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第一話 旅立ち


「ここでこの戦いを終わりにする!」


そう強く叫んだのは、今や誰もが知っている勇者だった。勇者は目の前の大きな玉座に座っている魔王に剣先を突きつる。

そんな勇者の姿を見ても魔王はただ気だるそうにあくびをするだけだった。

 

「舐めてんじゃねー、クソ野郎」

 

魔王のその対応に腹を立てた勇者は地面を思い切り蹴り魔王に飛び掛かる。

強気に攻めた勇者の剣は、魔王の小さな魔力シールドに防がれてしまう。

 

「つまらない……実につまらない」

 

その言葉を聞き勇者はますます腹を立てた勇者の力が強くなる。

力が増す一方段々雑になっていく勇者の剣裁きを見て魔王は、自分を倒すと言われている男がこんなにも短気で弱いと「我も舐めれたものだ」と言葉が溢れてしまう。


その言葉を最後に完全に勇者の堪忍袋の尾が切れた勇者は、またもや無策に正面から突っ込む。

魔王はもう何も感じることはなかった、完全に勇者に興味を失ったからだ。

またもや振りかぶられる剣を魔力の壁で受けようとした時だった。


「魔法が発動されない?」


勇者の剣を目の前にし、魔王が突然魔法が使えなくなったからだ。

魔力の壁を発動しようと出していた魔王の右腕の中指と人差し指の間が裂かれる。

魔王はすぐに左手を握りしめて勇者を殴り飛ばす。

なぜだ……なぜだ……なぜだ!なぜさっき魔法が発動しなかったのはなぜだ!魔王が切れた右腕を眺めながら考えていると勇者が「だいぶ驚いてる様子ですね?」と話し出す。

勇者がぶつかった衝撃で崩れかけている壁をミシミシ鳴らしながら立ち上がり、自らにヒールをかける。


「俺の剣は魔法を覚えるんだ、覚えた魔法は無効化することができるもんでな、短気なバカな俺にピッタリなものだろ」


勇者はすぐに、魔王に向かい走り出す。

魔王はすぐに勇者に対して魔法を放つ。

戦いはジリ貧だった。勇者は何度も何度も魔王の魔法を剣で受け止め、吹き飛ばされを繰り返していく。

魔法を覚える剣とはすごいもので魔法を覚え始めると、攻撃手段が魔法しかない魔王と勇者の立場がすぐにひっくり返る。


「魔王というのは噂とは違い弱いんだな!」


だがそんな言葉を聞いた魔王は、怒りも悔やみも全くなかった。そこにあったのはワクワクそれひとつだった。

調子に乗りニヤリと笑う勇者に対して、魔王もニヤリと笑う。


「我はお前に興味が湧いてきたぞ!」


「はっ、俺はお前に全く興味がないがな」


魔王は左の腕を握りしめ、未来眼を発動する。剣を振るってくる剣を交わし、魔力を込めた拳を叩き込む。

打ち上げられた勇者は、魔王城の柱に剣を刺し勢いを殺してから、魔王の頭上に剣先を向け勢いよく垂直落下する。

すぐに魔王は剣身を掴み投げ飛ばす。


勇者は空中で耐性を整えると、詠唱を唱える。

勇者と魔王の戦いにおいて初めての勇者の魔法だった。未来眼は最大で2秒程度の未来しか見えない、そのため勇者は魔法が使えないと思い込んでいた魔王の反応は遅れた。

勇者が放つ閃光の雷が魔王に直撃する。

雷魔法のダメージとスタンの影響で、うまく体が動かなくなった魔王の腹を勇者が剣を突き刺す。


「これでみんなが平和に暮らしていけるんだな」


「それは無理なことだ……」


「それはどういうことだ?」


「ふふ…あとでわかる話だ」


そう魔王が呟きニヤリと笑い、灰になって消えていく。

残った誰も座っていない玉座に背を向けて、勇者は魔王城を後にする。

その後はとんとん拍子で進んで行った。魔王の死亡により世界からは明らかに魔族や魔獣の数が減っていったき、魔王が現在の時代とは違い平和な時代へと変わっていった。

しかし平和はそう長くは続かなかった。

魔王討伐の10年後突如として魔獣が活性化し、またしても人間は魔獣に怯える時代へと後戻りしたのだった。

そんな中、政府は対策として「冒険者制度」という新たな制度を作り、強い人が魔獣を狩ることで収入を得る仕事「冒険者」を生み出した。



—魔王討伐から75年後—

とある小さな町


「今日も平和だな〜」


そう脳天気なことを言いながら歩いている、ライヤ・スーベルトとという男がいた。

ライヤは街の商店街を歩き、顔見知りの相手と挨拶をしながら散歩をしている時だった。


「おっ…雑魚まだこんな町に居たのかよ」


と同年代の金髪の男に話しかけられた。

その同年代の金髪の男の名は、スーグ・イバール。16歳にして、この世界に25組しかいないAランク冒険者パーティーのリーダーだ。ライヤと同じこの村で生まれ育った幼馴染的存在だった。

