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Phase13 スキル

 今日は迷宮に行く日だ。

 レミアに起こされて、かなり眠いが顔を洗って意識を覚醒させる。

 外はまだ日が出たばかりらしいが、もう馬車を借りてきたらしく、必要なものは詰め込み終っていて、後は俺が乗るだけらしい。

 馬車は四人用の物で、人の乗る部分と荷物を乗せる部分に別れている。

 少し窮屈そうだが乗れなくはない。しかし顔に出ていたのかメリッサに肩を叩かれた。


「これしかもう馬車がなかったからしようがないわ。御者は私がやるし、四人用を二人で使うのだからそれなりにはくつろげるはずよ」


「まあしようがないね。徒歩よりはマシだし」

 

 馬車に乗ると、レミアと二人っきりになる。向かい合わせに坐っているのに触れるか触れないかくらいの距離しかない。レミアの良い匂いが漂ってくるような気がした。


「緑青の迷宮ってどんな所?」


「ゴブリンっていう魔物がほとんどの迷宮」


 ボスみたいなのに少し強いのもいるけど、後から魔法でも打っておけば勝手に死ぬらしい。ただ、見た目が醜悪なのと、女性を種床として攫うのが難点だが、力も弱いし動きも遅いし、棒くらいの武器しか持ってないから万が一はほとんどないそうだ。

 噛みつかれたりしたら病気になるかも知れないからそこだけは気をつけよう。


「まあ弱いと言っても素人みたいなものだし、ちゃんと支援はお願い」


「いきなり数十匹がいるような所に放り込みはしない」


 話に集中していて気がついていないのかレミアの足が俺に当たっている。柔らかくてすごく良い。

 真面目な話だしもう少しこの感触に溺れていたいので、あえて言わないことにする。


「わかった。大体迷宮にはどれ位入るつもり?」


「一日以上は潜るつもりはない」


 迷宮の中で野宿することもできなくはないけど、臭いし眠りにくいしおすすめできないそうだ。今回は小規模な迷宮だから野宿なんてする必要はないみたいだし、できればしたくない。


「でも行くまでに野宿はするのだろ?」


「迷宮内でするよりはかなりマシ。迷宮に比べれば魔物との遭遇なんてあまり起きないしけどこの前襲ってきたやつらがまた来るかもしれないから警戒はする」


 警戒はレミアとメリッサがするそうなので俺は寝るだけでいいそうだ。そうは言っても正直怖い。

 馬車に乗っていて道が舗装されていないせいか、振動が激しい。坐っている所はただの木の椅子みたいなものなので 、おしりに悪い。

 クッションみたいなのがほしいのでスキルを使ってゴムを作成してみた。

 三十cm程度の正方形で、茶色い普通のゴムを想像してみたが、ゴムにしてはかなり柔らかい。


「ゴム?」


「だと思う。正直柔らかすぎてほんとにゴムなのかわからないな」


「でもスキルはちゃんと発動したの?」


「魔力も減ったし、一応発動しているはずなんだけど、イメージしていたものと違う物ができたんだ」

 

 そう言いつつゴムを敷いて座ってみるが、ないよりはマシだけど硬すぎて座り心地が悪い。


「そもそもスキルってなにか考えてみたことある?」

 

「魔法と多少違うくらいしかわからないかな。正直そこまで深く考えたことない」


「一番の違いは、魔法は自分の魔力量と適性、あとはイメージさえあれば、発動できるのに対して、スキルは少ない魔力量でも発動できる所。その代わり、できることはスキルに依ってしまうけど」


 レミアの目線がゴムの方に向かっていたので、すわり心地は悪くて申し訳ないと思いつつ、もうひとつ作って渡した。


「今までオリハルコンに塩、氷、魔晶石、水晶、そしてゴムを作ってきたけど作るのに失敗したのはこれが初めてなんだ。」


「魔力の消費量に違いはあるの?」


「魔力が足りないからほとんど作れないけど、オリハルコンが一番魔力を使うかな。あとは魔晶石、塩、氷、ゴム、の順で同じ量を作りたいなら必要な消費量は減っていく感じかな」


「何が原因かよくわからないね。スキルをどんどん使っていくうちにこういうことはよく起きるから、スキルに慣れていくしかないと思う」


 正直原因がわからないし、これから使っていくことで色々とわかることはあるだろう。

 何ができて、何ができないかが自分でも全部は分かっていないのは不味そうだ。

 結晶の作成は役に立ちそうだけど、操作が役に立つのか分からなくなってきた。最初はこれがお金になるかなと思っていたけど、魔力消費が多くて使いづらい

 

「結晶操作の方は魔力消費が多いから使いにくいんだけど、良い活かし方ないかな」

 

「発動は一瞬?」


 試しに先ほど作ったゴムを操作してみる。

 棒状になるようにイメージしつつスキルを発動させると、結晶を作成する時みたいに一瞬では出来なかった。操作をするためにゴムを上から下に撫でると自分の指に遅れてゴムが変化していく。

 ある程度魔力は増えているので余裕はあるが、それでもそれなりの消費量だと思う。ただ、ずっと操作のスキルを発動させていると消費量が多いだけで、ゴムを撫でるスピードを早くしたら、変化の速さは同じくらいだったけど、魔力消費はかなり少なくなった。

