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第7話 ユキちゃんの説教

それを察したのか、ユキちゃんの目が説教モードになる。


長い付き合いだけあって、私が楽な方に流れるのを知っているのだろう。

「ねえ、マジな話をするけどさぁ。トキコって何かやりたい事ないの?」

「うーん、そうだね……。やりたい事はゲームとか漫画見て、毎日を部屋でゴロゴロ過ごしたいよ。辛い事はしたくない」

「いや違うよ、それはただ遊びたいだけでしょ。私が聞きたいのはトキコが一生懸命になれる事だよ。私だったらソフトボールで優勝が目標とかさ。トキコだって、小学校の時は楽しそうに漫画描いていたでしょ? もう描く気はないの?」


ああ、私は確かに小学校の頃にユキちゃんを主人公にした漫画を描いていた。それは痛々しい思い出で封印したいものだった。


漫画のタイトルは『ユキちゃん、甲子園に行く』その内容はユキちゃんがピッチャーで、私がキャッチャーというスポーツ漫画だ。2人がソフトボールで甲子園に行くという王道スポーツ作品だ。


今を思えば、ツッコミ所しかない漫画であったとは思う。そもそも、女子ソフトボールは甲子園には行かないし、漫画の終盤あたりではユキちゃんの球速は300キロを超えていた。


小学生のピッチャーなのに、球速が新幹線のスピードと同じであり、デットボールを喰らったら確実に死ぬ。まあ、あきらかに設定がぶっ飛んだ漫画であった。だが、小学校時代のユキちゃんは喜んで読んでくれた。


だけど、私のただの自己満足だった。

「もう、小学校の頃の話だよ。だいたい、絵も下手くそだし、内容もひどいものだったよ。漫画家なんて絶対になれないものだよ。まあ、それなりに描いている時は楽しかったけどね」

「じゃあ、楽しいと思うなら、漫画描くのを続ければいいじゃん。私だってソフトボールのプロ選手にはなれないと思うけど、自分が楽しいと思うから部活でやっているよ。別に説教するわけじゃないけど、最近のトキコは人生にやる気なさすぎだよ」

「………」

「こんな事言いたくないけどさ……。中学生活の最後にモヤモヤした気持ちで、卒業したら後悔すると思ってさ、トキコの親友として心配して言っているだけだよ」


その言葉は私の胸を抉るようであった。確かに私は中学3年生になってから、心が不安定であったのは本当である。受験や将来に対する不安や、一生懸命になれる事がない恥ずかしさから、何も挑戦をしない日々を過ごしていたからである。


だって、挑戦して失敗したら傷つくだけだもん。だから、挑戦しなければ負ける事はない。もちろん、勝つこともないけど……。

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