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冒険記録-世界を救う30年間-   作者: 鮭に合うのはやっぱ米
第2章 一人旅 : 見習い騎士編
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第34.5話 男の行方

アンドリューが転移してから経過した約一〜二年の間の話となっております。

どうぞ見ていってください。


 仲間を殺され、孤独となった男。

 男は復讐を誓う。

 そして、強くなると……





 その向かう先は───


「どうしたんだ?ロイン」


 そう言って大陸王は俺の近くを見渡すと、何かを察したかのように表情をグルリと変え、こちらへ向き直った。


「……あいつらはどうした?」


 俺は俯いて言った


「死んだよ。全員な……」


 俺はポツリとそう言った。

 そんな俺の顔はまるで───


「全てを諦めたような顔だな」


 大陸王は俺に近づき、続けてこう言った。


「言いたい事があるなら、全部吐き出せ。苦しいかもしれないが、それでも言わんよりはマシだ。言ってみろ。」


 瞬間、俺の目から涙が溢れ出した。

 俺は、まるで子供のようにして大陸王に抱きつくと、これまでの事を話した。


「……なるほどな」


「俺のせいだ……俺が弱いから……あいつらを守れなかった……」


 俺は全てを吐き出した事で、喪失感は薄れたのかもしれない。

 だけどその代わりに、今度は怒りがやってきてしまったようだ。


「お前のせいじゃ無い。そして、あいつらのせいでもない。誰のせいでもない。……それだけは理解しろ」


 大陸王は、続けてこう言った。


「それを理解した上で、お前はどうしたいんだ、ロイン」


 俺はそれを聞き、理解した。

 俺が次に取るべき行動というものを。


「俺を強くしてくれ……もう誰も失わないくらいに強くしてくれ……俺はもう……誰も失いたく無い」


 俺は頭を地面に擦り付けるように、真剣に、土下座をした。


「いいだろう。この、最弱の大陸王が、お前を強くしてやる」


 こうして、俺の修行の日々が始まった。


「そうだお前、さっきの話の時に、焼け跡がどうとか言ってただろ?」


 大陸王は、突如そんな話を持ちかけてきた。


「あぁ、いやあれは、二人を殺したやつの正体でも掴めるかと思って言ったんだけど、さすがにあれだけじゃなぁ……」


 俺は、無理かぁ……という風にして肩を落とす。


「いや、それなら予測はついてる」


 大陸王はそう告げた。

 俺は驚くようにして、でも嬉しそうに大陸王の肩を掴んだ。


「ほんとか!!」


「まだ断定はできないがな……いや、ほとんど確定といってもいいかも知れんな」


 大陸王は、何かを思い出したかのようにして、顎に指を置き、空を見上げた。

 そしてそのまま顔を戻してこう言った。


「あれはおそらく、『炎神』によるものだ」


「……炎神?」


 俺はそう問う。


「遥か昔から名を連ねてきた、伝説の人族だ。名の通り、火魔術の扱いに長けており、『神証』を持つ10の神の一人でもある。お前の話を聞く限り、それだけの跡を残せるような魔術士は、俺の知る限り何処にもいない」


 ……それで消去法で『炎神』が出てきたと。

 だけど、それじゃ断定はできない。

 もっと他に、確定的な何かがないと……


「証拠不十分だな……何か断定できるものってのが無いからしょうがないんだが……」


「……迷ってはいたが、お前がそこまで言うならいいぜ。断定できる証拠ってやつを教えてやる」


 大陸王は、ニヤニヤと笑みをつくり、そう言った。


「だが一つ、お前がこれを聞いてどう思うかは別だ」


「……何をだよ」


「アンドリューのことだ」


「……はぁ」


 アンドリューが何だってんだ。

 あいつは死んでも、一生俺の友達で、親友で、ダチなんだ。

 今更何を言われようが、俺の心が揺らぐとでも思って───


「───アンドリューは生きている」


「ッ!?」


 ……えっ!?えっ!?どういうことだ!?

 あいつが生きてるって!本当なのかよそれは!


「どういうことだよそれ!?生きてるって本当なのかよ!?」


 俺はまたもや、大陸王の肩を掴んでそう尋ねる。


「本当だ。無属性魔術士で、更に魔族因子をも持つ男が、炎何かで死ぬわけがないだろう」


「……でっ、でも!だとしたら何でアイツはいなくなったんだよ!生きてるってのなら、一体どこにいるんだよ!」


 正直、理由だとか位置情報なんてものはどうでもよかった。

 ただ一つ、『あいつが生きてる』という結論さえ決まっているのなら……それだけで俺はもう嬉しくて嬉しくて嬉しくて……


「それは分からん。ただ、これだけは保証してやる。あいつは生きてる!」


 俺は、泣いて泣いて泣きじゃくった。

 一つの事実。

 生きているという事実を知れただけで、俺は舞い上がりそうなくらい嬉しくて……

 

「感情を表現しきれねぇ……って顔してんな」


 大陸王は、笑顔でそう言った。


「じゃ、じゃあシェリアは!?」


「それはおそらく……」


 大陸王は、最後の一言を言わずに止めた。


 俺は察したように、俯いて泣いた。


「ぐあぁ〜〜……」


 大陸王は、しょうがねぇなぁ……とでも言わんばかりに、頭の後ろをポリポリとかいた。

 

「うぅ……うぅ……」


 そして俺に近づくと───


「───バコッ!!」


 俺の顎を、下から上に向かって殴り上げてきた。


「痛った……!何しやがる!」


 俺はいきなりのことに愕然とした。


「何ふぬけたこと言ってやがる、お前が言ったんだぞ、『俺を強くしてくれ』ってな。受けたなら俺は何でもやってやる。やらないのは俺が悪い。だがな、やれないのはお前が悪い!」


 そう言って大陸王は、俺に向かって再び拳を突き出してきた……

  





 ……ここから、三年にも渡る長い長い修行が、始まるのであった。








 


 



読了ありがとうございました。

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