第71話 明かされる本性
戦闘開始!
サタン「その魔力、洗練されてるな。強くなってるのが肌感覚で伝わってくるぜ。」
サタンの顔から笑みがこぼれる。
湊「あの時の俺とは何もかも違うぞ?」
その言葉が聞こえた次の瞬間、サタンの足元が急に沈み始める。
サタン「お、これは…(沈んでいく?)」
湊「『影移り』の応用だ。このまま影の中で圧倒してやるよ。」
サタン「面白えな!いいぜ、乗ってやるよ。」
サタンは一切の抵抗もなく、影の中へと沈んでいった。それと同時に湊も自身の影の中に沈んでいく。
サタン「おお。わかってはいたが暗いな。」
そこは辺り一面真っ黒。どこを見ても、何も映らない。あまりの暗さに、自身の体も見えないほどだ。
湊「さあ、僕の手のひらで踊れ。」
次の瞬間、突如としてサタンを打撃が襲う。
サタン「ごっ!(急に来たな。)」
サタンが瞬時に攻撃がきた方向に拳を飛ばす。しかし、その拳は空を切った。
サタン「(これは面倒だな。何とかしてあいつを見つけたいが…)」
サタンが考えていると、再び打撃がサタンを襲う。
サタン「ぐっ!(またか。というか、あいつは俺の姿が見えてるのか?)」
湊「おいおい、このまま一方的にやっちまおうか?」
突如サタンの耳元に湊の声が響く。サタンは咄嗟にその方向に振り向くが、そこに湊はいなかった。
サタン「……はははは!いいじゃねえか!前とは違う!違う楽しみだ!」
そのまま凄まじい打撃の嵐が、サタンを襲う。サタンはそんな中、防御の体制をとりつつ、打開策を考えていた。
サタン「(この手数、人間じゃ無理な領域だ。影を使ってるな。だから絶え間なく四方八方から打撃が飛んでくるわけだ。問題は、どうやってあいつの居場所を突き止めるかだが…)」
サタンは冷静に状況を分析し始めた。だが、湊の居場所をどうやって捉えるかが、どれだけ考えてもわからなかった。
湊「(このまま何もさせずに圧倒する。)」
湊はサタンから少し距離を取ったところにいた。この空間は辺り一面が影でできていた。つまり、この空間の全てが湊の手であり、足であるのだ。しかし、この空間に引き込むには、少し時間を要してしまう。また、引き込まれる感覚もすぐに来るため、サタンの実力ならすぐにでも抜け出せるはずだった。しかし、強度の戦闘狂であるサタンの好奇心が、影の中に入ることを選んだのだ。
湊「(まだ未完成だったけど、まさかこんな形で試せるとはな。このまま倒せたらいいんだが…)」
しかし、そんな湊の望みはすぐにかき消されることとなる。
サタン「あー、駄目だ!わからん!こりゃ無理だな!」
突然、サタンの諦めの声が辺りに響く。
湊「(なんだ?降伏か?)」
サタン「すげえな、湊。まさかここまでとは思わなかったぞ。これなら俺も全力でやれる。」
次の瞬間、サタンから魔力があふれ出る。
サタン「俺の怒りを、全て受け止めろよ?」
次の瞬間、凄まじい衝撃が影の中を伝う。その衝撃は、湊が今まで感じたこともないほどの勢いだった。
湊「がっ、くっ!(これ以上は、まずい!)」
湊が必死に耐えようと試みるも、想定外の衝撃に押し切られてしまい、湊はその空間から押し出され、あまりの勢いに体が宙を舞った。
湊「くそ!(やっぱり、そう思い道理にはいかないか。)」
湊は影で勢いを殺し、安全に着地した。その直後、影からサタンがはい出てきた。
サタン「うっし!出れた!やっぱり光はいいな!」
そんな呑気なサタンとは対照的に、湊は警戒心を高めていた。無論、自身の有利な空間から追い出されたのだから、警戒はするだろうが、湊が警戒した真の理由は……
湊「(……こいつ、立ち込める魔力が今までの比じゃない。それに、なんだこの悪寒は。)」
サタン「さあ、ラウンド2だ!」
その頃、咲達は二手に分かれて激しい戦闘を行っていた。
ジークレイン「ははは!やるじゃねえか!楽しいな!」
咲「あなたも戦闘狂なの?どいつもこいつもくるってるわね。」
咲とジークレインは一進一退の近接戦を行っていた。咲は今までの修行の成果もあり、身体能力が上昇していた。しかし、それに負けじとジークレインも鋭い攻撃を繰り出し続ける。
咲「(実力は互角くらいかな。さて、どうやって打開しようかな。)」
咲がそんなことを考えていると、ジークレインの方で動きがあった。
ジークレイン「でも、そろそろ飽きてきたな。あんまり長くても父さんに怒られるし、流石に終わらせるか。」
咲「は?何言って…」
次の瞬間、咲の言葉が言い終わるよりも前にジークレインが私の目の前に来ていた。
咲「!しまった!」
咲は迫りくる拳を防ごうと、咄嗟に防御の構えを取る。だが、
ジークレイン「引っかかったな。」
咲「なっ!?」