 おそらく発動時間に比例して魔力が消費されるのだろう。 



「形以外にも操作はできない感じ?」


 そう言われても操作するって形を変える以外に何かあるのだろうか。 そう思いつつ、ゴム内の炭素だけ右側に来るようにスキルを使ってみると、黒いものが手にくっついた。

  適当にやってみたら出来てしまったので、驚いてゴムを落としてしまったが、何が起きたのかレミアは理解できていないみたいだ。


「形以外にも出来るみたいだ。ゴムの中に含まれているものだけを分離とかできた」


「戦闘には役に立たなそうね。メリッサが喜びそうだけど」


 確かに研究には役に立ちそうだ。これを使えば魔晶石に含まれる不純物の除去とかできるのではないだろうか。

 他にも色々と出来ないか レミアと一緒に実験したが、これ以降特に見つからなかった。



  日も暮れてきたし、これ以上進むのは危ないらしいので、野宿をすることになった。

 電灯などもないので、光源はまだ少しだけでている太陽と、星くらいしかない。

 迷宮までの道は、森を切り開くように街道が敷かれていて、田舎の風景らしい。馬車から降りて、あたりを見渡してみると後ろも前も似たような景色で自分が最初にどちらを向いていたのか段々とわからなくなってきた。

 そうしているうちに、なぜか前の世界を思い出して涙腺がゆるみそうになる。


 メリッサが馬を木に繋いで、体を回して解している。御者をずっとやってもらっていたから体がこわばるのもしようがないだろう。

 メリッサにもゴムのクッションもどきを渡しておけば良かったと後悔するがしようがない。

 明日渡そう。


「食事はどうするの?」


「火はあまり使いたくないから、今調理しないでも食べられるものしかないのは我慢して」


 火を使うと余計に魔物とかが寄ってきて面倒くさいからそうするらしい。暖かい食事に慣れているから、あまりそういった食事に気が進まない。

 レミアに渡されたのは干した何かの肉と、かなり固いパンだった。咀嚼するにもパサパサしているのでのどが渇いてしまう。

 レミアとメリッサ以外誰も居ないので氷をスキルで作り、砕いて水に戻す。

 一応馬車の方に水瓶も積んであるのは見えていたが、できるかぎり節約したいらしい。

「俺が水を作れば水瓶なんていらなかったんじゃない?」


「万が一ってことがあるでしょ。もしカナメが倒れたりでもしたら水なしで迷宮に行かないといけないなんて自殺行為もいいところよ」


 レミアに呆れられた。言われてみればそうなので納得した。

 メリッサもやれやれという顔をしている。馬車で話しつつ座っていただけなので頭がまともに働いていないのかもしれない。



 食事をとりつつ、メリッサに今日見つけたスキルの使い方を見せてみた。

 ゴムを作成して、炭素だけを移動させる。


「面白いわね。それを品質の悪い魔晶石でやったら、それだけでもかなり稼げるんじゃないかしら」


「やっぱりそう思う? ただ、これもそれなりに魔力を消費するから、大量には無理かな」


「魔晶石の不純物を除去するのは確実に目立つからあまりするべきではないと思うわ。この前みたいに襲われることがあるかもしれないし」


 一から作るよりは効率がいいし、魔晶石については、個人用にやろう。

 襲われるのは勘弁してほしいが、襲われても大丈夫なように、早く力をつけたい。

 

「あとは研究的にも有効ね。魔法陣を作るときに、ほしい角度の結晶を作ることができるわ」


「角度? 角度によって色々変わる感じなの?」

 

「まあ詳しくは店に戻ってからね。その辺の話は実際に見せた方がわかりやすいし」


 話が終わったのを見計らってか、レミアとメリッサが見張りの順番について話している。

 俺が見張りをやったとしても何も役に立たないししょうがない。

 少し罪悪感を抱きつつ、食事を片づけた。


「寝るのはそこのテントでお願い」


 片づけている間にレミアがテントを張っていたようだ。ピラミッド型で、中は二人分くらいのスペースがあって、足は伸ばせるくらいには大きい。

 布団とかそういうものは一切なく地べたに眠る仕様のようなので、非常に寝にくそうだ。

 地べたより柔らかいほうが眠れると思うのでスキルでそれなりの大きさのゴムを作って布団代わりにする。


 そんなことをしていると、レミアもテントに入ってきた。最初はメリッサが見張りをするようだ。


「地べたに眠るのは嫌だから、布団みたいなもの作ったからそれ使って」


「分かったわ。私は途中でメリッサと交代するからいなくなるけど気にしないで」


「分かった。じゃ、おやすみ」

 

 そういいつつも、眠気が襲ってこない。

 レミアは寝つきが良いみたいなのですぐに寝息が聞えてきたが、寝息がどこか艶めかしいので、緊張してしまう。

 美少女と同じ部屋?で眠れることは非常に素晴らしいことだと思うが、何もハプニングは起きないので、生殺しされている気分だ。


 そう思いつつ、ぼーっとしていたらレミアが抱き着いてきた。

 以前血を吸われたときもそうだったが、レミアは抱き着き癖があると思う。

 やってはだめだと思いつつ、レミアの背中に手を伸ばして、俺も抱き着いてみると、柔らかい感触がたまらない。体は小さいし女の子らしいのに、俺よりはるかに強いのはすごく不思議だ。感触に集中しているうちに、眠ってしまった。


緑青は緑色の銅です。色々と余計なものついてるので正確な表現じゃないですが。

有毒と思われているのは日本だけで、ほんとは毒はなかったと思います。自由の女神が緑っぽいのもこいつのせいです。


ゴムって結晶……広義的な意味で結晶なのかなあ

例えばプラスチックとかって規則的配列を持っているので、結晶ぽい分類になりますが、

あんまりイメージがつきませんね。



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