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第1ー12話 稲妻と疾風

 ロベルトこの男は、見た目から簡単に想像出来る剛力に咥え、魔術による鉄球の操作、やはり一筋縄でいくと言う事はない。

 互いの手と手をキツく握りあい、まさに力比べという状態だが、若干ジュンに不利な状況だ。地球に居た頃から、基礎的な筋力トレーニング等はしていたが、やはりロベルトとは筋肉の質で遅れを取っていた、どれだけ魔力で自身の体に強化を掛けていたとしても、基礎で負けていれば押し負けるのは必然。

 それに組み合ったとしても、操作できる鉄球が何度も何度も背中を激しく殴打し、内蔵へと重い衝撃が走っている。

「お前…何で死なない?俺…わからない」

「わからねぇか?なら教えてやる、俺は俺の「信念」を突き通す為に、絶対に死なねぇし、死ぬつもりもない。ただそれだけさ」


 組み合った腕をジュンは一度引き、ロベルトの左太ももを蹴り抜き体制を崩させる。それでも手の拘束を解かないロベルトに対し、ジュンは鼻に目掛け頭突きを繰り出す、あまりの激痛に手を離してしまったロベルト、鼻を押さえ出血を止めようと躍起になっているが、ジュンは飛び上がり回し蹴りを喉笛目掛け更に追い打ちを掛ける。

 5m程か、ジュンの攻撃を喰らった彼は後方まで飛ばされているも、倒れることもなくその逞しい2本の足で自身の体を支えていた。

「姉ちゃん…血…鼻血…止まらない」

「それぐらい我慢なさい、貴方は男の子でしょ?ほら我慢してあの男を倒したら、後でとびっきりのオヤツ買ってあげるから」

「うん…わかった。俺…あいつ倒すよ」


 その大きな体を広げ、ジュンに向かい再度突撃を繰り出すが、一度あの剛力で拘束をされ、殺す気で来ているなら間違いなく当たるのは得策では無い、とジュンは判断しロベルトの頭上を大きく飛び上がり回避する。

 突進を中止したロベルトは、ゆっくりとジュンを目で追うも、体制が整えられる前にジュンから右側頭に向け警棒での強打、そして空中で体を反転し、反対側の左側頭を蹴りで撃ち抜く。

 普通の人間であれば脳震盪を起こし、戦うなどもってのほか、立つことすらままならないハズなのにロベルトは立っている。その異常なまでのタフさに、ジュンは少し言いようのない不気味さを覚え、背中側から心臓・鳩尾・肺・脇腹等の急所を狙い、攻撃をし着地と同時に2回3回とバク転をし、距離を保っていく。

「もう…痛いぞ…お前」

 

 ロベルトはジュンの方へ向き、その鈍い蒼色の瞳をしかめると、突然ジュンの後ろの地面が盛り上がり、先程とは段違いな破壊力で鉄球が地面から飛び出し、ジュンをロベルトの方向へ吹き飛ばしていく。

 待ってましたと言う様な笑みを浮かべ、ロベルトは丸太にも匹敵する太さの腕をジュンの腹部へと命中させる。

 木へと激突した、ジュンに向かいロベルトはタックルの体制を取り、そのまま肩で激突すると、ジュンを支えていた大木はへし折れ、後ろに並ぶ大木も次々と折れていく。


「あらあら、あの子ったら随分と張り切ってるわね。戦乙女ヴァルキリーさん、あの男を助けなくても良いんですか?」

「一応そのつもりですよ、でも残念ですがジュンさんには貴方の弟さんに対し、負ける要素が有りません。あの人が返ってくる迄に此方も雌雄を決しましょうか…来なさい、貴方にはナイフ一本で十分です」

「いっ言ってくれる…、その慢心が自分の命取りと知り!王女を守れず死になさい!戦乙女ヴァルキリー!」

 姉と言われていた女が、自身の爪を風で強化しミアに襲いかかってきたその時、ミアはいつの間にか取り出していたナイフで、すれ違い様に切りつけ女の体には大きな切り傷が出来ていた。

 着地したと同時に、傷口から血を吹き出し、その場に倒れ込んだ彼女。

「大口を叩く前に、相手との実力差を見極めなさい。急所は外してありますので、その辺はご安心を」


 手を抜いていたとは言え、急所を外しつつただの一閃で相手を戦闘不能にする技術に、女はひれ伏すしか無くその場に倒れ込み気を失う。



 少しすると、ジュンに攻撃をしたまま森へと姿を消した、ロベルトが真っ赤に頬を腫らし森の中から吹き飛ばされてから、木に激突し気を失っていた。

「ったく…こっちは自分の加減がまだ掴めてねぇのに…間違えて殺しちまったらどうすんだよ」

 折れた大木や、草木をかき分け殆ど無傷のジュンが姿を表し、右手でポンポンとコートに付いた土埃を払い落としている。


「あらジュンさんお帰りなさい。力の加減は掴めました?」

「ん~微妙な所…ですかね。弱すぎると生身で殴るのと変わらないですし、強すぎると相手を間違えて殺しかねないし」

「ふふっ、優しいんですねジュンさん」

「そっそうですかね?」

「ええ優しいですよ。なんなら私を相手に、組み手でもして力の使い方勉強してみますか?」

「えっあっいや…大丈夫っすよ、それに大事な人を攻撃出来る訳ないじゃないっすか」


 2人は会話を済ませると、気を失った2人の武器を破壊し、大木へと括り付け無力化すると馬車に戻り王城へと足を進めていった。


 稲妻の狂戦士バーサーカー ロベルト・グレゴリア

 疾風の舞踏者ダンサブル ハルティア・グレゴリア


 共に気を失い逮捕。


TO BE CONTINUED

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