才能に恵まれたスーグはライヤを見下していて、この村に帰ってくると何かとライナに絡んできては自慢話をする。


「あー久しぶり?君誰だっけ?」


「はっ、俺様を忘れたのかよ?しょうがないな…俺の名前はスーグ・イバール。最年少でAランク冒険者パーティーのリーダーを務め…」


自分語りを始めたら、1時間は話し続ける。だからその横を通り過ぎていく。

めんどくさいのが帰ってきたなと思いながら、歩いているライヤは町のを出て森に入る。



世の中には2種類の人間がいる。魔力をもつものともたないものだ。

魔力をもつものは魔法を使うことができる。それを生活や仕事に活かすもよし、魔法使いとして冒険者になるもよし。

魔力をもたないものは魔法をもつものよりも、筋肉量が多くできている。それをまた、仕事を生活や仕事に活かすもよし、剣士などになって冒険者になるもよしだ。


ライヤは魔力をもつものとしてこの世に生まれてきた。魔力をもつものは、一般人の平均として魔力10000を所有している。そんな中でライヤは人類の記録を更新する魔力を持っていた。ライヤの所持魔力は100だった。

ライヤは生まれながら魔力量が少なく、ろくに魔法も使えないは、筋肉量も多くないわでずっと弱いと呼ばれいた。

そんなライナには趣味があった。それは魔獣観察だ。

ライヤは毎日のように、森に通っては魔獣の行動などを観察していた。


「今日はどの魔獣を観察するか?」


ライヤが呟きながら歩いていると近くの茂みがガサガサとと音が鳴った。

すぐに反応し、近くの木に登る。

木の上からさっきまで自分がいたところを覗き込む。

そこにいたのは、緑色の肌に5歳の子供くらいの身長、右手には木のこんぼうを持っている。


「ゴブリンだ」


ライヤのちょうど真下には、ゴブリン一匹がいた。

これは初めての魔獣を狩れるチャンスなのでは?

こんな考えても仕方ない、ゴブリンは比較的弱い魔獣だが基本群行動だ。魔獣観察を始めてから何度も観察しているが一匹で行動しているのを見るのは初めてだった。

ライヤは弱い、だから一生魔獣を討伐できないかもしれない、しかしゴブリン一匹こんなチャンス逃すわけにはいかないとそう思ったのだった。

その気持ちにを抑えられなくなり、ライヤが木から飛び降りようとした時、さっきゴブリンが出てきて茂みからワーウルフが飛び出し、ゴブリンに噛みついた。

ゴブリンはなんの抵抗もできずにワーウルフに噛み殺される。


「はぁー…飛び降りなくてよかった…」


ライヤは胸に手を当て、ほっと息をつく。

目の前でワーウルフの捕食を見ても見慣れた光景だったからライナは落ち着いていた。それよりも早くワーウルフが退くことを望んでいた。




—4時間後—

 

「ただいま」


なぜかゴブリンを完食した後、その場で昼寝を始めたワーウルフのせいでライヤはが家に着いたのは日が沈んだ後だった。


「おかえりなさい、あと仕事しなさい」


ライヤを出迎えたのは、ライヤの母である、フィリシア・スーベルトだった。

ライヤの母の「仕事しなさいは」16歳になっても、働かないライヤに対するお願いだった。


「母さん無理だよ、俺バカなくせに人より力ないし、魔法も初級しか使えないんだから」


「何言ってんの力仕事はできるでしょ、毎日筋トレしてるじゃない」


「……」


「また黙って本当に家から追い出すからね」


「え?なんで」


そんな話をしながらも、2人で食卓を囲み机の上の料理を口に運ぶ。




「マジでどうしよう…?」

ライヤは食事が終わり、自室のベットに横たわっていた。食事前に母に言われたことが、どうにも気に掛かって仕方がない。

まじで明日になったら家追い出されるんじゃないの?

