【エピローグ】
「ふぅ…ずいぶん暑くなってきましたわね」
初夏の陽光が照りつける、王宮の広大な中庭。わたくしは、息子と散歩をしていたところ彼を見失ってしまった。
好奇心旺盛で、すぐに何かに夢中になる性格は完全にカミーユ様にそっくりだ。
「エリオット!……エリオットーー!まったく、どこにいっちゃったのかしら……」
「エリザベート殿下、エリオット殿下はあちらでございます」
いつものように音もなく現れたクロエが指さした方を見ると、大きな木の高い枝に座って、こちらへ楽しそうに手を振っている小さな影があった。
「母上ーー」
「まぁ、あんなところに登って、危ないわ。すぐに降ろさないと……」
わたくしが慌てて息子の方へ歩みよろうとした、その時。
ズルッ!
息子のエリオットが体勢を崩し、木の上から真っ逆さまに落下した。
「危ない!」
わたくしはとっさに駆け出そうとした。しかしこの数年、戦いからすっかり距離をおいて平和に暮らしていたせいで、体がとっさに動かない。重いドレスの裾が足にまとわりつき、うまく走りだすことが出来ない。
だめ!このままじゃ、エリオットが大怪我をしてしまう!
どうあがいても間に合わない。まるで溺れるように必死に手を伸ばした、その瞬間。
目の前が、すべてを飲み込むような真っ白な光に包まれた。
気がつくと、わたくしは何もない真っ白な空間にぽつんと立っていた。
先程まで王宮の広大な中庭を走っていたはずなのに、周囲には空も地面もなく、ただ果てしない純白が広がっている。
その見覚えのある空間に立つわたくしの目の前には、不自然に一枚の古びたドアが建っていた。
戸惑いと、信じられないほどの期待で胸を高鳴らせながら、わたくしはそっとドアをノックした。
コンコンコン。
『……へいへーい。どうぞー』
中からくぐもった、少し低い男の人の声が聞こえた。
わたくしは震える手でドアノブを回し、中へと足を踏み入れた。
『おうエリー、やっと来たか。ずいぶんと遅かったな』
お嬢様、ガントレットをお忘れです
~脳内のおっさん英雄がうるさいですが王子様と結婚しますわ~
(完)
本作を最後までお読みいただき、誠にありがとうございました!
皆様の応援のおかげで、無事に物語を完結させることができました。
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この物語はここで幕を閉じますが、またどこかで皆様に新しい物語をお届けできれば幸いです。
改めまして、最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました!




