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キク -幼少編ー  作者: 麻本
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24/24

20-5(完結)

「ポン太郎おぢさん。それにポン子さん。空さまが戦い易い様にする為に3人で、坊主たちを足止めしましょう」

「分かってるポン」

そう言ってポン太郎おぢさんも笑顔で答えた。

一方。藍様は凄い速度で宙を舞い、巫女の雪女に近づいて攻撃を仕掛けようとする。

しかし、ある一定の距離に近づいた所で動きが止まる。

「何じゃ?この雰囲気は?もしや結界か?」

藍様が警戒する。

そして藍様と雪女は、遂に対峙することになる。

ある一定の距離を保つと、お互いが次の出方を読む余りに、返って動けずにいるのだ。

だが、何処からともなく光の球が雪女に撃ち込まれて、結界が反応してそれを跳ね返した。

その刹那。

いつの間にか、雪女に近づいた空が、手から出す光の刃でもって結界を破る。

そしてそのまま、雪女に襲い掛かる。

その時に空さまは、雪女の持っていた槍を、柄から真っ二つにした。

それから直ぐ。雪女は懐から護符を取り出して構える。

空は、それに目掛けて刃を振るうが、当たりそうな瞬間、護符から丸い光が現れ、何か妙な音と共に、刃の光が途切れ、無力化される。

それを目の当たりにした空だが、怯まずに刃の応酬を繰り出す。

すると、徐々に雪女は後退しだした。

と、そこへ不意に残りの坊主が空に襲い掛かったが、空はもう片方の手で、光の球を出し、それを坊主の腹めがけて撃ち込んだ。

「!」

それを食らった坊主は気を失い、そのまま倒れた。

その隙に、雪女が逃げの体制をとり、走り去る。

「待てぃ!」

空は、すぐに追いかけようとする。

しかし、側にいた藍様に引き止められた。

「空よ。追いかけるな。わらわがとどめをさしてやる。わらわからもう少し離れておけ」

そう言われて空は、藍様から離れた。

すると直ぐに藍様は呪文を唱え始める。

そして藍様の身体全体が光り始め、やがて、等身大の光球が出来た。

「そうれえぃ!」

掛け声と共に藍様は、光球を雪女目掛けて押し出した。

その光球は前に進むにつれて、どんどん大きくなっていく。

その一方、逃げる雪女は右側が背丈に十数倍ある、断崖絶壁の場所に差し掛かる。

左側は緩やかな崖になっている細い道だ。

「ここまで離れれば、後は体制を建て直し・・・ひええっ!?」

雪女が後方を降り返ると雪女の直ぐ後ろに、背丈の十数倍はある光球が、断崖絶壁を削りながら、雪女が走るより少し早い速度で迫っていた。

「きゃあっ!」

雪女は緩やかな崖の方へ身を投げ、間一髪、藍様の攻撃から逃れた。

しかし、緩やかとは言っても其処は崖。

そんなに摩擦の無い岩肌に雪女は翻弄されて転げ落ちる。

そして、転げ落ちた先には無数の蔓が生えており、それに掴まる事で雪女は転落から逃れた。

「くうっ!」

雪女が上の崖のほうを見上げるとそこには、一部が半円に削られ、更に突出した崖が出来ていた。

「あんなのに当たっていたら、わしは今頃・・・」

雪女の身体が震えた。

でも、雪女は深呼吸をし、落ち着こうとしたその時である。

不意に、何かに両脇腹を掴まれたかと思うと、急に身体が宙に浮き上がる。

「!?」

雪女は何事かと思い、首を左右に振って周りを確認し上を見ると、空の顔があった。

「やめろー!放せえーっ!}

雪女が叫び、そしてもがく。

そんな雪女を空は無視し、力の限り支えて、先ほど出来た突出した崖に連れて行く。

崖に着くと空は雪女をうつ伏せにし、馬乗りなって更に雪女の頭を手で押さえつけた。

「ほうれ雪女。下を見ろ。高いじゃろう。間もなくわぬしをここから落とす!どうじゃ?地獄でも覗く気分じゃろうて?」

空が得意げに言う。

雪女は顔を横に向けて、空を見ようとする。すると身体もほんの少しだが動かせた。

そこで、雪女は利き腕の右を自らの身体に突っ込む。

そして直ぐ腕を外に出し、闇雲に腕を振って空の身体を探り、何かを空に貼り付けた。

「甘いわね」

雪女がふっと笑う。

「しまったッ!この札はッ!ふぐっ?熱い!あああ・・・」

空の身体から、白い煙が上がり、その熱さにたまらず立ち上がる。

そして、足がふらついた空は崖から転落した。

丁度その頃、ポン太郎と共に、坊主をやっつけたキクは、空の元へ向かい、

