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Phase12 防具

 ロックさんは何やら忙しそうだ。すごく真面目な表情で銀色の金属を叩いて何か作っている。

 あまり邪魔をしたくないので、ロックさんの弟子の一人に防具とかを購入したい旨を伝えると、ロックさんと契約した時に使った建物、といっても鍛冶場のすぐ隣だが案内された。

 前回来たときは全く気がつかなかったが、ここもちゃんと防備を整えているようだ。窓はなく、灰色の対魔法用防護壁で覆われた直方体型の無機質な建物だ。とは言っても俺の店と決定的に違うのは、外観は無機質な印象でも、内装は店らしく凝っている感じがする。刃物とか置いてあるので少し物騒だが。


「どのような物をお探しでしょうか?」


「動きやすくて防御力のある防具と、魔法用の杖、あと剣を探しているのだけど、何かおすすめありますか?」


 しばらく考えこんでいるようだったが予算を告げるとぶつぶつと何かつぶやいて奥に行ってしまった。


「金貨二十枚もあればそれなりのものが買えるよね?」


 メリッサはまだ少し不機嫌そうなのでレミアに話しかける。

 

「防具とか剣に関してはそうね。ただ杖は三級位のものが買えれば良い方かな」


「二級とかのは無いのかな。俺が魔晶石を売ったし」


 魔法の話になったからかメリッサがこちらを向いた。不機嫌そうな雰囲気をいい加減やめてほしい。

 

「三級と二級じゃ値段が天と地の差程あるわ。それに中々出回るものでないし、この前売った分はもう誰だかが買ってしまっているでしょう。それに杖を買ったとしても杖無しでの訓練は一応してもらうわ」


 そういうものなのか、と納得していると、杖のような物を持って戻ってきた。


「魔晶石は三級の中の下、ロック師匠の三番弟子が作ったものだ。金貨十五枚でどうだろうか?」


 大体指揮棒くらいの大きさの棒に、魔晶石が何個か付いているが、魔晶石はそこまで美しくない。といっても鑑賞には耐えるようなものだが、自分で作った魔晶石を付けたくなる。まあ魔晶石と杖の接合方法を知らないから無理なのだろうが。


「魔法を使ってみてもいいですか?」


「ここではなんですので、魔法を撃つ場所もありますしそちらに移動しましょう」


 そう言われたのでついていくと、対魔法用防護壁で囲まれた部屋に案内された。

 それなりに広く、二十五メートルのプールくらいの大きさだ。


 まずは適当に水が出るようにイメージする。この前みたいに大量に出てしまわないか不安だったが、ちゃんと狙った通りの量が出てきた。


「すごく魔法が制御しやすいねこれ。この前だったら水浸しになるくらい出てきていたのに」


 楽しいので水を何回も作っているとそんな姿を見てか、メリッサのとげとげしい雰囲気がなくなってきた。


「まあ三級ならその結果も妥当ね、少し良い物過ぎる気もするけど……」


「訓練的にはこれよりも性能の悪いやつの方がいい?」


「まああなたはいずれ二級とか一級のものを使うかもしれないし、それでもいいと思うわ」


 購入することを告げ、今度は防具を見せてもらう。防具は違う場所にあるみたいなのでまたついていくと、露出の激しいビキニーアーマーのようなものから、甲冑のようなものまでさまざまな種類の防具が置いてある部屋に案内された。


「動きやすくて、防御力のあるものはどのようなものがありますか?」


 ビキニアーマーの方は見ないようにする。男が着るものじゃない。


「うーん。甲冑とかでもここのは中々高級品ですので基本的に動きやすいように工夫されていますし、防御力もあります。ただ、防具によってはそれなりに重いものもあるので、せっかく動きやすいものを選んだとしても、重さのせいで逆に動きにくくなることも考えられます。防具を着慣れていないのならまずはこちら等いかがでしょうか?」


