☆戦前の芳香☆
目を覚ます。顎に触れる筋肉質な硬さは太もものようだ。
背中の傷口に優しく触れるように治療を施しているようだ。
起きたことに気がついたのか手が止まった。
私は起き上がる。
そして、竜の死体に近づく。
戦闘の現場は爪の跡と燃えたあと、そしてまだ紅い血が残っている。
死体を吸収しておく。
どっと疲れが襲いかかってくるが、まだ休むわけにはいかない。
刻限までの3時間で帰る必要がある。
「早く帰ろう!」
マリはそう言ってから私を背中に放り投げてそのまま進んでいく。
1時間くらいかかっただろうか。
ギルドの前まで来た。
するとすぐにギルドマスターが出てきて、ひとけのない場所まで私を連れて行く。
「中で出されると騒動が大きくなってしまうので、ここで出してください」
私は空間収納から竜の死体を出す。
「本物で間違いないですね」
ひと目みてそういった。
「なら、私は──」
「はい。合格で」
私は歓喜した。
「『山吹』のバッジです」
銀色のバッジを首から外して黄色に輝くバッジを下げる。
そしてそのバッジには何やら特別な力が宿っているらしい。
「イエローからは国の指揮下に入るんです。なので全てのギルド支部に転移できる機能がついてます」
らしい。
そして国の実情が、隠せなくなりつつあったのだった。
バァン。
机をたたいた音が響く。
「ヴェラの戦争準備は本格化しつつありますぞ!!!」
一人の大臣が声を荒らげた。
「そうか……」
国王はふっと息を吐く。
「勝たねばならぬな。あれを用意してくれ」
一人の側近に目配せを送って、1枚の紙を用意させた。
それはこの大陸の地図であった。
そして国境に指を走らせる。
「このあたりに『能力騎士団』を」
「はい」
そう返事をしたのは防衛大臣。
『能力騎士団』の全権限を一任されていて、この国唯一の武官である。
そして、戦争の準備は着々と進んでいく。
二日後。
「準備は整いました。ではよろしいのですね?」
「無論だ」
跪き、頭を下げる。そのまま待機させた国軍の前まで進んでいく。
「イルヤ様の御預言だ!! ゆくぞ!!」
ダンダン!!
槍で石畳を一斉に突く。
これがこの国の了解の仕方である。
揃った音を聴き口角が上がるのを抑えきれない。
そして、進軍を始めるのだった。
そしてすぐにステージ王国にて、緊急事態宣言が発令された。
国民は防空壕へと強制的に避難を余儀なくされる。
戦争の始まりだ。
「進軍は如何に?」
いつにもまして神妙な面持ちの重鎮たちは、地図を指さしていった。
「はい。ヴェラとの国境になっているポレモス山脈の山道を進軍しているそうです」
「追随することをお許しください。少数軍は回り込むように渓谷を使っています」
ヴェラ国の得意な戦闘方法だ。
大人数を囮に、少数精鋭を不意打ちに使うという戦法。
伝達が完璧でないといけないが、それは何故か正確な進軍をしてくる。
「なるほどな……。では、ノースのあたりに軍を固めておこうか」
「はい。オグローにも多少の軍を配備して置くことを進言いたします」
うむ、と言ってそして残りの細かな話をつけていくのであった。
能力騎士団
四大属性を扱うそれぞれの騎士団を炎の『聖炎』水の『聖水』地の『聖地』風の『聖風』である。
それぞれから一人づつ、四人ペアで活動する。
ちなみにスキルナイツとは別に『回復』と『隠密』がいる、らしい。
ギルドは個人的であり、戦争に駆り立てるのは難しいが、国保有の騎士団であれば国境にも使えるということだ。
入団試験は特になく、個人情報が明確であれば誰でも入れる。




