表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バタフライエフェクトギルド〜異世界のギルド、書類が山積みだったので全部やっておきました〜  作者: くろかっぱ
二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/31

第二十七話:できることをしていただけ

朝、ギルドに入ると、ベックが待っていた。


「ケンジさん」


「おはようございます」


「少しよろしいですか」


カウンターの端に来た。声が低かった。

「ここ数日、外に出ていることが多かったようですね」


「はい」


「ギルドの業務は滞りなく動いていましたが」


「ありがとうございます」


「私が言いたいのはそういうことではなく」

ベックが少し眉を上げた。

「受付係が外を飛び回るのは、本来の業務ではないはずですが」


「そうですね」


「……わかっているなら結構です」

それだけ言って、ベックが戻っていった。


マーサが隣で「あれがベックさんなりの心配だよ」とぼそっと言った。



午前中の業務が落ち着いた頃、ジンを呼んだ。

「少しいいですか」


「はい」


小さな袋を渡した。

「おばあさんと蜂蜜茶でも飲んでください」


ジンが袋を受け取った。

しばらく黙っていた。

「……いいんですか」


「どうぞ」


ジンがまた黙った。小さく頷いた。


「せっかくなので魔力測定もやっておきましょうか。まだやっていなかったので」

ジンが少し止まった。


「……字を覚えたら、と思っていました」


「関係ないですよ。字と魔力は別です」



ベックに頼んだ。

「魔力測定をお願いできますか。ジンと、私も」


ベックが少し目を細めた。

「……ケンジさんも、ですか」


「はい」


「また測定不能と出ますよ」


「確認したいので」


ベックが「わかりました」と言った。


ジンが先だった。

測定石に手を置いた。

しばらくして、ベックが数字を見た。


「……ほう」

珍しい反応だった。

「総量が平均より頭一つ抜けていますね」


ジンが「そうですか」と言った。あまり気にしていないようだった。


次はこちらだった。

測定石に手を置いた。

ベックが数字を見た。


「……魔力が低いまで成長しましたね」

ベックが本気で不満そうな顔をした。


「ありがとうございます」


「褒めていません」


「そうですか」


「私は多少ある方ですけどね」

ベックが少し胸を張った。


「よかったですね」


ベックが一瞬だけ睨んできた。



昼前、ティナが駆け込んできた。

「ケンジさん、灰ってどこで手に入りますか」


「かまどの灰で十分です。何かありましたか」


「昨日の話を聞いて、朝一でギルドのトイレに撒いてみたら」


「どうでしたか」


「息止めなくてよかったです」

ティナが真剣な顔で言った。


「今まで息止めてました」


「そうでしたか」


「革命です」


「大げさです」


「大げさじゃないです!!」



午後、ゲオルクの鍛冶場に向かった。

扉を開けると、金属を叩く音がした。


「ゲオルクさん、少しいいですか」


「なんだ」


「発注したいものがあって。紙に書いてきました」

紙を渡した。


ゲオルクが受け取った。

「……丁寧だな」


しばらく読んでいた。

「鉄釜、焚き火台のようなもの、鉄板焼き用のプレート、焼き鳥用の調理台」

顔を上げた。

「……一度に言うな」


「すみません」


また紙を見た。

しばらく黙っていた。

ゲオルクが鉄板の図を指で叩いた。

「これは面白いな」


「腕の見せどころですね」


ゲオルクが「……そういうことにしておく」と言った。

金属を叩く音が再開した。



マレクの店に寄った。

「アンピークで屋台を出したいと思っています」


マレクが「ほう」と言った。


「鳥の串焼きと粉を鉄板で焼いたものです。炭火で」


「炭火か」

マレクが少し考えた。


「旅人の一口の夏向けはどうなっていますか」


「蜂蜜から一回離れてみたんだ」


マレクが腕を組んだ。

「蜂蜜は夏に持たない。だから豆で試してる。甘味を加えて乾燥させる。保存も効くし携帯しやすい。ただ旨いかどうかはまだわからん」


少し止まった。


「流石です」


「だろう?」


マレクが腕を組んだ。

「旅人の一口は、結局持ち歩けなきゃ意味がないからな」


「かなり良い方向だと思います」


「よし、だったら早速試してみるか」


「楽しみにしています」


「あ、で、粉を鉄板で焼いたものってなんだ」


「それはですね——」



夜、アンばあさんの長屋に戻った。

アンばあさんが「お湯沸かしてあるよ」と言った。


「ありがとうございます」


手桶にお湯を注いだ。

湯気が上がった。

お湯を浴びながら、ぼんやり考えた。


たまには湯船に浸かりたいよな。


お湯が、思ったより熱かった。

悪くない夜だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