第1話 ルーズソックスをはいた少女
その時、何者かに声をかけられた。
「おい、うるせーよ」
私は声の方へ振り向くと、1人の少女が立っていた。
少女は茶髪で制服を着崩しており、ルーズソックスを履いた一昔前のギャルだった。よく見ると、ウチの学校の制服を着ていた。こんな派手な恰好の生徒なんかいたかな?
不良っぽく見えるが、顔は整っており美少女と言っても過言ではない。だが、さっきまでこんなギャルいなかったぞ。いや、私が寝ている間に来たのかもしれない。
ギャルの少女が声をかけてきた。
「お前、ウチの中学だろ? ここで何しているんだよ?」
ギャルは言葉使いが荒っぽくて、男の子みたいで態度が悪いと思った。どうせ、不良で家に帰りたくなくて、男と夜遊びしているタイプとみた。
こういう子が10代で妊娠して、どうしようもない子供を作っていき、日本がドンドンとダメになっていくのだ。子供は母親を選べないのだ。
とりあえず、私は気分を害しないように質問に答えた。
「私は家出だよ。もう、学校も家にも居場所がないから……」
「アハハ、お前みたいな真面目そうな眼鏡が? ママが心配しているぞ、さっさと家に帰れば?」
クソ、何か上から目線でムカつく、ビッチギャルのくせに……。
「ふん、別に無理してないし、あなたは何年生なの? 同じ房総中でしょ?」
「ああ、アタシは3年生だよ。お前は?」
「私も3年生だよ」
「アハハハ、マジかよ。ガキっぽい顔しているから、今年入学した1年生かと思ったよ。それよりも、3年にお前みたいな奴いたかな?」
それはこっちのセリフだと思った。こんな派手な同級生は記憶にはない。ウチの学校は1か月に1回は頭髪検査があるから、こんな格好を先生は絶対に許さない。ということは、今日から夏休みデビューしたギャルってところだ。
中学生には中学デビュー、夏休みデビューと過去の自分と決別するチャンスがあるのだ。これは思春期特有の背伸びであり、男子は不良の恰好をして、女子はギャルみたいな恰好をするのだ。理由は他人から舐められたくないのだ。
私もここだけの話だが高校デビューを目指している。それはさておき、ギャルは私の顔を確認するためか、こちらへゆっくりと近づいてきた。すると、ギャルに見下ろされる状態になった。
クソ、この女は身長がかなり高い。おそらく、身長が170センチ近くはあるので、クラスの男子と変わらない。なによりも、異様な威圧感があり、思わず尻込みしてしまった。
そして、ギャルは顔をこちらへ近づけてきた。なんだ、キスでもするのか? 冗談じゃない、私にそんな趣味はないぞ。
そのギャルは顎に手を置き、首を傾げながら口を開いた。
「お前さぁ、アタシと会ったことあるか?」
「多分、ないと思うけど……」
「いや、何か気になるというか、懐かしいというか……。そうだ、名前を教えてくれよ」
「ふん、お母さんに習わなかったの? 名前を聞くときは、まずは自分から名乗るものでしょ?」
ギャルは頭を掻きながら照れくさそうに笑った。
「アハハハ、確かにそうだな。アタシの名前は竹ノ内リコだ」
一瞬、私の脳はパソコンのようにフリーズした。
「えっ、もう一回」
「何が?」
「だから、名前だよ。もう一回言って?」
「ああ、竹ノ内リコだよ。別に珍しい名前でもないだろ?」
ママの旧姓が竹ノ内だった気がする。いや、伯父の竹ノ内カイトは本名で芸能活動をしているから、旧姓は竹ノ内で間違いない。なので、このギャルはママかもしれない。そういえば、目元が似ているような気がする。
いやいや、そんなバカな事はありえないし、世の中には同性同名の人なんて大勢いるはずだ。年齢が一緒なら凄いけど、このギャルはどうみても10代半である。ママは今年で35歳なので、あきらかに別人であるのは間違いない。
それでも、なんとなく、面影がどうしても被ってしまうので、こんなバカな事を考えてしまうのだ。




