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序章
それは、ひどく冷たく、絶望に満ちた記憶。
白銀の毛並みを持つ巨大な獣、フェンリル。強大すぎる力を持つがゆえに恐れられた彼は、悠久の時をただ一匹で彷徨っていた。
魂の半身である『番』に出会うこともなく。
吹き荒れる吹雪の中、孤独に心を蝕まれながら、巨大な獣は静かに息を引き取った。
――誰か。誰でもいい、俺を見つけてくれ。
その悲痛な願いと共に、獣の魂は永い眠りにつき、やがて温かな光に包まれて人間へと生まれ変わった。
「……っ、また、この夢か……」
銀色の髪を持つ少年、レイ・アルジュは、頬を伝う涙を手の甲で拭いながら身を起こした。
前世の記憶など、彼にはない。ただ、時折ひどく悲しくて、胸が締め付けられるような孤独な夢を見るだけだ。
ぽっかりと空いた心の穴。それが何なのか、どうすれば埋まるのか、レイ自身にもわからなかった。
ご都合主義、脳内お花畑のよくある溺愛系です。
頭からっぽにして読んでいただけますと幸いです。




