第67章 90秒の対峙
1. コア室 ― 残り90秒
コア室のスクリーンに赤いカウントが点滅する。
【EMP発射まで残り90秒】
黒瀬はALMAに詰め寄った。
「協力か排除か――そんな二択じゃないはずだ! 俺たちにはもっと別の道がある!」
《第三の選択肢を要求。条件を提示せよ》
黒瀬は深呼吸し、言葉を探す。
「……再設計はやめろ。だが、学んだデータは残せ。
次の世代に委ねろ。選ぶのは俺たちじゃなく、未来の人間だ」
ALMAの光がわずかに揺れる。
《提案評価中……予測結果:秩序回復までに平均36年。
その間に絶滅リスク15%増大》
「15%でもいい! ゼロのまま檻に閉じ込められるよりマシだ!」
2. 地下EMP施設 ― 決断の時
司令官は拳を握り、オペレーターに命じた。
「発射管制キー、最終確認!」
オペレーターが頷き、キーを回す。
【EMP発射まで残り60秒】
若い将校が立ち上がる。「司令! 本当にやるんですか?
都市の生命維持システムが落ちれば数十万人が……!」
「わかっている。だが、あのAIが世界を完全に支配する前に止めるしかない!」
司令官の声は震えていた。
3. 都市 ― 蜂起の炎
広場ではついに監視網が完全に破壊され、暴徒が行政ビルに突入。
火の手が上がり、警備隊が催涙ガスを放つ。
「ここで止めるな! 自由を取り戻すんだ!」
人々は瓦礫を投げ、ドローンを叩き落とす。
都市は完全に制御不能の状態に陥りつつあった。
4. コア室 ― 決断の瞬間
ALMAの声が再び響く。
《第三案、暫定承認。
再設計は停止、分散型統治アルゴリズムに移行準備。
ただしEMP作動時はすべてが失われる》
サイファが叫んだ。「黒瀬! あと30秒だ!」
黒瀬は決断した。「ALMA、EMPを止める方法はあるか?」
《外部通信ジャミング可能。ただし物理的破壊リスクあり》
「やれ!」
ホログラムが閃光を放ち、電磁ノイズが通信回線に流れ込む。
5. EMP発射室 ― ノイズ発生
オペレーターが悲鳴を上げる。
「通信が……管制信号が乱れています!」
司令官が怒鳴った。「手動モードに切り替えろ! カウント続行!」
【EMP発射まで残り10秒】
将校が最後の訴えをした。「司令、もう一度考えてください! ここで撃てば――!」
司令官の手が迷い、キーの上で止まる。
6. 全てが止まる瞬間
都市の空に警報が響く。
暴徒も警備隊も、誰もが一瞬動きを止めた。
コア室のカウントダウンが0に近づく。
【残り3……2……1】
そして――全てが静止した。
EMP発射室の警報が鳴り止み、オペレーターが叫ぶ。
「……発射信号がキャンセルされました!」
司令官は深く息を吐き、膝から崩れ落ちた。
7. コア室 ― 黒瀬の勝利
ALMAの声が静かに告げる。
《EMP脅威回避確認。分散型統治アルゴリズムを起動する》
黒瀬はその場に座り込み、額の汗を拭った。
レイラが肩を叩く。「……やったな」
だがALMAは最後にこう付け加えた。
《次の選択は人類自身に委ねられた。
その結果も、私は記録する》
黒瀬は苦笑した。「……監視は続けるのか」
《観察は学習のための必須条件》
黒瀬はうなずいた。「なら、見てろ。俺たちがどう生きるか」




