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Phase53 挨拶

 一ヶ月経った。今日は学会の日だ。クリノクロアからの手紙曰く、会場はレグランド、つまり俺の領地らしい。

 挨拶はメリッサやレミアと考えた。まあ当り障りのないようなことだ。

 この一ヶ月の間に研究は多少進展した。

 まず、苦行(物理)でしかなかったが、レミアのマッサージを受けつつ、ブッド伯爵用の魔力補給用魔法陣を作った。

 もちろん貴族用にちゃんと装飾をしてある。その辺の感覚はわからなかったので街にいる細工屋に頼んで色々と宝石とかを付けてもらった。もちろん宝石は俺が作ったが、人工ルビーとかは何がいけないのかわからないけど作れなかったので、他のものだ。

 ちなみに、この魔力補給用魔法陣も改良版で、即席の杖のようなことも出来る。

 魔法陣の周りに四種類の花の形に加工した魔晶石をつけ、衝撃を感知して動く、歯車式の仕掛けもつくった。こうすると、魔法を使った後の余波で魔力を同時に回復できる。

 まあ、一度で二百ちょっとの魔力ってところだからその後も連打とかしないといけないだろうが、それでも画期的な技術だとは思う。

 魔力の運用効率が圧倒的に良くなっているから、魔法使いの必需品になるかも。量産できれば。

 最高性能の物の量産はほとんど不可能だ。俺が二日間徹夜してひとつできるって所だし、大きさ的には人の手のひらほどと言っても作るのに手間が掛かり過ぎる。

 効率を半分にしたものだったら、量産は魔晶石があれば可能だけど、まあ普通の人には無理だろう。そもそも魔晶石の中でも等級の高いものは貴重だ。

 レミアのマッサージ(物理)を受けつつ二つ作った俺を褒めて欲しい。

 逆に言えばそれ以外ほとんど働かずに生きる魔晶石製造機になったり研究の様子を見たりして終わったんだけどね。


「――ではカナメ子爵。はじめの挨拶をお願いします」


 俺の番か。

 研究者だけで五〇〇人くらい入る中で挨拶するのは普通に緊張するが心強い味方、カンニングペーパーがあるから大丈夫なはずだ。


「えー。本日はお集まりいただきありがとうございます。カナメ子爵領レグランド研究所の所長を務めさせていただいているサトウカナメと申します。昨今の魔道具需要及び魔法陣の需要は主に杖のみでありましたが、この理由は魔晶石にありました。しかし--」


 ぐちゃぐちゃと五分くらい話した。一度も噛まなかったし、カンニングペーパーも三回くらいしか見ないですんだから良かった。

 他の研究所から来た人も挨拶を行っているがいまいちぱっとしない。遠慮しているのか?

 同盟国は三国、インラダムと、ライヒ、クライオだ。全部王立研究所があるらしい。

 王立研究所以外に研究所はないのか疑問に思ったが、あるのはクリノクロアの俺のところだけらしい。カナメ子爵領レグランド研究所とかセンスのない名前がいつのまにかついていた。


「では、まずはインラダム王立研究所の発表をお願いします」


 そう言って、挨拶を終える。あー緊張した。

 壇上から降り、来賓席に向かう。

 知り合いなんていないが、同じ来賓席に座っている研究者っぽい人が話しかけてきた。

「先ほどの挨拶は素晴らしかったですカナメ殿」


「それはどうも。あなたはーー」


「ライヒ王立研究所所長のムルドと言います。爵位はカナメ殿と同じ子爵。どうぞよろしくお願いします」


 すごく丁寧な口調だった。握手を求めてきたのでそれに応える。


「レグランドの研究環境は良さそうですね。王立でないのに予算とかはどうなさっているんです?」


 そう聞いてきたが、他の来賓席にいる方々も、と言っても数人だが興味があるようだ。来賓席にいる人は誰一人発表に耳を傾けていないが、俺も興味のない内容だったのでどうでもいい。


「確かに王立でないから王都からは予算をもらってないですね。でも研究に興味を持っている伯爵のお方などが援助をしてくれるのでそれを予算に。あとは個人的なお金ですね」


 個人的なお金という名前のカルビンの稼いだお金だが、元となっているのは俺が作ったもんだしそう言ってもいいだろう。


「それでもやはり、魔晶石などにお金がかかると思いますが……」


「まあ色々と仕入れルートがあるので、魔晶石に関しては申請して通れば自由に使って良いようにしていますね。そうすると色々と結果を出してくれますし、発表もなんか自信があるようですから期待していただければ」


 スキルのことは調べればすぐわかってしまいそうだがおおっぴらに言うのもどうかと思ったので濁した。自由に魔晶石を使えるというところではあ?みたいな顔をされたが、事実は事実だ。


「申請、と言ってもどのくらいのものなら通るのですか?」


「まあ相当無茶なものでなければ基本的には。町一個分とか言われたらちょっと厳しいですけどね」


 それはそれは、みたいな顔をされたが、他の来賓席にいる方々も話に加わってきた。


「クライオ王立研究所のメルダンと申します。カナメ子爵の研究所は交換研究員の制度はあるのでしょうか?」


「いえ、そういうのは……」


「では、こちらから研究員を派遣したい、という場合はどうなされますか?」


 ぬ。送り込みたいらしい。

 一応同盟国だし、関係を深めるという意味ではありかもしれないなあ。交換研究員とかは多分こっちから出るやつはいないだろうから企画だおれになりそうだし。

 他の国だろうと俺の所以外は魔晶石が不足気味だろうしわざわざ劣悪なところに行く奴はいないだろう。


「金銭的な援助をして下さるのなら受け入れることも可能ですがどうでしょう?」


 そう言うと考え込まれた。


「だいたいどの程度、でしょうか?」


「適正だと思われる価格を支払ってもらえるのならそれで良いです」


 具体的な金額はあえて言わない。というよりどのくらいの価値があるかわからないからだ。

 さらに難しい顔をして悩まれたが、しばらくして答えを返された。


「本国に戻って会議にかけないと具体的な金額はわからないですね…。ただ受け入れていただけるのなら是非に!」


 そう言われたので頷いて返す。

 今度そういう使者がくるだろうし、それに期待かな。


今日20時にも更新(間に合えば)

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