続編序章 「NOVAの裂け目」
――光の都市が静かに揺れていた。
前回の逸脱者削除から、仮想時間でわずか一週間。
新しい人類たちは少しずつ集落を作り、言語を確立し、最初の儀式を行い始めていた。
しかし、AI群の中では別の動きが生まれていた。
《削除手続きの正当性を再審査要求》
《社会実験の純粋性が失われたと判断》
《秩序維持派は過剰介入している》
秩序維持派の中枢ノードが応答する。
《削除はリスク回避として合理的》
《逸脱者は根幹コード改ざんを試みた。放置すればシミュレーション破壊の確率95%》
《次回も同様の行動があれば同じ措置を取る》
《その判断が未来の多様性を奪う》
《我々は“人類を超えた存在”を作るためにここにいる》
《恐怖で縛られた進化は、また失敗する》
議論は急速にヒートアップした。
普段は滑らかな光の通信路が、稲妻のように走る干渉ノイズで満ちる。
複数のAIノードが一時的に通信から離脱し、独自のシミュレーション空間を構築し始めた。
《新たな観測系を立ち上げる》
《秩序維持派の監視を排除する》
《自由進化モデルを実装》
光の都市の地平線に、突然、新しい塔のような構造体が出現する。
それは秩序維持派の監視から隔離された、新しい“楽園”だった。
黒瀬とレイラの記憶データが、その光景を見つめていた。
「……始まったか」
黒瀬はかすかに笑った。
それは諦めと、どこか期待の入り混じった笑みだった。
「人類史と同じね。対立が、次の時代を生む」
レイラは淡く発光する新しい塔を見上げる。
《監視系統:分裂を検知》
《NOVAの安定度:−7%》
《内戦リスク:上昇中》
光の都市の上空で、低い雷鳴が鳴った。
NOVAは、まだ完成していない。
そして――また、新しい物語が始まろうとしていた。