その拳は精度の高いフェイントだった。それに気づいたころにはもう遅く、咲の鳩尾に強烈な蹴りが炸裂した。
咲「かはぁ!」
咲はその蹴りを受けて後ろに激しく吹き飛んだ。そのまま、咲の体は近くの家の塀に打ち付けられた。
ジークレイン「俺、昔から天才って言われ続けてたんだよね。才能だけならベルザ兄さんよりも上だよ。」
咲「ぐっ。あっそう。でもいいの?油断してると足元すくわれるよ?」
ジークレイン「安心しとけ。俺は油断しない。今からしっかりとどめを刺すからよ。」
そう言って、ジークレインが咲に突っ込んでくる。
咲「(まだ…まだ…今だ!)」
咲はジークレインの攻撃が来る直前に背中から吸血鬼の羽を出し、宙に舞って躱した。
ジークレイン「な!?(まじか。ほぼ消えたぞ。)」
咲「お返しだよ。」
ジークレインは即座に防ごうとしたが、咲の方が早く、ジークレインに渾身の蹴りをお見舞した。
ジークレイン「がっ!」
ジークレインはそのまま頭から地面に突っ込んでしまい、その衝撃でつけていたペストマスクが破壊されてしまった。
ジークレイン「ちっ!」
ジークレインは、追撃を恐れたのか即座に起き上がり距離を取った。
ジークレイン「ぐぅぅぅぅがああああ!」
ジークレインはうなりながら顔を手で押さえていたが、やがて落ち着いたのかゆっくりとその素顔を現した。
咲「……その顔は。」
ジークレインの顔は、酷く傷だらけの状態なのかいくつも包帯が巻かれていた。
ジークレイン「……見やがったな。俺の醜い顔を。」
その言葉をと同時、ジークレインの纏うオーラが変わった。
咲「!?(これはまずいかも。)」
ジークレイン「…死ね。」
次の瞬間、ジークレインが凄まじい踏み込みを見せる。その勢いは凄まじく、踏み込んだ地面がひび割れていた。
咲「(さっきよりも速い!)」
咲は躱すべく再び宙に舞った。だが、
ジークレイン「逃がすか。」
咲「なっ!」
何とジークレインは塀を蹴って咲と同じ高さまで跳躍した。
ジークレイン「落ちろ。」
咲「ぐっ!」
そのままジークレインが凄まじい速度で拳を振るう。咲は何とか防御したが、そのあまりの威力に耐えられず、勢いよく地面に叩きつけられた。
咲「……あっぶな。」
咲は何とか血液をクッションにしてダメージを軽減した。だが、そのまま流れるように上から蹴りが迫ってくる。
咲「くっ!」
咲は何とか身を翻してその蹴りを躱した。その蹴りの威力は、地面に小さなクレーターをつくるほどだった。
咲「(あんなの食らったら、ひとたまりもないね。)女子相手に大人げないんじゃない?」
咲は煽り交じりにそんな言葉を吐き捨てる。
ジークレイン「……女子相手、か。」
しかし、ジークレインの反応は咲の想像とは全く違うものだった。
ジークレイン「俺もそんな風に言えていればよかったってのか?」
そう言うジークレインの様子は、どこか悲しげで、後悔しているように見えた。
咲「?(様子がおかしいな。何があったんだろ。)」
ジークレイン「お前ら人間に何がわかるんだよ!」
そう言ってジークレインが怒りをあらわにして再び咲に襲い掛かる。
咲「くっ!(やっぱ速い。何とか隙を作らないと!)」
咲は何とか隙を作ろうと試みるが、ジークレインの想定外のパワーとスピードに回避で精一杯だった。
咲「(防御したら腕が持っていかれる気がする。でも躱し続けてもこっちの体力が……)」
ジークレイン「ちょこまかと良く逃げる。なら、これならどうだ?」
そう言ってジークレインは少し距離を取ると、無数の魔力弾を形成し咲へと放つ。
咲「(確かに多いけど、これくらいの速度なら躱しきれる。)」
咲は襲い掛かる魔力弾を回避しつつ、ジークレインに少しずつ近づいていった。しかし、
ジークレイン「油断したな。」
次の瞬間、突然魔力弾の一つが光り始め、強烈な爆発が発生した。
咲「ぐぅぅぅぅ!」
咲は間一髪バックステップを踏んだが、爆風に巻き込まれてしまった。そしてそのままの勢いで塀に衝突する。
咲「がっ!(やられちゃった。これはまずい。)」
ジークレイン「やっととらえたぞ。」
既にジークレインは懐まで迫っていた。そして強烈なパンチを咲の腹部へと放った。
咲「がはぁ!」
あまりの威力に、塀が破壊され、咲が後方に吹き飛ぶ。そして受身も取れず、地面に叩きつけられてしまった。
咲「……(頭部のダメージがひどい。意識が……)」
咲は意識を保てず、そのまま気を失ってしまったのだ。
ジークレイン「流石に今のはきついだろ。さて、次こそ完璧にとどめを刺してやる。」
そして、まるで死ぬまでのカウントをするかのように、足音が迫ってきていた。
?「あーあ、これちょっとまずそうだね。しょうがない、手助けしてあげるか。ちょっと体借りるね。咲ちゃん。」
次回
咲対ジークレイン 決着…




