☆戦闘・1☆
「え、戦争!?」
ギルドマスターはゆっくり首を縦に振った。
戦争をしているとは夢にも思わなかった。
「えぇ、いつ出兵命令が出ても良いように準備してください」
そして、その半刻後『緊急事態宣言』が発令。
国民の生活は一気に規制され始めた。
シェルターへの避難、娯楽施設の封鎖、公共施設の臨時休館、病院関係者の強制出勤。
街の活気はどこ吹く風で廃墟のように寂れた景色だ。
淋しげに虫がなき、一斉に鳥が飛び立っていく。
そして、一匹の鳥が落ちた。
遅れて響く銃声。
「行くぞー!」
スキルナイツが率先して敵兵を倒していく。
「能力 業火!」
紅い炎が敵兵を焼き尽くす。
「信託 神託之福水!!」
合掌し、しゃがんで祈るようなポーズをとるととても綺麗な水が出てきて火を消す。
「能力 地揺!」
地面に手を当てて大きく揺らす。
そしてバランスを崩した者にそのまま槍で突き刺す。
「信託 天使風」
風の斬撃が乱れ舞う。木を斬り倒し、味方の一人が巻き込まれる。
それを機に物理部隊が突撃する。
自分の身長はどのサイズのある大剣を両手で持っている人や、両手に小さな短刀を持っている人など様々である。
真紅に燃え上がっている大剣は手に持つ直剣に悍しく照り映える。
ダッと地面を蹴って眼前に迫る男性の顔。
慌てて直剣を前に突き出す。
手に来る衝撃、目の端で捉えた折れた刃。
次の一撃が放たれるのは経験則でわかっていた。
身を翻そうとする味方の兵士。
そんなのは意味のないものである。
落とされた鉄塊に潰されるように地面に堕ちる。
遅れて爆せた炎に包まれていく。
包まれた身体は骨すら残さず燃え尽きる。
攻撃したあとの隙をねらって首を落とす。
その様は誰が見ても人を殺めるのが慣れているのが分かる。
「みてて良いのかよ」
その言葉でハッと我に返る。
戰場であるこんなところでボーっとしてる場合ではないようだ。
「……なんで、バレたかな……?」
木の上から降りる。
右腰の留め具から二本の円刃を外す。
すり減った持ち手はすでにぬれていた。
円刃は武器として使う者は非常に少なく、奇抜な動きで敵を欺くのが得意である。
二刀流のこの武器に『信託 斬凍付着』をつける。
そのまま味方全員にもエンチャントを施す。
息を吐き、跳躍する。
そして突き刺すように落ちるが、簡単に避けられる。
「能力 配火」
大剣の炎の勢いが一気に増す。
蛇に睨まれた蛙のように身がすくむ。
円刃は刺剣のようだが斬撃も放てるのである。
詰まった土を振り払って落とす。
「ずいぶんと悪趣味な武器を持ってるようで」
大剣を地面につける。
「そっちは重そうな塊を握ってんじゃねぇかよ」
喉元を狙って疾走する。
ギィン、と甲高い音が響き渡る。
周りの戦闘は押され気味だ。
ここで勝って士気を上げなければならない。
大剣をずらして鋭い眼光で見つめられている。
こっちの一挙手一投足を全て把握されているかのような感覚だ。
こんな化け物をなぜこんな場所に配置したのだろうか。
こっちは烏合の衆だというのに。
ろくな訓練を受けていない、見せかけの戦力。
神への忠誠心など持っていないのはごく一部だけ。少なくとも周りには居ないはずだ。
円刃を回転させて毒を含ませる。
大剣は速度を捨てた一撃必殺の武器だ。
つまり、速度で翻弄すれば勝てる可能性はある。
一縷の希望を見出して、出来ないなんて思わずに、否、思わないようにして走り出すのだ。
駆け出した彼はもう目の前にいた。
上体を反らして突きを避ける。そのまま後ろに回転して距離を確保する。
彼にあるのは明確な殺意と、少しの自信と、諦め。
彼を殺めるのはもったいないまでに動きが洗練とされていた。
緩急のある攻撃は舞うようだ。
だが、殺す以外に選択肢はない。
「信託 斬凍付着」
刃が氷柱のように伸びて、今までの間合いでは串刺しだ。
攻撃にすれ違うように前に出て大剣で薙ぎ払う。
後ろに跳躍して回避したようだが、お腹からは血が噴き出していた。
「ぐぁ……」
低く呻いている。
円刃は手から離す気がないようだ。
そして、タッと木のある方へ走っていく。
「諦めれば良いものを……」
木を駆け上り、大剣を振り落とす。
さっきとは位置が違う。
横に慌てて避けてさらに距離を取る。
炎の爆発がギリギリ間に合わなかった。
「まだ、生きるのか」
もう自分の鎧に血が付いている。
彼の腹部はより開いてしまっているのに。
「生きたかねぇよ。クソが……」
「なぜ逃げる?」
彼は円刃の氷を再生させて、苦笑した。
「ホントだな」
まだ、正眼に円刃を構える。
「生きたかねぇが、死にたくもねぇようだ」
「そうか」
一つ呟くように言った言葉はおそらく、「戦るよ」だ。
それは、彼には戦う意思があるのは感じた。
「来い」
投擲された円刃は頬をかすめた。
そして尖った殺意が左後ろから来るのを感じた。
振り返るように大剣で武器を弾き飛ばす。
「ふははは、一撃も届かなかったか」
彼は一つ笑った。
「最後に聞いてくれないか」
「なんだ」
普段はそんなこと聞かないのになぜかその言葉が出てきた。
それに彼は満足したように微笑んで、
「今の俺とときまして、酒宴とかけます。その心はどちらも完敗」
そして、彼はふぅっと息を吐く。
3本目の円刃を取り出して、彼は言った。
「ありがとう」
そのまま、彼はその円刃を自らの腹部に突きした。
「クソ、しょうもねぇ」
俺は大剣で介錯する。
そして彼の遺品の二振りの円刃を手に持つ。
そのまま彼の懐の鞘を取る。
あの時の言葉は「やるよ」。
殺した彼に問うことはできない。
なら、彼の死と共に生きるしかないわけだ。
一生使い込んでやる、と決めて、彼の遺体を燃やし尽くした。
円刃
普通は切腹などで使われるが、毒などを仕込めるので武器として使うものもいる。
くり抜くために洗練された形に刃をつけて両刃にしてある。
突きを主体とした攻撃方法なのに、斬ることもできるため、トリッキーな攻撃を放てる。
一撃で体を貫通する鋭利さを持つ。
今となっては死体を吊り下げる留め具としての役割も担っている。
信託
ヴェラ国での能力の呼称。
ヴェラでは神の力の一端を授けられているということで神託と呼ぶ。
物理部隊
ステージ王国の武器を使った部隊。
補助スキルを持つものがなる。
色々な武器を持ち、団結力で敵を倒していく。