そう不安になりながらもライヤは眠りにつく。




—翌日—

「あれ今何時だ?」


ベットの上で目を覚ましたライヤは、扉を開けて空を覗き込む。

太陽はすでに真上に位置していた。


「ね、寝過ぎたー!」


ドタドタと音を立てながら階段を下り、リンビングに入り込む。

新聞を読んでいた母さんがライヤに顔を向け「まだいたの?」っと聞いてくる。


「寝坊した!」


ライヤは母さんの方を見ずに質問に答えて家を飛び出す。

商店街走り抜け、村門をくぐり抜け、森に中をかけ目的地へと着く。

 

ライヤの秘密基地だ。

洞窟の中にできた秘密基地は、ちょっとした水溜りとどこからか拾ってきた的が置いてある。

ライヤは秘密基地に入ると、走ってかいた汗を腕で拭い水を手ですくい口に運ぶ。


「ぷっはーっ!生き返る…!」


ライヤは大声をあげたあと、毎日の日課である筋トレを始める。





「寝坊したから帰りが遅くなっちまったな」


筋トレ終わりライヤは、茜色に空を眺めがら帰路に着く。




森を抜け村に入った時にはすっかり暗くなっていた。


「や、やめ゙で」


ライナがそんな声を聞いたのは、まだ明るい商店街を歩いている時だった。

嫌な予感がし、その声が聞こえる方へ歩いて行くと、頭の悪そうな子供が3人がよってたかって1人の子供を蹴ったり殴ったりしていた。

周りの大人たちは、誰1人して止めようとはしない、それも仕方ないいじめてる子供の1人がこの村一番の権力者の子供だからだ。


「おい何やってるんだクソガキ」


ライヤはこの子供が権力者の息子であることに気づかず割り込んでしまった。


「なんだ気安く話しかけるな!せっかく楽しんでたのに邪魔するな」


「いや、してはいけないことをしてるから注意しただけだ」


「は?なんで俺は何しても許されるんだ」


「ダメだ」


「いや、何してもいいんだ!」

 

「ダメだ」


「僕は何したって許されるんだ!」


「ダメだ」


「しつこいな兄ちゃん、もしかして僕様のことを知らないのか?僕はなこの村一の権力者……」


ライヤのダメの連呼にムカつき、名乗ろうとした子供の言葉はライヤのグーパンチにより途切れた。


「君には何しても許されるんだろ?」


毎日筋トレしているライヤのこぶしは思ったより強く、顔面に受けた子供は鼻血を流しながら「あ゙、あ゙ー」と唸りながらうずくまっている。

取り巻き2人は、ライヤのグーパンチを見たあとすぐに逃げ出して行った。

ライヤは血で汚れた手をいじめられた子に差し出し、立ち上がらせる。

いじめられた子供をその場から離脱してもらい、その後殴った子供に向き直る。


「さぁどうしてくれるか、何をしてもいいんだよな?」


ライヤは指を鳴らし、立ち尽くしている。


「うちの子に何をしているの、あいつを捉えて!」


そう叫んだご婦人の命令に従い、いかつい男たちがライヤにつかみかかる。


「おいなんだよこれ」


「それはこっちのセリフよ」


ライヤの顔を思い切り、引っ叩かれる。

ライヤには意味がわからなかった。ただ人を助けただけなのに、なぜ自分が怒られているのかを、混乱のなか婦人は言葉を続ける。


「なんでうちの子を殴ったの?」


ライヤはその言葉を耳にしてもボーとしているだけだった。

ライヤの混乱が解けたのは婦人の二階目の平手打ちの後だった。

混乱が解けたライヤは婦人に言い返す。


「お宅の子供が大人数で1人を囲みいじめをしていたもので、教育の一環ですよ」


「そんな嘘通じるわけないでしょ!うちの子は優しくて真面目な子なんだから」


「はは、そんなお子さんはどこにいるんですか?どこを見ても見当たりませんが?」


「あんた本当にわたくしを怒らせたわね?私の力で家族ごと潰してあげるわ!」


ライヤはその言葉を聞き、気づいた。喧嘩を売る相手を間違えたと……


「筋肉増加I」


魔力消費10の補助魔法を使い、無理やりたくましい男2人を払いライヤは走り出す。


「早くあいつを捉えなさい」

 

まずいことになったライヤはひたすらそう考えていた。婦人が言っていたことが本当になる。それだけが確かだった、母さんを巻き込まないためにどうするか……だ。

運が良かったことに、婦人とライヤの面識はなかった。ライヤからその母に通じることはない。

それなら……





村の明かりが完全に消え静かになった。

完全に男な婦人を撒いたため一度家に帰る。

ライヤは母を起こさないように忍足で、自室に入り母への手紙を書き始める。

手紙を書き終えると、バックを取り出して荷物を詰めるリビングへと降りる。

机に手紙を置いてから、玄関のドアノブに手をかける。


「行ってきます」

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