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わたしは此処にいる

 "蜘蛛宇宙人" は握った手を開いた

 ――「Φ」の瘤を乗せたまま。




 手にライトを当てると――掌の上に”抜け毛”が見えた。




 幾つかが…――落ちて行った。




 それでもまだ……――手には残っている。




 それに………――




 大量のフェイクファーが

 ――まだ……

 瘤には生えていた。




 "蜘蛛宇宙人" は、抜け毛を数えなかった。




 手を払いさえしなかった。




 「Φ」




 ――を握り直す。




 "蜘蛛宇宙人" は、地点に戻った。




 ”毛”と<足>の生えていない方の棒は、置いていった。




 そして――右へ。




 次の地点に辿りつくと、




 "ω":

 「諦めろ…」




 ――と声がする。




 それだけでは終わらない。




 「but……」




 「but………」




 ――呟いている。




 "蜘蛛宇宙人" は、道を左に折れた。




 一歩。




 立つ "蜘蛛宇宙人" の隣にいる "ω" は黙り込んだ。




 そして――"蜘蛛宇宙人" という存在を見ない事にしていた。




 ――――――――――――――――――――――――


 消えている事になっている物

 ――しかし、消滅していない。


 そこに在るのだ。


 <幽霊>等というオカルト話ではない。


 <数学>の話であり――<文学>の話である。


 勿論、比喩として「幽霊の様だ」と云う者があるだろう

 ――しかし、此処は

 ――幽霊だの……

 ――プラズマ等

 ――とは関係がない。


 ――――――――――――――――――――――――




 同じ地点では――次の "ω" が、代わりに喋り出していた。




 "ω":

 「こっち来んな! みんなの邪魔!!」




 "蜘蛛宇宙人" は、進んだ

 ――その度に

 ――台詞が木霊す。




 「テンプレ」




 "蜘蛛宇宙人" が立ち止まると――




 強い光を浴びる――




 スコップとタブレット。




 それまで闇の中にけ込む様に在ったが…

 ――闇の中へ熔けずに在り続けた物。




 ――――――――――――――――――――――――


 そして――ライトが存在を示す。


 多くの表現者は<なくなった>と思い込み……――放って置く。


 ――――――――――――――――――――――――




 "蜘蛛宇宙人" は、毛で包まれた瘤を握ったまま――




 「Φ」




 ――その "穴" を先ず………

 スコップに近づけた。




 ひとつ前の "ω":

 「何してるの?」




 ひとつ後の "ω":

 「ホント怪しい奴だな……」




 "穴" は

 ――"蜘蛛宇宙人" が密着させる前に

 ――自ら

 吸い付いた。




 スコップの先を、"穴" がくるむ。




 "ω":

 「一体何をしているんだ?――わかりやすく説明しろ!!!」




 そのまま――飲み込んでいく。




 遮る物はない。




 スクープ部分を包み込んだ。




 ”「Φ」の瘤から "穴" まで”

 を構成する直線的棒の、

 "穴" に最も近い位置に、

 金属製の――




 「ˇ」




 ――が生まれていた。




 取り込みが続く…――




 「ˇ」型の突起が縮小していく……――




 棒の中、瘤に向かって動きながら。




 遂に――




 「ˇ」




 ――と棒の幅が等しくなった。




 しかし――




 "穴" はスコップの<全て>を飲み込んではいなかった。




 "穴" は食べ続ける。




 そして

 ――"蜘蛛宇宙人" は、

 瘤領域を外した「Φ」の棒部分が、

 見る見る内に太くなっていく事に気がついた。




 「モリィ………」




 「ムリィル……」




 ――と。




 (足)-(瘤)間もそうだった。




 ――――――――――――――――――――――――


 しかし、棒の長さが伸びる事はない。


 ――――――――――――――――――――――――




 遂に "穴" が――スコップの最後を飲み込んだ。




 取り入れ――完了。




 "蜘蛛宇宙人" が "穴" を見る

 ――目と "穴" が対峙する。




 "穴" は閉じていた――目は開いたまま。




 そして

 ――"蜘蛛宇宙人" が見ている前で

 "穴" が、また開いた。




 "蜘蛛宇宙人" は瞬きをした。




 伸縮自在の "穴" の口径は

 ――その時

 太くなった棒のそれと同じ幅を持っていた。




 "蜘蛛宇宙人" は――




 「Φ」




 ――その反対側の

 ――"穴" のない方の

 端を見た。




 足が在った。




 黒い金属――黒い足。




 変形していた。




 そこには、足が在る。




 骨を吸収したばかりの頃より…――

 大きくなっていた。




 爪先から踵まで在る

 ――それでも

 ――以前より……

 平たくなっていた。




 ”親指から小指まで”が細くなったのではない

 ――寧ろ、そのかんは拡大していた

 ――そして

 ――爪先から踵までの長さも伸びていた。




 ”足の裏から足の背まで”が

 ――平たく

 縮んだのだ。




 そして

 ――それまで………

 ――「Φ」の直線的棒[(足)-(瘤)]に対して

 「L」字型を形作っていた<足>は、

 その

 硬く

 ――フィックスドな

 「L」字を壊していた。




 足は折れ

 ――ちょうど

 <空中で爪先を伸ばした形>

 になっていた。




 ――――――――――――――――――――――――


 ただ棒と足の角度は、完璧な百八十度ではない。


 ――――――――――――――――――――――――




 別の変化も在った。




 足の裏に対して足の<背>に当たる部分が

 ――抉れる様に

 凹んでいた。




 <背>に浮き立っていた静脈も、凹んでいた。




 触れると溝になっている。




 しかし、

 <足の裏に当たる部分>

 そこの状態は変わっていなかった。




 即ち

 ――足の<背>が凹んだ分

 足の裏が突出する様な事はなかった。




 素材は金属だが――肉厚的なまま。




 ――――――――――――――――――――――――


 そして

 ――いくら足の<背>と足の裏の間が狭まろうと

 その間は、”存在しない”訳ではない。


 ――――――――――――――――――――――――




 "蜘蛛宇宙人" は

 ――ライトを腋に挟み

 ――片手で「Φ」の瘤を握ったまま

 ――空いた手で

 <足>の指先を摘んでみる。




 上下に揺する。




 動かない。




 <足>が変形したからといって、

 <足>の可動域が増えた訳ではなかった

 ――そして……

 ――「L」字型に戻る事はもうない。




 硬いまま。




 それは<足>であった

 ――そして…

 ――それは<スコップ>である。



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