其の五十六 新天地
「何とか士官が叶って良かったのお」
「戦続きで兵は一人でも多く欲しい状況じゃからな」
「うむ。さて、これからはこの敵と目と鼻の先の領地が新たな生活の場になる訳か」
「そうじゃ。さすがに最前線だけあって兵たちが忙しく動いておるな」
「この光景を見ておると戦で手柄を挙げる機会が遂にやってきたのじゃなと感じる。感慨深いわい」
「うむ。戦で名を上げるのが武士の本懐。遂にその機会が巡ってきたのじゃ」
「そうじゃな」
「それはそうと、具足と陣笠を収納してある場所は聞いておるか?」
「いや、聞いておらぬぞ」
「今までの大名家とは違う故具足は借りねば出陣できぬのじゃが・・誰に聞けばよいものか」
「皆忙しく出入りしておるからのお。取り合えずあそこにいる警備兵らしき者に尋ねてみよう」
「うむ。しかしお主、よく嫁からの許しがすぐもらえたのお」
「嫁も周囲の嫁たちからうつけの良くない噂を聞いておったらしい。特に信仰深い訳ではないが、寺の坊主や信徒を皆殺しにしたとかいう話はさすがに許せなんだそうじゃ」
「なるほど」
「・・そこのお主、聞きたい事があるのじゃが」
「何じゃ?」
「今日付けでこちらに着任した者じゃが、具足や陣笠の場所を・・」
「ああ、もうその必要は無いぞ」
「は?」
「敵は昨日引き上げたぞ。どうやら敵方で何かがあったようでな」
「・・・」
「しかし交代の時間じゃというに遅いのお・・呼びに行ってくるか。お主たち、少しの間ここで警備を頼んだぞ」
「・・行ってしもうたな」
「うむ」
「戦は無しか?」
「うむ」
「・・・」
「・・・」
「えええええええええ!?」
「はああああああああ!?」




