Phase21 研究所
早朝、トイレに行こうとして部屋を出ると、呼び鈴が鳴った
店に誰かが訪れたみたいだ。
ドアを開けずに除き穴を覗いてみると、白衣姿の男と騎士っぽい女がそこにはいた。どちらも人間っぽいが女騎士は顔まで鎧で隠しているので顔が見えなかった。
ただ、胸があるので女と判断したが、間違ってはいないだろう。
「どなたですか?」
「カナメ殿の店だな? 付いてきてもらいたいのだが」
一体何だと思ったが、昨日ロックさんの言っていた国の研究員だろう。そう思って素性を聞いてみると、案の定そうだった。
「護衛は伴ってもよいですか?」
「いや、カナメ殿一人を指名なのでカナメ殿以外はだめだ。道中は騎士団が護衛するので心配せずともよい」
そうは言っても自前の護衛なしは正直不安だ。とりあえずレミアとメリッサに相談してみよう。
「少し待ってください」
まずはレミアの部屋に向かおうとしたが、向かう途中、レミアとメリッサに会った。ちょうど玄関に向かおうとしていたみたいだ。
「誰か来たの?」
二人とも寝巻き姿のままだからいつも見ない感じで素晴らしい。
レミアに至ってははだけている。
「国の研究員みたいだけど、どこかに連れていかれるのに護衛を伴ってはいけないらしい」
「道中は騎士団が護衛してくれるでしょう?」
「そうらしいけど、少し不安かな」
「カナメの言う研究員が私の知り合いなら付いていくことはできると思うわ」
せめて一人は護衛を連れて行きたい。
レミアとメリッサを伴って玄関に戻ると、二人とも直立不動で待っていた。
朝なのによくピシッとできるな、と思いつつ、メリッサに場所を変わると、覗き穴を見てからすぐにドアを開けた。
一言くらいは声をかけてほしい。
「久しぶりね」
「メリッサじゃないか。何でこんなところにいる?」
どうやら知り合いのようだ。しばらく話していたが、無事メリッサも付いていけることになったみたいだ。
レミアとカルビンにはしょうがないので店で留守番してもらい、俺とメリッサは研究所に行くことになった。
一度襲われたことがあったので、心配していたが、道中は安全だった。
店も研究所も同じ街の中にあるから当然と言えば当然だし、騎士団に手をだすとは思えない。
問題はこの後だ。
研究所内に連れ込まれてから、何をされるかわからないのが怖い。
女騎士と研究員に案内され研究所の中を進むと、高級そうな部屋に案内された。
商業ギルドと同じような部屋だが、こちらは少し椅子のクッションが固い。あまりいいのを使っていないみたいだ。
しばらく部屋のなかで待っていると、白衣姿の男が一人の男をつれてきた。
「この研究所の所長を任されている、リートベルだ。ここにつれてこられた理由はわかっているかね?」
意外と若い男だ。髪はボサボサで身だしなみには全く気をつけてない人っぽいが、所長だし優秀なのだろう。
「魔晶石に関することでしょうか?」
「そうだ。今回の騒動は色々と聞き及んでいるだろう。我々も魔晶石が無ければ研究ができないのでね」
そこから色々話したが、ロックさんのところと同じ値段で買い取ってくれるみたいで安心した。こちらは週に一回五個ずつ作成すればよいようだ。
魔晶石の種類はその時何が必要になるか変わるので、毎回連絡を寄越してくれるそうだ。
正直国の権力で法外に安い値段で売らされることも考えていたが、そんなことは全然なく、誠実な対応をしてくれた。見た目に反してというのは失礼だが、良い人だ。
「カナメ殿も魔道具の研究をしているみたいだが、進捗はどうかね?」
「まだ初歩の初歩というところですね。最近魔法陣を作り始めたのですが、なかなか難しいです」
「魔法陣ってのは奥が深いからね。詳しいことはメリッサが教えてくれるのだろうが、優秀なものは研究所からお金が出ることもあるから、いいものが出来たら見せてくれたまえ」
いやに偉そうだなって思うけど実際に偉いからしょうがない。
頷いて返し、研究所を出ることにした。
帰りも護衛してくれるらしいが、この距離で護衛は意味ないだろうと思う。
それでも護衛をするのはそれが慣習となっているかららしいが、自前の護衛を連れていってもかまわないのではないかと物申したくなる。
店に戻ると、ロックさんの所から連絡がきていたようだ。
とりあえず注文どおりの魔晶石を作っておく。あとでカルビンにでも運ばせよう。
