表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バタフライエフェクトギルド〜異世界のギルド、書類が山積みだったので全部やっておきました〜  作者: くろかっぱ
一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/28

第十二話:冬が来る前に

翌朝、トールが薬草師から戻ってきた。足首に包帯が巻いてあった。


「どうでしたか」


「湿布です。三日は無理しないようにって」


「わかりました」


トールがカウンターに肘をついた。

「ケンジさん、昨日帰り道すごく腹が減りました」


「そうですか」


「朝に飯食べて、昼に行動食食べて、それだけで夜まで動いたので」


「行動食は何を持って行きましたか」


「硬いパンと干し肉です」


「感想は」


「……正直、あんまり。疲れてる時に硬いパンを噛む気力がなくて、結局残しました」


疲労時に噛む動作がネックになっている。栄養を取らないといけない時に食べにくい。設計が逆だ。

それからトールの服を見た。麻のシャツ一枚だった。

「昨夜、寒くなかったですか」


「……寒かったです」トールが少し肩を縮めた。「夜になったら急に冷えて」


「防寒着は持っていきましたか」


「荷が重くなるので置いてきました」


「次からは持っていってください」


「でも重いんですよね……」


トールが出ていった。

食料と防寒。

どちらも、たぶん解決できる。



昼休み、アンばあさんの道具屋の前を通った。

立ち止まって、棚を眺めた。


松明、ロープ、保存食、革袋、簡単な包帯。


最初にここを覗いた時、頭の中でリストを作った。直せることが山ほどある、でも信頼が先だ、と思って通り過ぎた。

あれから何ヶ月も経った。信頼はできた。でもリストには手をつけていなかった。


そろそろ、いいかもしれない。


アンばあさんが奥から顔を出した。

「ケンジさん、何か入り用かい?」


「いえ、少し見ていました」


「気になるものがあったら言っておくれよ」


「……近いうちに相談させてください」


アンばあさんが少し目を丸くした。それから嬉しそうに笑った。


「待ってるよ」



夕方、台帳を眺めた。

冒険者の依頼記録と報酬の動きを追っていると、あるパターンが見えてきた。報酬が入った日に引き出す冒険者が多い。翌日にはほぼ残っていない。

貯めている人間がほとんどいない。

怪我をして依頼に出られなくなったら、翌月の宿代が払えず、食事が買えなくなる。怪我が治っても腹が減っていれば動けない。

怪我をしたことで、怪我が悪化する。

おかしな話だが、台帳を見れば現実だとわかった。


備えがない。


そういえば行商人もそうだった。現金を運ぶ手段が行商人頼みで、何かあれば村ひとつが困窮する。現金を安全に預ける場所もない。届ける仕組みもない。


全部、仕組みがなかった。

仕組みを作れば解決できる。

難しい話じゃない。


帳面を取り出した。二つの問題を書き出した。


一つ目。冒険者が怪我をした時の備え。


二つ目。現金を安全に預けて、必要な時に使える仕組み。

書きながら、頭が整理されていった。元の世界にあったものだ。言葉はないが、概念は作れる。

ただ一人では無理だ。アンばあさんに動いてもらう必要がある。ガドの許可も取らなければならない。

順番がある。まずアンばあさんと話をすることだ。

道具屋の問題も、一緒に持っていこう。

帳面を閉じた。


やることが増えていた。でも優先順位はある。冬が来る前に、動き始めなければいけない。

明日、アンばあさんのところへ行こう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