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第11話 騎士と剣

 クーさんが背負った鞘から抜きだした剣は、グレートソードと呼ぶことすら憚られそうな、巨大なものであった。


 刀身だけで2メートル半、両手持ち用の柄も入れると、3メートルにも達するのではないだろうか。


 打撃武器としてだけはなく、斬るという機能も兼ね備えた大剣クレイモアらしくサイズの割に刃は薄そうだが、それでも小学生の体重ぐらいは優にありそうだ。


 名付け前の3メートルを超える身長であれば大剣クレイモアとしても使いこなせそうなサイズだが、幾ら巨漢とは言え現在のクーさんでは振り回すだけでも手に余りそうに見える。


「よろしくお願いいたす」


 そう言われてクーさんから大剣クレイモアを差し出されたのだが、正直言ってボクには持てそうもない。


 かといって今更「剣が重くて持てません」などと断るわけにも行かず、困り果ててソピアさんの方を見ると、「大丈夫!」とでも言いたげに首を縦に振って居られるではありませんか。


 その自信ありげな態度に、もしや! と思ってクーさんから差し出された剣の柄を握ってみると、おおっ! 持てるよ、楽勝だ!


 どうやらクーさんの大剣クレイモアには軽量化の魔法が掛かっていたようです。


 ボクがクーさんの肩に大剣クレイモアの刀身を置きながら誠実や品位といった単語を散りばめた定型どおりの文言を口にし、最後にクーさんがボクの・・・・・ではなく剣にキスをすると、騎士の誓いは完了だ。


 感動するクーさんを横目に、ボクはソピアさんに軽く頭を下げて一礼をしておく。


 助かりましたよ、ありがとうソピアさん。



 次いで、クドクドと懇願するポチに根負けして、こちらにも騎士の誓いを許すはめに。


 ソピアさんにまでお願いされたのでは、ボクに断れるワケがないではないか。


 全くポチにも困ったものだが、手駒が増えるのはボクにとってもそう悪いことではない。


 性格の方はちょっとアレだが、イケメンというのは手下としてけっこう使い出があるはずだ。


 軟派そうに見えるだけで敵を油断させることが出来るし、女の冒険者辺りはポチに掛かればイチコロという可能性もある。


 まあコイツに供をさせるなら、ボクの貞操がイチコロにならないように気をつける必要はあるだろうけどね。


 ポチの剣は長さはフツウだったものの、刃の方がギザギザになったフランベルジュだったのにはちょっと引いた。


 こんなので斬られた日には、即死は免れたとしても出血死は必定だろう。



「少し時間を取られてしまいましたが、先を急ぎましょう」


 色々と感慨に耽っていたボクたちに、ソピアさんのサッパリとした託宣が下った。


 熟々つくづく余韻に欠けるヒトリッチだが、何時までもこんな所でグズグズしていると日が落ちて暗くなってしまう。


 王城の警護や城門の門番、あるいは一部の飲食店などを除いて、殆どの仕事は日没前に終了するし、このフューネラルギルドもたぶん例外ではないだろう。


 お目当ての受付嬢さん(オッサンではロマンがないので勝手に『嬢』と想像)も業務終了後は転送陣で王都に帰ってしまうだろうし、そうなると挨拶することも叶わなくなってしまう。


 職場での円滑な人間関係を築くためにも、ソピアさんが言われるような重要人物に対するご挨拶が就任の翌日・・なんてコトになるのだけは避けるべきだ。


「わかりました、ソピアさん。

 ボクも受付の方がこちらに居られるうちにご挨拶したいですし」


わたくしを置いてどちらにいらっしゃるのですか」


「殿! 拙者もお連れくださりませ!」


 ソピアさんに付いていこうとしたボクに、ポチが哀れっぽい仕草で、クーさんが剣をぐいっと身体の前に掲げて、自分たちも連れて行けと主張していた。


「ポチとクーさんは此所で門番をするのが仕事でしょう。

 ソピアさんが新たな指示をされるまでは、本来の任務を続けるべきだと思いますが」


 すこし鬱陶しいので、努めて事務的な口調で告げる。


「確かにそうですね、

 あなた方は、私とアルツァさんの用事が済むまでここでお待ちください」


 さすが常識人(のフリをしているだけかも知れないが)のソピアさん、至極まっとうなお答えにボクも一安心だよ。


「そんな殺生な」


「うぬう! 残念無念である」


 死霊騎士デスナイト二人組の方は常識の持ち合わせが少ないようだった。


 大体がもともと死んでるのに、いまさら殺生も在ったものではないだろう。


「ではそういう事で、ヨロシク」


 そう言い置いて、ボクはソピアさんに続いてフューネラルギルド管理棟の門をくぐったのであった。



 門の奥は照明されていない暗い通路だった。


 通路の突き当たりには夕焼けのオレンジっぽい光が見えたし、通路は壁や天井だけでなく床までも白い材質で出来ているようだったから、昼間は奥から挿し込む日光でそれなりに明るいのだろう。


「もう暗くなって来てしまいましたね。

 段差はありませんが、いちおう足下にはお気を付けください」


 ボクの前を歩きながら振り返ったソピアさんがそう言った。


 ボクたち以外に通路を通る者もなく、通路の左右にも扉らしきものは見られなかった。


「ギルドの転送陣もこの奥なのですか?」


「通路の奥が受け付けカウンターの裏側になります。

 その左右に往路用と復路用の転送陣のブースが設置されているんですよ」 


 次第に通路が明るくなり、その奥を横切るようなものが見えてきた。


 ボクたちは、やっと終点に近づいたようだ。





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