Phase40 援軍
今日も穴掘りだ。気分的に今ならどんな女の子でも陥落させることの出来る感じだ。
調子に乗った。そんな睨まないでレミアさん。
戦争になってから、俺が裏方に徹するほどレミアもメリッサも仕事が無さそうで暇そうにしている。たまーに雑談をするけど、レミアはいつも通り無表情で口数は少ないし、メリッサはすぐに研究の話になる。
まあ、女の子と話せることって幸せだと思うけどね。
昨日と同じように水晶の管を作っていく。敵兵には気づかれる要素はない。
掘り進めれば掘り進めるほど、空気が悪くなっていく。
一応新鮮な空気を送って、ダメそうな空気をこちらから送り返す、ということをやっているが、それでもだ。
途中で岩の塊みたいのにもぶち当たったけど、相手が結晶なら俺の敵じゃない。
操作で横に埋め込んでおいた。
そんなこんなで、だいたい川まで後五十メートルもないような所まで来た。一度、ブッド伯爵の所に指示を仰ぎに行こう。
「川の近くまで管を通せました。後は川につなげるだけなのですが、そのままつなげると水流とかでバレることも考えられるので、どうしましょうか?」
「細い管か何かを通して、出来る限り水量を抑えるのは駄目なのかね?」
「多分管が持たないと思いますし、詰まったりしてしまったら元も子もないです」
「そのまま繋げるのは愚の骨頂だ。何か工夫をせねばな」
そう言って、工作部隊の所に意見を求めに行った。
この前の土下座させてしまったおっさんもいる所だからちょっと気まずい。
ブッド伯爵が数十人の前で事情を説明すると、すぐに意見が上がった。
「水量を抑えたいのなら、風車のようなものを大量に作り、減衰させればいいのでは?」
「管を細くするのもいいと思いますぞ」
しばらく意見が色々と出たが、結果的に風車の案を採用した。
「よし、カナメ子爵、頼んだぞ」
そう言われたので、まずは風車、というかプロペラを作る。
四枚羽位で、取り付け用に枠をつけておけばいいだろう。管の直径に合わせて枠は丸く、直径二メートルにもなる巨大だものだ。五個もつければ水流も抑えられそう。
管を通す位置によって水量は違うだろうし、そこだけは気をつけなければ。
ちゃんと回るかを全部確認して、取り付け作業だ。
枠も管も同じ水晶にしているし、接合しやすい。
無事に行くといいな。
取り付け終わって、更に掘り進む。
距離感覚がないのでいつ水が出てきてもおかしくなくなってきた。
というより、ちょろちょろともう水が出てきている。
コンクリート舗装とかされているならそんなことありえないんだろうけど、あいにくそんなものはない。全身もう泥だらけだ。
今までどおり、水晶の管を作ってから、土を掻きだす。そんな作業をしていると、あるところで目の前が水だらけになった。
開通したらしい。水道の蛇口をおもいっきりひねったような量が出てきた。
もう少し穴を広げ、それなりの大きさにしておく。あまり水が出すぎてもバレやすくなるだけだし良くないだろう。
大体ひざ下くらいまでの高さで安定するように調整し、穴の周りはちゃんと補強しておいた。魚が入ってくるかもしれないので一応網状のものも作っておいて魚が入らないようにしておく。
地上に戻ろう。扇風機もどきは分解して回収。プロペラの近くを通るのが辛かったけど、何とか通れた。水の流れがあるし、下手すると怪我をする可能性もあったけど大丈夫だった。
作業が一段落して、地上に戻れた。無事に水が出てきてくれてよかった。
これで援軍が来たら勝てるはずだろう。水の問題も解決できたし、壊れないかが心配だけど。
櫓に登って、敵軍が引くのを待つ。今日も敵さんはなんにも戦果が得られていなそうだ。
いや、こちらの水をなくしたと思っているのだろう。火系の魔法が使われた跡が多い。砦の内部のいたるところに焦げカスがある。水を使わせるのが狙いなのだろう。たまに櫓を狙って矢を射る奴もいるけど、ここまで届いていない。高いからか?って思ったけど、風の魔晶石のおかげらしい。矢の軌道を全部逸らしてくれるみたいだ。一方的にこちらが射かけることが出来る。この魔晶石も俺製だし、単純に風を吹かせるだけと言っても有意に使えていてよかった。
敵軍は、日の入りと同時に引いていった。今日の防衛戦も終わりか。
「早く終わらないかな。俺は平和に生きていたい」
「え?」
ん? メリッサに聞き返された。
「何か問題あるの?」
「地球組の伝手で貴族になったみたいだけど、これから権力闘争とかいっぱいあるんじゃないかしら?」
「あー。上に行こうとは思わないし、英雄とか地球組の手助けができればいいかなって思っているのだけど、それでもかな? 戦闘とかをできる限りしたくないし、そういう意味での平和なんだけど」
「平和に生きたいと思っても平和に生きれないのが今の時代よ。まあ、カナメの気性的に戦闘に向いていないのはわかるから、そう考えるのも無理は無いのかもしれないわね」
最後にキレたら別だけど、という言葉を付け足された。
それを言われたら弱い。切れたり高揚したりしたら自分の制御ができなくなるのはわかっているんだ。
そんなことを話してしばらく櫓でぼーっとする。
久しくレミアに血をあげつつだ。
この前の一件もあるからあまり血をあげるのもあれかな、と思っていたけどたまにはいいだろう。水も無事に出たし、今は機嫌が良い。
それにしなだれかかってくれる感触が素晴らしいからつい理由をつけて許してしまう。
最近成長期なのか知らないけど胸も大きくなってきてくれたし、成長途中の花を見る気分で、なんというか、鼻血でそう。
ぼーっとしていたけど、なんか単騎で騎士が駆けてきた。
それを見つけた門番が門を開けているし、味方なのだろう。
何か報告を聞いて、門番が血相を変えて走りだした。騎士はいつの間にか地面にぶっ倒れているし、傷だらけだ。
俺も会議室に向かおう。多分あそこに情報があるはずだ。今の時間を大事にしていきたかったけど、あの血相の変え方はなんかおかしい。
会議室に入ると、異常に重い雰囲気だった。
「水は、どうなった?」
英雄に問われた。
「無事に管が通り、水も十分に流れている状況です。何かあったのですか?」
「先ほど、援軍からの早馬が来た」
援軍がもうすぐ来るっていうお知らせか。水はあるし大丈夫だろう。
「同盟国の援軍は敵軍の別働隊により敗走したらしい。クリノクロアからの本隊も敗走したそうだ」
申し訳ないですが一部感想の返信を削除させていただきました。
ネタバレになっているのはまずいので。
追記:勢い余って感想ごと消していた模様。本当に申し訳ない。




