第三話
扉の前に白薔薇が飾られている部屋は、白と黒のモノクロで出来ている。
家具はすべて白と黒で、壁さえもそうだった。
そんなモノクロで出来た部屋に一人の少女が座り込んでいた。
お人形みたいなその少女は手にオルゴールを持っている。
オルゴールを開くと、静かで心地の良い音楽が流れてきた。
少女は静かにその音楽を聴いている。
少しして、オルゴールの音楽が止まった。
少女はオルゴールの引き出しになっている部分を開いた。
その引き出しの中にあったのは、一枚の古びた紙だった。
その紙には文字が沢山並んでいている。
メモだった。
メモの文字は全部書き殴られたもので、殆どが読み取れない。
でも、少女はそのメモを大事そうに抱えた。
「お祖父ちゃん……」
少女はメモを大事に大事に抱えて今日も眺める。
メモの端には一つのサインがあった。
サインは、サヴァンと読めた。
◇◆◇
誰かが笑う。
灰が入った瓶が並ぶ棚の前で。
「もう少し……もう少しなのよ……この館から出られるようになるのは……!!!」
その人物はよくわからない。
いつしか自分というものを見失い、全くの別人になってしまった。
その人物がいるこの場所はどこだろうか。
誰からも忘れ去られ、自らも見失った女性は灰の入った瓶を並べていた。
その女性は大きな鍋の前に立ち、今日もよくわからないことを言う。
「ああ、ラ・ファンは負けてないのよ。そうよ、負けていないのよ。時空の歪みで消えてしまった王子二人と陛下の弟君が生きている限り、ラ・ファンはいくらでも建て直せる。_____」
その女性は虚ろな目でそう言う。
言葉という名の呪いを受けた人の目だった。




