91話
翌朝。
恒一は目を覚ました。
「……」
昨日の戦い。
黒峰、変化した契約。
色々なことがあった。
だが一番最初に気付いたのは。
「……重い」
胸元に暁がいる。
いつも通り、いやいつもより近い。
両腕でしっかり抱きついている。
「暁」
「……ん」
「朝だぞ」
「……まだ」
「学校」
「休み」
「そうだった」
昨日の戦闘の影響で、今日は学校が休みになっていた。
それを思い出した恒一はもう一度目を閉じる。
「……」
暁は離れない。
むしろぎゅっ。
さらに強く抱きついた。
「昨日より近くないか?」
「……そう?」
「そう」
「嫌?」
恒一は少し考える。
「別に」
その答えを聞くと、暁は安心したように目を閉じた。
「じゃあ、このまま」
「はいはい」
そのまましばらく二人ともベッドから出なかった。
昼前。
ようやく起きる。
朝食というより昼食を作る。
暁は恒一の隣から離れない。
「包丁使うから少し離れろ」
「嫌」
「危ないぞ」
「じゃあ、後ろにいる」
結局、恒一の背中にくっついている。
「……」
「何だ」
「落ち着く」
「そうか」
恒一ももう何も言わなくなった。
昼食を食べテレビを見る。
暁はソファで恒一の肩に寄りかかる。
昨日までとは明らかに違う。
戦いを経験したからなのか。
暁は今日ほとんど恒一から離れなかった。
夕方。
恒一が飲み物を取りに立ち上がる。
「どこ行く」
「冷蔵庫」
「……」
暁も立つ。
「ついてくるの?」
「うん」
「数歩だぞ」
「それでも」
恒一は苦笑する。
「昨日、怖かったのか?」
暁は少し黙る。
「……怖かった」
素直な答えだった。
「恒一が結界に閉じ込められた時」
暁は手を握る。
「離れるかと思った」
「離れなかっただろ」
「うん」
「これからも離れない」
暁が顔を上げる。
「……約束?」
「約束」
暁は嬉しそうに笑った。
夜。
いつものベッド。
暁は当然のように恒一へ抱きつく。
「今日もか」
「今日も」
「昨日より強いな」
「昨日、怖かったから」
そう言いながらぎゅっと抱きしめる。
恒一は暁の頭を撫でる。
「もう大丈夫だ」
「……うん」
しばらくして暁の呼吸がゆっくりになる。
眠ったらしい。
恒一も目を閉じる。
その時、暁が小さく呟いた。
「……恒一」
「ん?」
寝言だった。
「……好き」
恒一は目を開ける。
「……」
まただ。
だが今度は恒一は何も言わなかった。
ただ暁を抱き返した。
そして小さく呟く。
「……俺も」
暁には聞こえていない。
まだだが恒一自身は少しずつ自分の気持ちを認め始めていた。
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