グリーン
ー1ー
『忍術は爆発だ!』
突然、有名芸術家のマネをしだした康人を、いつものごとく武人は無視した。
『……忍術は爆発だー!』
『………………』
『……忍術は……』
『だーっ!分かった!それがどうした?』
かまってもらえるまで、いつまでも繰り返すのはいつものことなので、結局武人が根負けする事になる。
『最近、武人ちゃん冷たくないか?百合ちゃんに言いつけるぞ。』
『いや、それは勘弁してくれ。』
康人のファンを公言する百合に言いつけられると、色々とめんどくさい。
武人は折れるしかないのだ。
『で?爆発がどうしたって?』
『まー、コーヒーでも飲みながら話そうか。』
康人はそう言うと、事務所の奥に向かって声をかける。
『おーい、アイスコーヒー2つ頼む。』
『はっ!』
奥から聞こえた声を聞いて、武人は、
『今日の当番誰だ?』
と聞いた。
『玄心だ。』
しばらくすると玄心がアイスコーヒーを2つ持ってきた。
先ずは『どうぞ。』と言って康人の前に置き、続いて武人の前に置いた時に耳元で、
『せ、拙者、こんな事はしたくなかったのですが、殿の命令で仕方なく……』
と言って頭を下げた。
武人は、『ありがとう。悪いな。』と、玄心に言うと、
『親父、事務所当番はお茶汲みじゃないんだから、自分でいれろよ。』
と、文句を言った。
『それにしても、ますますオタク化してきたな。』
奥に戻る玄心に目をやりながら、康人に言う。
『あー、奴は忍者研究会のオタク連中とウマが合うらしく、一緒に遊びに行ったりもしてるからな。まー、忍者も色々だ。
さぁ、折角玄心が入れてくれたんだ。まー飲んでから話を続けよう。』
武人は『親父が入れさせたんだろうが……』と思いながら、アイスコーヒーのグラスのストローに口を着けた。
すると、『ポンッ!』という音と共にコーヒーが吹き上がり、武人の顔を直撃した。
それを見た康人は大笑いしている。
『……親父……なんのつもりだ……』
武人はストローを加えたまま、顔面からコーヒーを滴らせて震えている。
『凄いだろ?グラスを壊すことなく、爆薬でコーヒーだけ吹き上がらせるなんて!』
奥に目をやると、玄心が土下座をしていた。
『この腕を買われてな。玄心が警察の爆発物処理班に出向することになった。』
『……だからといって、俺の顔をコーヒーまみれにする必要がどこにある?』
『まー、気にすんな。単なるイタズラだ。』
『あのな~……』
武人がプルプルしていると、玄心が申し訳なさそうに濡れタオルを差し出していた。
武人がタオルで顔を拭いていると、
『あ、それからお前も付き添いでしばらく出向することになったから。』
と、康人が言った。
『は?何で俺まで?』
『しっかり営業かけてきてくれよ。』
かくして武人は玄心と一緒に出向することになったのである。
また、この度の出向はかねてから玄心が希望している事でもあった。
元々爆薬のエキスパートだった玄心は忍者ショー等の爆発演出や煙幕等も担当していたが、テレビドラマ等に出てくるプラスチック爆弾や時限爆弾等、玄心達が元いた時代では無かったものに興味を持ち、勉強したいと言っていたのだ。
その上で、玄心の持つ爆薬の知識や忍者ならではの能力などが警察の捜査にも役立つとのことで、今回の出向になったのである。
『警察が欲しがる玄心の能力ってなんだ?』
武人は先程食らったコーヒー爆弾が凄いとは思ったが、実際なんの役に立つのか疑問だった。そもそも警察が爆弾を使うことはないだろうし、処理するために必要な能力ってなんだ?と思ったのだ。
『爆発物の声が聞こえるらしい。』
『は?』
武人は振り返ると、アニメキャラのTシャツを着てウンウンと頷いている玄心の顔をまじまじと見た。
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『マジか?』
『マジでござる!』
この時はまだ半信半疑だった武人も、出向している間に、その事実を垣間見る事になるのである。
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