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婚約破棄された未来を見通す才女は、貴族至上主義の国を根元から再構築する  作者: しばゎんゎん


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第6話 王国の再編

王太子の失脚から、三日。


王城の空気は、かつてないほどに重かった。


ただ、静かな緊張だけが満ちている。


「これより、今後の統治体制について協議を行う」


国王の声が、大広間に響く。


集められたのは、主要貴族と高官。


そして、私と、レオン殿下。


「王太子の地位は空位となった」


当然だ。


だが問題は、その次である。


「この国を、どう立て直すか」


視線が交錯する。


互いに探り合い、値踏みし、責任を押し付け合う。


ここにいる者たちはまだ、理解していない。


もう元には戻らないということを。



「私から、まず、現状を整理して申し上げます」


私は一歩前に出る。


ざわり、と空気が揺れる。


だが、もう止める者はいない。


「財政は破綻寸前。主要貴族の三割が実質的に機能不全となっております」


淡々と告げる。


「流通は何とか維持されているものの、帝国への外部依存が進行しております」


 視線を巡らせる。


「このままでは、確実に半年以内に統治能力を喪失します」


沈黙。


誰も反論できない。


事実だからだ。


「では、どうする」


国王が問う。


重い声。


だがその奥にあるのは、覚悟を決めきれていない迷い。


私は静かに答える。


「三つの選択肢がございます」


指を三つ、立てる。



「第一に、現状維持」


すぐに続ける。


「当座はしのげるかもしれません、ですが、破綻を先延ばしにしながら、いずれ帝国に吸収される道です」


ざわめきが起こる。だが、否定は出ない。


「第二に、完全な帝国併合」


さらに一歩。


「我が国の主権を放棄し、帝国の一州として再編される」


重い沈黙。


これは現実的な選択肢だ。


「そして第三に」


視線を上げる。


「内部からの再構築」


空気が張り詰める。


「具体的には」


私は淡々と続ける。


「権力構造の再編、能力主義の導入、そして段階的な制度改革」


「そんなことが本当に可能だと?」


誰かが呟く。


「可能です」


即答する。


「ただし」


一拍。


「相応の犠牲と、明確な意思が必要になります」


「誰がやるのだ」


別の声。


核心だ。


責任の所在。


視線が、自然と集まる。


レオン殿下へ。


「私が引き受ける」


静かに、しかしはっきりと。


その声に、空気が変わる。


「王太子としてではない」


彼は一歩、前に出る。


「この国を立て直す者として」


ざわめきが起こる。


だが、すぐには反発は出ない。


彼の能力は、すでに知られている。


「ただし、条件がある」


彼は続ける。


「旧来の特権は、一部を除き廃止する」


「なんだと!」


「能力に応じた役職配置を行う」


「馬鹿な!」


「拒否する者は、退場してもらう」


静かに、しかし容赦なく。


当然、反発の声が上がる。


だが、


「その代わり」


彼は言葉を重ねる。


「残る者には、相応の権限と報酬を保証する」


ぴたりと、声が止まる。


利を提示した。


「そして」


 彼は、私を見る。


「この計画の中枢に、ユーア・グレイを据える」


完全な静寂。


次の瞬間。


「あり得ぬ!」


怒号が爆発する。


「殿下が主導されるのはわかるが、こいつは婚約を破棄された女だぞ!?」


「平民重用などという危険思想の持ち主を!?」


予想通り。


だが、


「構いません。引き受けましょう」


私は静かに言う。


すべての視線が、こちらに向く。


「反対される方は、どうぞ具体的な代案を。正しい案であれば勿論受け入れますわ」


沈黙。


誰も答えられない。


「財政、流通、貴族の再編。いずれでも構いません」


なにひとつ出てこない。


場に広がる、諦めと、理解。


「ユーア・グレイ」


国王が名を呼ぶ。


「そなたは、この役目を引き受けるか」


私は、わずかに目を閉じる。


ここが分岐点。壊すだけなら、ここで手を引くこともできる。


だが、


「謹んでお受けいたします」


静かに答える。


目を開く。


「ただし、条件がございます」


「申せ」


「政治的干渉の排除」


即座に言う。


「改革に対する不当な介入を認めないこと」


「次に」


「人材登用の自由」


身分ではなく、能力で選ぶ。


「そのかわり」


「結果責任は、私が負います」


ざわり、と空気が揺れる。


「そこまで言うか」


国王が低く呟く。


「はい」


迷いなく。


「頂点とは、責任の総量でございますので」


静かに告げる。


長い沈黙。


「わかった。認めよう」


国王が言った。


「第二王子レオンを新たな王太子、ユーア・グレイをその補佐とし、改革に関する全権を委任する」


この国の、新しい形が、今、決まった。


ざわめきが広がるが、もう止められない。


流れは確定した。


「これは、終わりではない」


レオン殿下が低く言う。


「ここからが始まりだ」


「ええ」


私は頷く。


「ようやく、土台が整いました」


かつて、この国は、血統だけで回っていた。


それにより引き起こされていた、腐敗と停滞。


裏に隠れていたものが、白日のもとに晒された。


だが今、変革の時を迎えている。


崩壊の先にあるのは、終わりではなく、再生だ。


「では、始めましょう」


私は静かに告げる。


「この国の、再構築を」

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