わたしは此処にいる
"蜘蛛宇宙人" は掘った…――
「45」
――を目指して。
《それより実際は少ないかもしれない……》
それでも掘った――
「45」<前後>
――を予想して。
崩れる度に生まれる――白い破片。
壁から分離したそれを捏ねて――
ひとつ
ひとつ
――背後の空間に入れた。
地点(F)に繋がる――
「Ω」
――には入れなかった。
背後と云っても………――
すべて、地点(F)-(G)に繋がるトンネルに入れた。
計算上では
――道半ばで
そのトンネルは
――すぐに
埋まる筈であった。
《そうなるなら
――そうなってから
「Ω」を埋めれば良い
――地点(A)-(F)を埋めれば良い》
退路を断つのだ。
疲れ――
「疲れた……」
――という言葉すら出なかった。
それでも "蜘蛛宇宙人" は、掘った――
何も言わずに。
普通なら――諦めるのだろう。
普通なら――問題から逃げるだろう。
それが普通なのだ。
普通なら――ただ悲観して坐り込む。
抑々普通なら――掘らない。
誰かが掘った道を歩き出す。
<誰か>に出会えないかと――堂々巡り。
そして――
「みんな結局、おんなじ…
――何をしても無駄……」
――そう
――何もせず
テンプレを吐く。
そして普通なら………
――腹を減らすと
――目の前の
白マテリアを食べるのだ。
楽しみながら。
壁を剥がし
――<人それぞれ>の意見を飲み込み
下し――
視力を奪われる。
指をなくす――
足をなくす。
手をなくす――
胴をなくす。
そして――声をなくす。
多くの人間が、ひとつずつ失っていく物がある。
自然な
――段階的
喪失。
そして、なくす事は――<普通>に近づく事。
健康的な――無知。
息災なる――低俗。
そんな<普通>が世の中では――
「素晴らしい!」
――事とされている。
しかし、"蜘蛛宇宙人" は普通ではない。
<普通>が素晴らしいのなら――素晴らしくないのだ。
ただ――失う事をじっと待たないだけだ。
そんな "蜘蛛宇宙人" が掘る……
――愚直に。
スコップとタブレットは、
"ω" が並ぶトンネルに置いてきた
――しかし、"ω" は使用する事が出来ないだろう…
――目の前にあろうとも。
使えなくとも――意見だけは一丁前。
「意味わかんない!!」
"蜘蛛宇宙人" が掘り続け
――地点(F)-(G)間の
トンネルの口が見えなくなった。
その時だった。
壁を切り崩していた "蜘蛛宇宙人" は――
<固い物>
――に触れた。
"蜘蛛宇宙人" は
”無我夢中”の精神を緩め、
注意深く掘った。
発掘された<それ>は、白い。
しかし……
――白マテリアとは違う白さ………
――違う素材。
"蜘蛛宇宙人" は、人差し指と親指で摘む
――翳す。
小石の様に見える
――しかし、小石よりも脆い。
指先に少し力を入れただけで――
《砕けそう……》。
形は、丸というより――細長。
そして――<それ>は、ひとつではない。
"蜘蛛宇宙人" は、優しく掘る。
同じ大きさの物がいくつか見つかる。
そして、同じ色で同じ素材の<それ>が
――また
見つかった。
今度の<それ>は
――前に見つけた物よりも
少し大きかった
――それでも
――摘める程度だ。
そして、その大きさの物が
――また
――いくつか
見つかった。
より小さい物は、もう見つからなかった。
次に掘ると
――また同じ色・素材でありながら
<より大きい物>が見つかる。
すべて――"蜘蛛宇宙人" の掌に乗るサイズ。
すべて――挽肉の様な白マテリアの粒に塗れている。
それでも――白マテリアとの差異は明らか。
さらに掘り進めると…――
棒状の<それ>が
”二本”
出てきた。
その<二本>は、
それまでに掘って出てきたどれよりも大きく、
どれよりも長かった。
もうその頃には、"蜘蛛宇宙人" はわかっていた……――
<それ>が何であるか?