その空の転落する姿を目撃する。

それから、空の身体が地面へと落ちる。

そこへキクとポン太郎が駆けつけた。

「空さま。空さまぁーっ!」

泣き叫ぶキク。

「キクか。あの女相手に油断してしまった。負けてしまったよ」

「そんな事ありません。だってこうして身体も意識もあるじゃないですか!」

「ならばキク。先ずはここの身体にある紙切れを剥がしてやくれぬか?」

キクは空さまにそう言われて素早く紙切れをはがした。

「これで大丈夫です」

キクが必死になって言う。

「ありがとう。大分楽になったよ」

そう、キクに言った空だが、紙を剥がした所からまだ、白い煙がでていた。

「ちと、やばいかも知れぬな」

空さまが苦笑いをした。

その瞬間。

「きゃっ?眩しいっ!」

空の身体が光り、その身体はびい玉大の光として残った。

「空さまが。空さまが・・・」

泣き崩れるキク。

「キク?キクや?」

どこからか、キクの意識に直接、空さまの声が聞こえてきた。

「その声は空さま!?」

キクが身体を起こしてから周りをみると、びい玉大の光る物体が宙に浮いていた。

「キクよ。妖怪は死なんと言ったろう?倒されはしたが、砂粒でなくてびい球として残れたわい!あっはっは」

球体になった空さまが言う。

「しかし、これからどうしたものか。思う様には動けぬな」

空さまが悩む。でも、光の球となった空さまをみて、キクが突然、気を利かした。

「そうだ!空さま。あたいの身体を使ってください。あたいはどうなってもいいから。光になった空さまなら、きっとこの身体に入れるはず」

「なぜそんな事を?下手をすればわぬしの意識がすっ飛んで、永久に出れぬかも知れんのじゃぞ?」

「あたい、空さを助けたいんです!」

「・・ありがとう。じゃあ、手の平をこちらに向けて私を触れ」

空さまにこう言われたキクは、言う通りにした。

「んんんっ!」

キクは、光を手に取り込む時、僅かな痛みを感じたが、最初だけで、空さまの妖力が利いたのか、体調が良くなった。

「身体が軽い」

何処か、みなぎて来る力を感じるキク。

「おお。一時はキクがどうなるか心配だったが、お主の身体に共存出来たようじゃな?」

空さまが、キクの意識に直接、話しかける。

「これで、いつでも一緒ですね。空さま♪」

 そのまた一方。

キクと空のやり取りを高みの見物をしていた雪女には、大変大きな隙が出来ていた。

その隙をみて、藍様が雪女に近づく。

「これはあまり使いたく無かったんじゃが」

そう言って藍様が取り出したのは、鋼で出来た長い糸状のものである。

「それっ!」

鋼糸は、蛇の様にうねり、雪女の身体に巻きついて、そして強く締め上げる。

それから、締め上げられた雪女の二の腕からは、血がにじんでいた。

「ううっ!い、痛い。わしとした事が、油断したわ」

「隙ありじゃ。糸には毒を塗っておいた。徐々に蝕まれて、天に昇るがいいさ。すぐには殺さん」

藍様は、その場をゆっくり立ち去った。

そしてそのまま、藍様はキクの方へむかう。

それから雪女は、藍様の離れた隙に直ぐに坊主に救出された。

そして、キクと藍様が再び出会う。

キクの周りには、乾坤、ポン太郎、ポン子も揃っていた。

「空がやられはしたが、あっちの雪女は退治したし、坊主の殆どは再起不能。我々の勝ちと言って良いじゃろう」

「はい」

「そうだポン」

もののけの皆が頷く。

「では、我々は戻るとするか。皆で手をつなげ。・・・ようし。繋いだな?ノーマクサーマンダーボダナンテンイキサラツソワカ」

藍様がこう唱えると、キクを始めとするもののけの姿が一瞬でその場から消えた。

こうして、戦いは妖怪側の勝利で決着したのである。



 エピローグ


この戦いの後の数日後。雪女は薬王丸を無事に、新たな修行先の寺へ送り出す。

しかしそれから約一週間の後、原因不明の病に倒れ、雪女はこの世を去る事になる。

 そしてキク達は。

先ず、藍様は遠い所にある自分の住処に戻って行った。

それから、ポン太郎達は証乗寺という寺に住み着いた。

それからキクは。

戻った時に、まだ主の宿って居ない、一度は廃れた社を見つけ、新たな居場所とした。

「空さま。これからはここで永遠に人間達を見守って行きましょうね」


ー完ー



このお話は、戦い終わった所で終了です。

読んでくれた皆様。約1年と少しに渡るお付き合い、ありがとうございました。

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