 持ってこられたものは、ただの服とズボンみたいなものだ。


「こちらはとある魔物から取れる糸を使用して編まれたもので、伸縮性や強度は折り紙付きです。ただ、保水性など着心地にかかわる部分が悪いので、裏にいろいろと加工をしています」


 触ってみると絹みたいな手触りだ。強度があるのかは分からないが伸縮性はかなりある。


「一応強度確認用の布地があります」


 そういってどこから取り出したのか分からないがナイフみたいなものを渡されたので、布を一突きしてみると刃は通らず、さらに金属音がした。


「強い衝撃に対して硬化する性質を持っているので刃物でさされても大丈夫です。上着とズボン合わせて金貨十枚と値段ははりますがいかがでしょうか?」


  そこまで言われたら買うしかないと思う。実際良いものみたいだし、買って損はない筈だ。

 一応レミアに目配せすると、頷いたので大丈夫なのだろう。


「じゃあそれをお願いします。後は剣も買いたいのですが……」

 

 どんな剣が欲しいか言おうと思ったけど剣の種類なんて分からないから言葉が出てこない。

 そんな様子に気づいたのかレミアが話を引き継いでくれた。


 

 剣のある部屋はすぐ隣の部屋らしい。入ってみると長いのから短いのまで、種類はよくわからないが色々置いてあった。

 レミアが部屋の奥から一振りの剣を持ってきたので受け取ると、意外と軽い。

 レミアの髪ほどとは言えないが、上品な銀色の剣で、刃が両方についている。


「そちらはロック師匠の二番弟子が打った剣で、軽さに比べて強度はかなり高いです。主に切り裂くことに重点を置いているもので、刃が欠けたりすることも考えられますので手入れが普通のものより必要なものです」


 二番弟子とか三番弟子とかいわれても誰がそうなのかよくわからない。

 使ったら手入れをしないといけないのは面倒くさいがしょうがないのだろう。


「体格的にも筋力量的にも剣の重さに頼るのは無謀」


 金貨十枚と言われたが、出せるので買うことにする。金貨二十枚位で抑えるつもりだったが、安全には変えられないだろう。


 他に必要なものはレミアが全部持っているらしいし、もう買うものもないので店に戻る。

 店に戻る途中、レミアに迷宮について聞いてみた。


「明日はどこの迷宮にいく予定なの?」


「魔物が弱くて近い所だと、俗称だけど緑青の迷宮というのがあるわね」


「近いってどれ位?」


「馬車で一日位ね」


 一日と聞いて近いの定義って何なのだろうか疑問に思う。この世界に電車や車のような便利なものはなく、交通手段は馬車とか徒歩とか、そういう原始的なものしかないらしい。  

 ただ、レミアみたいに自力で飛ぶことの出来る種族はいるようだが、生憎人間に羽は生えないので魔法で飛ぶこと位しか飛ぶ手段はないようだ。


「メリッサは飛ぶことができるの?」


「魔法使いだし風には適正があるから飛べなくはないわ。ただ、常時魔力を使うからそんなに長い時間は無理ね」


 俺も練習すれば飛べなくはないかもしれないが、実用的では無いようなので残念だ。



 工房に戻るとまたメリッサは作業をし始めたようだ。すごく集中しているみたいだし、あまり邪魔したくないので静かに工房からでると、レミアが俺の服の袖を引っ張ってきた。


「明日はかなり早めに出るから」


「ん。わかった」


 明日は迷宮。万が一はないだろうと思うけど、やはり怖い。

 でも今日みたいに襲われて殺されたり操られたりする位なら、頑張って自衛くらい出来るようにしないといけない。少し気を引き締めつつ、早めに寝ることにした。


糸に関してですが、ダイラタンシー現象が一番近い感覚でしょう。片栗粉と水を混ぜたものに瞬間的な力を加えると固体のような振る舞いをするあれです。

とはいっても液体に対する応力の応答性なので、糸みたいな固体に対しては多分定義できないと思うのであまり作中じゃこういう現象が起きるというとこだけでとどめました。


ダイラタンシーの説明だけで1000字いったけど消したorz

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