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第0話「『異星人の発見』探査士、明星待雪の手記。」(月編読了後に閲覧推奨、読まなくても〇)

注意!!

・この物語にはとても多くの概念や能力、特異な物質が登場します。

・概念や能力の事をあまり理解していなくても(多分)楽しんで読める物となっていますが、恐らく理解すればするほど更に面白い物語として読めるかと思います。


・一話一話のボリュームが約4000字と多めです。


・そして、よかったら最後まで読み進めてあげてください。

『知ってもらう事』で、彼らは強くなれるのですから。

記載日 2043年11月16日 活動場所 月面。

name ・ 明星(あけほし) 待雪(まつゆき)


 我々、A(宇宙人).S(捜索).O(組織)の隊員が政府及び、政府に並び立つ治安維持組織であるブライツの許可を受け総員5名で月に降り立ち……すぐに悲劇が起きてからもう2日がたった。


 私はA.S.O所属の探査士の明星(あけほし) 待雪(まつゆき)だ。まずは手記の作成が遅れた理由を以下に記させてもらう。



 ­­­――­­­――­­­――­­­――



 我々は『月に生息する生命体の探索』を行うために鈍重な宇宙服を身に纏って灰色の大地(月面)へ降り立ったのだが、月は我々を歓迎してくれはしなかったのだ。


 むしろ、降り立った直後に我々へ月は『文字通りの鋭い爪』を向けてきたのだ。

 最初に探査機から飛び出したジーノ探査士が我々の目の前で未知の存在(月の生命体と思われる)に襲われ、奴の爪によって体を3つに裂かれて即死。


 突然現れたソレを見て我々はパニックになって、離散した。

 私の予想が正しければ、恐らく私以外の生存者はもう居ない。

 他の彼らの断末魔を通信機越しに聞いたのだ。


 皆を殺した後に私を追ってきた未知の存在だったが、私の『一時的に身体能力のリミッターを解除できる力』でなんとか撒く事ができた。

 その後に必ず来る反動を考えて動けるような余裕は無かった。


 私が恐る恐る探査機の近くに戻ると、船の周りにはもう誰も居なかった。


 コレ(手記)を書き始める前に私が貴方達政府へ送ったデータの通り、月には確かに生命体らしきものが存在していた。

 黒い、巨大な狼のような生命体が。


 恐らくこの手記を持ち帰るのは、私自身ではないだろう。

 月の恐ろしい爪は我々だけでなく、我々が地球へ帰る時に使うはずだった探査機にも振り下ろされていたのだ。

 探査機は月狼(つきおおかみ)(仮称、先日我々を襲った生命体)によって支柱の一部を破壊され、飛び立つ事が不可能である。


 今になってリミッターを解除した反動がきた。

 空腹で倒れそうだ。



 ­­­――­­­――­­­――­­­――



 技術の進歩によって様々な惑星の地表を観測できるようになった中、いくつかの惑星は原因不明のエラーによって地表を観測、記録する事ができなかった。

 地表を観測できた惑星の中に、生命体の痕跡らしきものは無かった。

 だが、エラーによって観測できなかった惑星には生命が存在している可能性が高いと予想されている火星だって含まれていたのだ。

 未観測の星にこそ生物がおり、彼らの発する『何か』が観測を妨害しているのだと我々は考えた。

 地球でもライバーや変霊(へんりょう)の存在によってソナーなんかに異常が起こる事はよくあるのだから。


 最も生物のいる可能性の高い火星の表面をどうにかして観測できないか試行錯誤している中、ある者が違和感を訴えた。


「どうして月も観測できないのか?もし宇宙生物の発する電波が観測を妨害しているのなら、月にも何か居るのでは?」


 もし彼の意見が正しければ我々にとっての『星の隣人』と呼べる存在が、思っていたよりもとても近くに居るという事になる。

 我々は目を輝かせて月の調査を開始した。


 月に何か居る可能性を立証できれば、今まで月なんて近いだけの衛星に興味なんて持っていなかった資産家達は、目の色を変えて我々に出資してくれるだろう。


 そして、その予想は当たったのだ。

 画質を落とし、かつ距離を離す事によってある程度は月の観測を行える性質を利用して月の表面調査を行った結果、我々は『都市』のような影を月の地表に発見したのだ。

 正直な所、コレは我々の期待を大きく上回る発見だった。

 月にいる生命体は我々と同じような『知的生命体』であり、文明を持っている可能性が高いという事をこの『都市』は示していた。


 世界中が我々に期待し、その背中を押した。

 我々は意気揚々とロケットに乗り込み、人類初の月面着陸を行ったのだ。


 だが残念ながら今、我々は月で遭難し、やっと見つけた月の生物に殺されようとしている。


 ドト、ドト、ドトと。

 スキップしているような足音が聞こえる。


 間違いない、私に近づいてきている。


 あの巨大な狼だ。


 きっともうだめだ。


 すまない()木­­­――­­­



 ­­­――­­­――­­­――­­­――



 まるで夢を見ているような気分だった。

 今さっき狼が、多分だが死んだ。

 奴が私にその爪を振り下ろそうとした瞬間、奴の頭部が消し飛んだ。

 体は倒れた後で石油のような黒い液体になって、地面に溶けて消えた。

 私をあの狼から救った人間らしき存在が今、目の前に立っている。


 『C(コランバイン)sP(パレット) Sil() C(コランバイン)sJ(ジュエル) Pur()』、絹のように白い髪とアメジストのような目をした、背の高い女性が宇宙服も着ずに、紫のロングコートのような服を纏って立っている。


