ無茶苦茶な金額で買取しちまうからな」


「うん!ユーマすごーい!」


「ナナさん、酷い言われようなのに気付こう?」



 ナナの仕事出来なさ加減が分かってしまったが、勇馬はニックが買取を了承してくれたことに安堵し、再び堅いサンドイッチを噛み締めた。


 問題のポーションは、昼食を終えた後でニックに確認してもらうことになった。



「これがその下級ポーションなんですけど、店にあるのとは違う気がするんですよね……」


「まあ、とりあえず見せてみろ」



 勇馬が渡した小瓶を指で摘みあげ、睨みつけるように確かめるニック。

 ナナもそれを不思議そうに見上げている。

 ニックは渡した物以外の小瓶も気になったのか、何本かを順番にじっと見つめる。

 そして、しばらくすると右眉を上げて顔をしかめた。



「おいユウマ。どうして下級ポーションと違うと思ったんだ?」


「えーと、何が違うかは分からないんですよ。ただ店のよりも濃いというか……」


「う~~~ん。にゃあには普通の下級ポーションにしか見えにゃいけど?」


「ははっ、そりゃそうだ。だって下級ポーションに違いねえからな。しかし濃い、か。言い得て妙だな」


「どういう事ですか?」



 ニックによると、同じ等級のアイテムでも品質にはバラツキがあり、回復量などには幅があるという。

 しかしポーションなどの冒険者にとって必須のアイテムは、冒険者ギルドという組織によって価格が決められている。

 これは値崩れや高騰を防ぐための措置らしいのだが、そのせいで品質の良し悪しでは価格を変えられないという問題が起こった。

 するとどうなるかは、考えれば分かるだろう。

 市場に流れるアイテムの品質が低下したのだ。

 一般的に高品質のアイテムを作るためには、状態の良い材料・手間・時間、そして技術も必要になると言われている。

 結果として価格が一緒ならば、わざわざそんな苦労をしてまで作る者はいなくなるのが普通だった。

 対策として買取側が一定以上の品質を求めるようになったので、ある一定までは上昇したそうだが高品質のものは流通しなくなったそうだ。


 そしてこの下級ポーションは間違いなく「SSランク品」だ、とニックは悪い顔で笑っていた。



「ん~~?でもそれにゃら品質良くても全然意味にゃいんじゃにゃい?」


「そんなことないよ。品質が高いっていうのは店にとっては重要だよ」


「よく分かんにゃい……だってどっちが売れたって値段一緒でしょ?」


「そうだな……じゃあナナは美味しいお肉と、そこそこのお肉が同じ値段だったらどっち買う?」


「もっちろん美味し~にく!!」


「ハハッ、そういうこった。勇馬は商売のセンスもあるんじゃねえか?」


「同じ値段なら良い物の方が優先的に売れるますからね。本来なら販売価格が同じでも、高品質の物は多少高値で買い取っても利益が出ると思いますよ。まあ安定供給出来ればの話ですけど」


「そこら辺は持ってきた奴との交渉次第だな。絶対逃がさねえぞ」



 獰猛な顔をしたニックがそう言うと何か違う意味に聞こえ、勇馬は彼女の行く末を案じてしまう。



「お金返しに行ってるだけだから、そのうち来るんじゃないですかね?」



 勇馬はそう答えつつも、来ないほうが彼女の身のためかもしれないなと考えていた。

 彼女を待つ間ナナに店を任せ、勇馬はニックから鑑定について教えてもらう事になった。


『鑑定』とはスキルの一種で、基本的には物品の種類や情報等を見極める事が出来るスキル。

 レベルは違えど、この世界の大半の人は使えるそうだ。

 レベル1なら名前だけ、レベル3でA・B・Cの3段階で品質を鑑定出来る。

 レベルが上がるに連れ鑑定に必要な時間も短くなり、得られる情報も増えるとの事だ。


 勇馬はスキルという物がそんなに簡単に会得出来るのか疑問だったが、ニックに否定された。


「種類にもよるが『鑑定』なら子供でもセンスがあれば習得出来るさ。あのナナでさえ出来たんだぞ。まあ今だにレベル1だけどな」



 そして先程のポーションが濃く見えた勇馬にはそのセンスがある、とニックは言う。

 半信半疑だったが、勇馬はニックに言われるがまま先程のポーションをじっと見つめる。

 だがいくら見つめても変化はない。



「やっぱり名前すら分からないですけど……」


「ただ見てるだけじゃ駄目だ。鑑定しようとしねえと」



 その言葉で、勇馬は輝録石の時の事を思い出した。

 あの時も頭の中で該当する言葉を呟くと、その効果を出すことが出来た。

 もしかすると今回も同じかもと思い、ポーションを見ながら《鑑定》と頭の中で呟く。

 するとカチャリ、と鍵が開くような音が聞こえた途端、勇馬の視界いっぱいに情報が表示された。



「あっ出来ました……」


「さすがユウマ、オレの見込んだ男だ。この分ならすぐにレベルも上がるかもな」



 ニックは嬉しそうに笑っているが、勇馬は笑えなかった。

 ニックは知る由もないが、その情報は勇馬が《鑑定》と呟いた瞬間に表示され、そして明らかに過剰なものであった。



「レ、レベルが高いと、どうなるんでしたっけ?」


「作った奴の名前が分かるのと、後はなんだっけな……そうそう、物以外にも使えたり効果が完全に見えるらしいが、まあそこまで高レベルはそうそういねえよ」


「因みにニックさんのレベルは?」


「へへっ、オレはレベル6だ。5段階で品質を鑑定出来る。この街にオレ以上のレベルはいねえんだぞ」



 自慢するニックを見て、勇馬の顔に冷や汗が流れる。

 5段階評価と思われる「SSランク」の表示、「クラヴィア」という作成者と思われる名前、そして効果の詳細が勇馬には見えてしまっていたからだ。

 勇馬は恐る恐るニックより高レベルがどれくらいいるのか聞いてみたが、レベル7・8は見たことはあるがレベル9になると世界でも数人。レベル10は歴史上数人という貴重さだという。

 その話を聞き、勇馬は自分がニックより高レベルである事を言い出せなくなってしまった。


 多少動揺はしたものの気を取り直した勇馬は、その後もニックから他のスキルや魔法について簡単な説明を聞いたり、その適性を確認してもらったりした。

 途中で勇馬がメモを取ろうとすると、輝録石にその機能もあるとニックが教えてくれた。

 そしてあっという間に閉店時間を迎えてしまう。



「クラヴィアだったかな?あの人どうしたんだろう」



 ナナに確認しても客は一人も来ていないと言う。

 来客人数の少なさに驚いたが、それよりも錬金術師の女性クラヴィアが来なかった事が勇馬は心配になった。

 閉店後1時間程待っては見たものの、その日彼女が店に現れる事はなかった。

次回更新日は 8/25 0:00予定です

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