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プレリュード 「プロローグ」

ラブコメです。

 紙城綴かみしろつづるは昔から本が好きだった。その中でもとりわけ小説が好きだった。

 

 物心ついたころから手には、「ドン・キホーテ」を握っていたという。


 そして、その気持ちは小学校に上がったタイミングで好きというレベルをはるかに凌駕りょうがする、恐ろしくも狂気じみたものへと変貌へんぼうしていった。

 

 つづる——小学校時代。

 

 『つづるー!サッカーしようぜ!』

 

 ——ごめん、それ本で読んだことあるからいいや。

 

 『つづるくん、あのね……いっしょにお手玉とか……どうかな?』

 

 ——大丈夫。だって本で読んだことあるし。

 

 『紙城くん。何でみんなと遊んであげないの?お友達もみんな遊びたがってるよ?』

 

 ——だって、全部読んだことあるもん。知ってるのにやる必要ないじゃん。

 

 そんなつづるに、先生は優しく問いかける。

 

 『そういう問題じゃないと思うよ。お友達と遊ぶことに意味があるんじゃないかな?』

 

 幼少期のつづるにはわからなかった。


 なぜ本で読んだことがあるものをまた、覚える必要があるのか。本で読めば全て経験できるのに。


 そう思っていた。


 やがて、中学から小説家を志そうと思ったつづるは、幼いながらにして友達付き合いを捨てる、という幼少期の哀しい行動を……心底後悔した。今なら先生が言いたかったことも理解できる。

 

 そう。


 そもそも、小説は経験したことでないと書けない⋯⋯。いや、少し違うな。あたかも自分自身で書けていると錯覚はできる。


 しかし、それはあくまでも既存の小説の真似事に過ぎないのだ。


 本当の意味でもオリジナルな小説を書きたいのなら実際に経験を積まなければならない。その経験をもとに自分だけの小説を書くことができるといえる。


 想像はあくまでも模倣でしかないというわけだ。

 

 ——小説のためなら、何でもやる。


 またも狂気じみた思考におちいったつづるだが、今度は自分にさえ否定はさせない。

 

 ファンタジー小説を書くためならアロンソのように妄想にふけって世界だって救ってやろう。

 

 ミステリー小説を書くためなら、孤島でも山荘でも、出ると噂の奇妙な館にだって行ってやる。

 

 恋愛小説を書くためなら……。

 書くためなら……。

 ……。

 

 あぁ。

 

 ——そうだ。この俺でも唯一苦手とする小説がある。それが、恋愛小説なのだ……。

 

 この紙城。昔から恋愛とは一切縁がなかった。


 周りが彼氏だの彼女だの騒いでいる中で、俺は1人小説を乱読らんどくしていた。


 全てのジャンルにおいて逸脱いつだつした文章が書けるようにとクラスの端っこ、窓側の席で読書にいそしんでいたのだ。


 そんな、陰気いんき臭い雰囲気をかもし出すやつに誰が近寄ろうとするものか。

 

 それが、ろくに彼女もできないまま中学を卒業してしまった。

 

 いや、これからの俺は違う。


 将来有望な小説家になるんだ。このくらいのことでくじけていては叶う夢も叶わない。

 

 高校生活。数多あまたの作品の舞台となる貴重な三年間。


 この高校生活で俺は、小説家になるための経験を積みに積み、書けずにいた恋愛小説を克服こくふくしてやろう!

 

 手始めに……。

 

 ……女子生徒に告白するところから始めようか?

みなさんは告白したことありますか?

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