65/73
其の六十五 義父となる
「婚儀が無事終わって良かったのお」
「・・うむ。船での婚儀を認めて頂けなんだ以外は良かったわい」
「まだ言うておるのか。荒れた北国の海でそれを行うのはさすがに無理があるじゃろう。船が波で傾いて娘はおろか婿までも海の中に落ちればそれこそ切腹ものじゃぞ」
「・・そうじゃな」
「これからお主も上役の息子の義父となるのじゃからな。余計な事をして娘や婿に迷惑を掛けるでないぞ。良いな?」
「うむ。それは肝に銘じておく」
「よし。ならば行くか」
「どこへ行くのじゃ?」
「飲みにじゃ。今日は奢ってやる」
「気前がいいのお。何か良い事でもあったのか?」
「無い。じゃが、お主のその寂しそうな顔を見るのは落ち着かぬからな」
「・・・」
「行くぞ」
「・・そうじゃな」
「言うておくが、ツケは払わぬぞ」
「・・それはもっと寂しいのお・・」
「何を言うておるか。奢らぬぞ」
「冗談じゃ」
「全く・・まあ良い、行くぞ」




