初―闖入者―夢
次話でお正月番外編、初夢語は終わる予定です。
笠原さんに相談して町中の人に連絡網が回りだした。
飼主が見つかるまで有栖家で預かることになったのだが、その日から家の中で色々と不思議なことが起こるようになった。
例えば香澄の父、蛍一がいつもの風呂の時間に合わせてお風呂を焚こうとするとすでにスイッチが入っていたり。
または寝坊した母夕緋が慌てて起きてきたら炊飯器のスイッチが入っていて、寒いハズの台所は熱過ぎない程度にあたたかったりする。
そういう不思議なことが起こったとき仲のよい有栖家の夫婦はお互いに見合わせて揃って小さな居候を見るのだが、当の本人はコタツで丸まって尻尾だけが地面を叩いているのだ。
夕緋はそんなまさかね、と自分の思い付きがいかにもおかしいという体で笑っては家事をし始めるのだが、蛍一は真剣に考え込むようにするどい視線を向けるのであった。
有栖家で預かることになって最初に呼び名をどうするかで、今は二人になった家族会議を行う、と父は言った。夫婦で相談すればいいだけじゃないの?と思ったが、彼らもまだ香澄がいなくなったと認めてしまうことができないのかもしれない。
おこたの天板に新聞紙を引いて私を乗せると、あーでもないこーでもないと二人が言い合う。
父が
「"ぎんこ"はどうだ?」
と言ったときはあたたかい部屋の中が、いきなり壁を失ったかのように室内が冷え込んで感じたものだ。
言い訳を聞けば、銀色の毛並みにトラ模様の虎で"銀虎"だったらしいが、母のそんなの可愛くないわよの一言で一蹴された。
結局家名からアリスにしたらどう?かわいいし、の一言でまたアリスになっちゃったんだけど。
トイレは用意してくれたけど、こっそり外でしてます。
恥ずかし過ぎるわ!
とは言え、両親は闖入者の私をかわいがってくれたのも確かである。
でも、それに甘えきってちゃダメだよね!?
見てる感じ、私の生前と(違和感があるけど)変わらない生活習慣をおくっているようだった。
じゃあきっと父はお風呂に入るんじゃないかな、――まるで自分の家のように・・・ああ、自分の家だった――と風呂場へと向かうと排水用の栓を閉めて、"ぱぶ"の袋を銜えて持っていき、あけるのに苦労したので爪で破って蹴落として"風呂を沸かす"ボタンを押す。
ねこにもヤサシイ!肉球の低反発で、結構力強く押さなきゃだったし、蓋を閉めるのには体全体を使わなきゃいけなかったけど、なんとか上手にできました~。
冬はなかなか起きてこられずに、朝ごはんの準備が遅れる母であるが、その原因は炊飯器で、炊くのに必要な時間が決まっている分、点けるのが遅れるとその分予定が後ろにずれるのだ。
向こうで健康的な生活に慣れきった私はいつもどおり朝早くに目覚めてしまい、母が寝坊しているのに気づいたので、炊飯器のスイッチを入れた。お風呂同様、問題はない。母がセットしおわってくれているからだけど。
まぁともかく、やったったぜ~とおこたで丸くなっていたら(スイッチは自分で入れる)眠たくなってしまうのだ。
今ならねこの気持ちが分かる…ってねこだった。
父が胡坐をかいてテレビを見ているところに膝の上にお邪魔したり、料理中の母の肩に上がって怒られたりと、それなりに家の中の雰囲気が明るくなったような気がして、少し安心していたのだった。