研究所に行ってなんだか魔法陣を作りたくなってきたのでメリッサに声をかけ、魔法陣をまた作ることにした。
メリッサを連れて工房に移動すると、袖を引っ張られた。意外と力が強くてよろけそうになる。
「カナメってもしかして属性のない魔晶石を作ることができる?」
初めて魔晶石を作った時に出来たやつだ。
結晶の形を保てるのは一瞬で、すぐに粉末状になってしまったあれだ。
「出来るけど、珍しいの?」
「魔晶石の中でもそれなりに貴重なやつよ。基本的に属性がついてしまうのが多いから、あまり産出されないわ」
いきなり何だと思ったが、メリッサが俺の手を握り、そのまま上下に振ってきた。研究バカだしまた周りが見えなくなっているのだろうか。
「それを使えば私の研究も進むわね。とりあえず今日は私のやっている研究の初歩の初歩をやりましょうか」
メリッサの研究は、魔力を注ぎ込んで威力を増大させる魔法陣を作ることだけに一点集中しているものだと思っていたがそうではないらしい。
研究費を取りに行くために、色々なものに手を出しているらしい。
その中でも、魔晶石が手に入りにくくてやりにくかった研究をしたいらしい。
何やら、属性のない魔晶石は魔力を注ぐと力を発生するものらしく、それを応用すれば色々なものに応用が効くそうだ。
この魔晶石のすごい所は、魔力を注ぐと力を発生するが、逆に力を加えても魔力を発生。つまり、魔力の回復ができるらしい。とはいっても変換効率が悪いので、そこをどうにかする研究らしい。
メリッサの話を聞いていると非常に面白そうだなって思ったので、とりあえず一つ属性のない魔晶石を作成すると、案の定すぐに粉末状になった。
属性のあるものだと自分で砕かないといけなかったから手間が省けて楽だ。
もちろん最初から細かい粒状にしておけばよかっただけなのだが。
もっと大きいサイズを作ってもよかったが、最初はこんなものでいいだろう。
俺が作った魔晶石を受け取り、メリッサは魔法陣を作り始めた。
やっている内容はよくわからないので、見学する。後で教えてくれるだろう。
数十分待つと、メリッサが顔を上げた。出来上がったようだ。
今回の魔法陣は少し歪な形をしている。以前作った魔法陣は何らかの法則性があって幾何学的に綺麗に魔晶石の線が引かれていたように思えたが、今回の魔法陣は単に横線が引かれ、真ん中に丸が書かれただけのように見える。
「魔力補給用魔法陣って名前を私がつけたのだけど、まだ未開拓の分野だからあまり法則性は見つかってないわ。とりあえず今の状態が初歩の初歩の形よ」
そう言われたので、とりあえず真似をしてみる。
前回魔法陣を作ったときは何も言われなかったが、今回は色々と口を挟んできた。
魔晶石と魔晶石の間隔を定規っぽいものでちゃんと調整したり、細かい作業なのでなかなか集中した。
最後に焼結して、魔素遮断溶液をかけて完成だ。
「うん。じゃあ力を加えてみて」
そう言われたので上から両手で押して見る。
そうすると体の中にほんの少しだけ魔力が流れ込んできた。
「すごいね。でも回復する魔力量は少ないね」
「それをどうにかするのを考えているのよ。と言っても今はこの段階からもう少しだけ効率のいいものはできているわ」
それでもそこまで効率がいいわけではなく実用性はまだ無いようだ。
オマケに俺だからいいけど普通にこの魔晶石を手に入れようとしたら、属性のあるものの何十倍の値段もするみたいなので将来流通させようとしても厳しいらしい。魔道具の核には粉末状になるので使いにくく需要はないよう だが、単純に取れにくいのが原因らしい。
まあ俺はスキルを使えばなんとかなるからそこは心配しなくてもよさそうだ。
メリッサにすぐに考えつくようなこと。例えば力をいっぱい加えたり、加える回数を多くしたりして、トータルの魔力量を多くする方法を提案してみたがやはり実践しているらしく、魔法陣自体を改良して、効率を良くするようにしないといけないようだ。
これも中々難しそうだが、魔晶石は作れるし、一番研究環境は整っているはずだからなんとか実用化したい。
そこからメリッサに色々と案を出したが、全て却下された。
圧電効果という性質をご存知でしょうか?
力をかけることによって電気を発生させるやつです
世の中の結晶は点群に依る分類で32種類に分類できますが(最近違うものが出てきたので正確な表現ではないです)その内の20種類がこの現象を起こします。