 ありえない、私と同じ言語を話している?『何者だ』と私に問い詰めてきている。


 先程、狼を消し飛ばす時に振っていた巨大な剣を向けて話しかけてきている。

 向けられたソレをよく見てみると、剣の材質は銀に似ているようで何か違う気がする。

 中で金色の線のようなものがうごめいている。


 (要約して)『堕天使の手先か?』と訳の分からない事を聞いてきた、私が違うと答えたら、彼女は私の目を宇宙服越しにじっと見つめてから剣をしまった。

 巨大な剣が数秒のうちに小さくなって、服の中にしまいこまれた。


 ここで私は違和感を覚えた。

 『剣でも人でも能力は1つずつしか持てない』はずだ。


 無酸素空間での生存、円形の破壊攻撃、未知の金属の操作。

 いずれか1つは、彼女の『種族的な能力』という事になる。

 上記のどの能力も、私の知る限りでは種族として持っている生物はいなかった。


 つまり、彼女こそが我々の探していた『星の隣人』である可能性が極めて高い。

 私は彼女を我々の探していた知的生命体『月人』であると考えてコミュニケーションをとろうと思う。



 以下、私が彼女との会話で得た月人と彼女自身についての情報だ。



 MEMO

・彼女の名は『レイズ・ミカエル』。


・彼女達は我々のソレと全く同じ仕組みの月語を話している。(過去に地球人から言語を学んだ?)


・彼女達は生まれた頃から自身の名前と使う言語を知っている。(遺伝子に言語機能が刻み込まれている?)


・生まれた頃から衣服は肉体と共に形成されている。


・生殖は行わない。→地下にある『湖』から不定期で発生。(工場?彼女らは何かによって作られている?母体がありそれから全てが生まれている?)


・彼女達は生まれたばかりの頃は、130cmほどの子供の姿をしていた。→種族のほとんどはその子供の姿でずっと生き続けている。


・彼女のような成人の姿(成長した姿)になれるのは常に7人以下であり、成長できるかどうかは生まれた時点で決まっているらしい。(見た目からは服についた模様で判別可能。)


・成人の姿に成れる者の服にはそれぞれ違う模様があり、また名前の末尾に『ミカエル』などの苗字がついている。(旧世界の遺物から見つかった書物に天使と呼ばれる『ミカエル』などの同名の存在を確認。『旧世界の崩壊』前から存在?崩壊の生き残り?)


・一般的な彼らに苗字は無い。


・『都市』と呼ばれる存在がある。(大量の縦長の建物、中央の館、ソレらを取り囲む外壁などの特徴から、我々の観測した都市らしき影の正体は恐らくこれである。)


・彼女は月に暮らす者達のリーダーらしい。→遠く離れた都市から気配を感じて私を探しに来た。(驚異的な感知能力もアリ。話し方から察するに、月人の大きな個体が複数の能力を持っているのは当たり前の模様。)


・月人のほとんどが銀髪に紫目。→堕天使は沼のように黒い目と髪。(C(コランバイン)sの法則が彼らにも適応されるならば種族単位での彼らの戦力は驚異的。)


・地球に人が居る事を彼らは知らなかったらしい。(お互いの初遭遇?言語一致の理由は?)


・彼女は地球の大陸が割れるとても前に生まれていた。→月人は全員不老らしい、地球人には寿命がある事を話すと驚いていた。


・大きな戦いの末に地球の大陸を割ってしまった事を謝ってきた。(驚異的な力を持っている。一応友好的である。巨大な狼の他に兎や巨人、先述した裏切り者の堕天使などの敵が彼らにはいる。)



 ­­­――­­­――­­­――­­­――



 ある程度会話をした後、私がどのように月へきて遭難したかの経緯を話すと、彼女は『探査機の所へ案内してくれ』と言ってきた。


 我々があの場所へ戻ると、変わらぬ様子で倒れている探査機が、粉々になった支柱と共に在った。

 支柱が壊れているせいで地球へ帰れない事を話すと、彼女は持っていた金属を変形させて新たな支柱を数秒で作り上げた。


・物質の名は『月鉱(げっこう)』、宝石のような見た目でありながら、金属の性質も併せ持っているようだ。月人の成人個体は、これをある程度物理法則を無視しながら自在に操れるらしい。(亜種として金線が入ったもの、紫色の『死月鉱』という上位物質もあるとのこと。)


 帰り際に彼女から『地球と月で情報交換をしあう』事を提案された。

 彼女の力があれば月のどこかに落とされた情報を受け取る事も、それを送り返す事も容易だろう。


 名案だと褒めた後に、この提案が受理された時にはすぐに月へ情報を積んだポッドがやってくるはずだと話しておいた。


 彼女に見送られながら、私は地球への帰還を開始した。


 この手記は当時書いた内容をそのまま編集せずに、ブライツ上層部へ『提案』と、探査機に付着した月鉱と共に提出する。

 探査隊の中で唯一月から生還した『明星 待雪』は、帰還後にこの手記と探査機の映像を政府に報告して月人の存在を明らかにした。


 数か月後A.S.Oから派生する形で、月人『レイズ・ミカエル』との情報交換を目的とする組織L.E.R.I(月地間親交研究所)が発足。


 『明星 松雪』はL.E.R.Iの研究員長に任命されたが、それから間もなくして彼は滞在していた飲食店にて発生した爆発事故に巻き込まれ命を落とした。


 現在(2060年)では甥の『明星 木槿』が彼の後を継いでいる。

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