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世界の意思にさようなら  作者: ラゲク
第三章 隅田川の怪物
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第23話 食い意地

 奥に取り込まれている女性は、どことなく川にいた少年と似ていた。恐らく、少年の姉にあたる人物なんだろう。


 とにかく早く助けないと……


彼女はこうしている間にも、化け物に取り込まれている。もちろん、僕自身もうかうかしていられない! この死なない身体でも、細胞ひとつ残らず吸収されたらどうなるのか?


 ……いまはそんなことを考える時間じゃない!

 まずは、目の前の女性を助けるんだ!


しかし、いったいどうしたらいいのか……

試しに、化け物の肉壁を引っ搔いてみたが、分厚くぶよぶよしていて、全く効果がない……。今度は、口を大きく開けて、嚙み千切る作戦でいった。


 ガブ!  ブチンッ!!


「やった! いけるぞ! 少しだが化け物の体内を削れた!」

その直後、急に大海原に放り出された小型の船のように揺れ始めた。

多分、痛みでのたうち回っているんだろう……


 このまま、嚙み千切って穴開けてやる!


ぼくは、無我夢中で嚙み千切り続けた……

生の鳥のささ身のような触感、たまに誤って肉を飲み込んでしまったが、今の僕には、そんなことを気にする余裕はなかった。段々と、楽しくなってきたのか、食いちぎる速度が速くなってきた。

「いいぞ、もう少しだ! なかなかこの肉もいいもんだ」

気付いた時には、ぼくは化け物の身体に大きな穴をあけていた。

化け物の方は、力尽きたのか動かなくなっていた。


 この勝負、僕の勝ちだ。


 魚のゼノとの死闘に勝ったぼくは、高揚感にあふれていた。

取り込まれている女性のことを、一時忘れるほどに……


自分が倒した敵の様子を今一度確認した後、体内に取り込まれている女性を助けるため、気が引けるが、もう一度体内に入った。


しかし、彼女は息をしていなかった……


もしかしたら、化け物と繋がったせいで、僕が化け物を殺したから、彼女も一緒に死んでしまったのかもしれない。


 ぼくはあの少年を探した。周りをぐるっと見渡す。すると、物陰に小さくなって隠れている子がいた。ぼくは、小走りで少年のもとに駆け寄り安否を確認しに行った。化け物に取り込まれていた人は、助けられなかったが、この少年は助けることができた。


 それでいいじゃないか……


そう自分に言い聞かして、女性を助けられなかった罪悪感から逃げようとしていた。


 「君、大丈夫だった? もう大丈夫だからね!」

「うん、」

少年はゆっくりと顔を上げる。 しかし、そこにいたのはヒーローではなく……

「うわあああああ、化け物!」

少年は、突如泡を吹いて倒れてしまった。


 まったく! 命の恩人に対してそれは失礼じゃないか?


「しっかし、顎がなんか重いな……流石に疲れたか?」


ぼくは、ピラニアの様になった歯をガチガチと鳴らし、少年を負ぶって避難区画へと向かった。



 朝8時を過ぎた頃だろう、避難区画の人たちのほとんどが起きて行動している。


 さて! 今日も復興作業頑張ろう! と、意気込んでいる中 僕たちが現れたことにより、辺りは大騒ぎになった。ここに来る時には顎と口の違和感はなくなっていた。


 ……本当に疲れただけだったのだろうか?


この時の僕は、ピラニアの様な口をしていたことに気づいていなかった。


 「ちょっと、ショウ! いったいどうしたの?」

騒ぎを聞きつけたのか、ハイノメとミナさんが慌てた様子で来た。

「ああ、川の方で魚型のゼノに襲われてな……。この子のお姉さんが犠牲になってしまった。とにかく、この子を頼むよ。気絶しているだけだと思うけど……」

「ショ、ショウさんは大丈夫なのですか? あ、そっか! 」

ミナさんは、僕の不死身の能力のことを思い出したのか、安心し始めた。

「そしたら服を脱いで、シャワーを浴びましょう! ショウさん、泥だらけですよ! すごく頑張ったんですね!」

確かに、今更だが体中泥だらけだ……

「でも、防御面全振りのあなたがよく勝てたわね。」

ハイノメが、不思議そうに聞いてきた。

「ああ、自分でも驚いているよ……まあ、中から食い破ってやったぜ!」

「……あなたの壮絶な戦いは聞かないことにするわ」

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