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Phase49 採用

 確保した研究所用の建物に引きこもり生活八日目。ずっと二階の一番奥の部屋で本とか標本とかを作っていた。

 トイレとご飯以外はずっとひきこもり。なんて不健康な生活なんだろう。

 昨日会議とかもあったが、報告を聞いて特に問題もなさそうだったけど、研究所設立にあたって住居とかそのへんのものも必要だろうから、その場所の選定、確保を頼んでおいた。

 何人来るのかわからないけど、二〇人も泊まれるスペースが有ればいいだろう。何個か候補はすぐに上がってくれたし、来週の会議を待とう。


 この一週間で、周期表とか科学的知識とその標本を作った。

 そういえば放射性元素とか作れるんだよな。危ないからその部分は避けて鉛までの固体のものをスキルで作成。正直鉛以上はあまり役に立つ気がしない。

 炭素の部分は何気にダイヤモンドだったり、金とか銀も大きいやつだったりで、売ればお金になりそう。

 ビーカーとかも作った。100mlとか正確に測れるようなやつは無理だから形だけだ。


 メリッサは発狂しながら魔力補給用魔法陣の理論を作っていたり、魔法陣を作るための機材が届いてからずっと顔を見ていない。実験しまくっているのだろう。カヌザーヤにあった店と同じ設備を整えてあるし、機械の台数的には三つもある。

 レミアは迷宮に行って今はいない。目の保養がほしいです。カルビンは俺に機材を届けてから、ちょっと市場制圧してきますって言ってどっか行っちゃったし、一人で色々やるにはいい環境だった。



 こいつらと、知っている化学系の知識を書いた本を作るのに二徹してしまった。

 眠い。


 眠いけど、来客のようだ。呼び鈴がなった。

 下に降り、覗き穴から誰か見てみるとこの前会議した時にいたおっさんだ。


「カナメ子爵大変です! 研究者っぽい大群が役所の方に押しかけています!」


 えっ……。ああ。多分魔晶石融通って話でこっちに来たのかなあ。


「わかった。すぐ行こう」


 今更ながら自分の服装が実験の後で赤黒く染まっているのに気がついた。

 ルビーの件が諦めきれなくって赤色の結晶を色々作ってたらこんなことになっていた。

 早く着替えていこう。



 役所の前は、理系っぽい集団が整然と並んでいた。

 なんかメリッサと同じ臭いがするぞ? 目がやばい。明らかに徹夜を何回もした跡とかあるし、独り言をブツブツと呟いている奴もいるし怖い。


「あー。今回研究所を作ろうとしているカナメだ。ここにいる奴らは全員魔晶石を用いる研究、魔法陣と魔道具とかの研究希望の奴か?」


「「そうです」」


「カナメ子爵、魔晶石に融通がきくとは本当でしょうか?」


「給料なんていりません。私はパンだけでトイレも行かずすべて垂れ流して研究し続けることが出来ます」


「私はそれ以上です。インラダムの学会で賞を貰いました」


「魔素遮断用溶液を種結晶があれば作ることが出来ます」


「あー。あー。あー。とりあえず、一人ずつ面接するから研究所の方に来てもらえるかな?」


 そう言うと、沈黙した。人数的には五〇人くらいか。予想よりは多い。

 これは器具を買い足さないとな……。



 研究所に移動し、一人ひとり面接と論文を見せてもらう。

 中身を見てもわからないので面接は俺が担当し、論文はメリッサにお願いする。

 よほど変なことやっていない限りは採用する予定だ。

 給料的には一人金貨十枚。生活するには最低限な感じだが、これ以上は出せない。


「では、研究内容とアピールをお願いします」


 最初は普通に見える青年だ。良識の有りそうな、なんといいうか貴族みたいな感じがする。


「はい、私はポルクスという名です。主に研究器具の改良、主に魔法陣を作成時の魔晶石分布の高精度化するための機械を作っています。その研究成果はこの論文に……」


 ふむ。機械関係で使えそうな人材だ。採用。


「給料は月に金貨十枚。休暇は成果さえ出せば自由。月一で報告書。魔晶石は申請制、ただしできる限り要望には答える。この条件でどうだ?」


「十分です。十分すぎます。給料なしで住み込みパンだけの条件でも私は構わないくらいです」


 あ……。こいつさっきトイレを垂れ流しとか言っていたやつだ。まあ使えそうだしいいか……。


「服とか見て思ったんだけど、もしかしてポルクスさんは貴族ですか?」


「よくわかりましたね。クリノクロアで子爵が研究者を公募していると聞いて親に頼み込んでこちらに来ました。穀潰しって罵られているのでちょうどよかったのです」


 笑いながら言っているが、この国が研究者に力を入れて無いのがわかるような言葉だった。

 穀潰しってひどい。


 爵位は俺と同じ子爵らしい。親は伯爵らしいし意外とお偉いさんだ。

 魔法陣に取り憑かれてしまってからずっと親の金で研究をしていたそうだ。

 同じ爵位だけど俺の指示に従うことには全く依存がないらしいのでよかった。


 だいたい他の人も似たような人だった。意外と貴族が多い。爵位的には俺と同等の子爵までしかいなくてよかったが。


 約五十人。正確には四十七人。全員採用した。

 頭おかしそうなやつとか、常識がなさそうなのも多くいたけど、そういう奴に限って実績があったりする。


 主に出身地は同盟国か王都から来たやつとかそんな感じだった。

 研究分野も魔晶石自体の加工、採掘関係から、魔道具などの接合時の接触抵抗の減衰とか意味のわからない奴とか、理論から実用的なものまで一通り人材が集まった。


 やはり、着目しているのはメリッサが空想と断じた空間関係の理論をやっている人がいたことか。

 日本でもタイムマシンとか研究している研究者も少しいるし、どこにでもそういうのはいるのだろう。

 日本に帰れるのかの死活問題になりそうだし、ヘタすれば行き帰りが出来るかもしれない。

 そこまで生きている間に出来ればいい。

 やはり、戦争とか行ってわかったけど日本に戻りたい。望郷の念がふつふつと湧いてくる。

 確かに爵位も貰ったし生活には安定しているけど、どうも恋しい。


 そういう話をすると、レミアもメリッサも聞きたがらないからあまりその前ではしないようにしているけど。


 採用試験、といっても全採用だけど無難に終わって、また問題が出た。

 研究所に研究者が入れないわけではないんだけど、器具が足りない。

 カルビンに頼んで買ってきてもらった魔法陣作成用の機械とかは圧倒的に足りない。


「この中で魔法陣を作るための機械自体を作れる奴はいるか?」


 そう聞くと五人ほど手を上げた。四十七人分の機械を作るのは不可能だし、十台作ればいいほうか。


「よし、機械もないし作るところから始めるか!」

本当に正確な測定器を作るのは難しいです。

例えば温度計(赤い液体の入ったやつとか)とかなら低温時と高温時でガラスの熱膨張率の差とかの違いによって微妙にずれます。

熱電対とか使う奴もありますが、初動が少し遅いのでずれたりとかも。

難しいですね。


あと、15000ポイントに到達したみたいなので(昨日の時点)、今日は連続三更新します。

18時19時20時に更新します。

ほんとはお気に入り5000でやろうと用意していたのですが、嬉しかったので。

この更新で、ユニークのハーフミリオンは行きそうな、はず。


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