第34.5話 男の行方
アンドリューが転移してから経過した約一〜二年の間の話となっております。
どうぞ見ていってください。
仲間を殺され、孤独となった男。
男は復讐を誓う。
そして、強くなると……
その向かう先は───
「どうしたんだ?ロイン」
そう言って大陸王は俺の近くを見渡すと、何かを察したかのように表情をグルリと変え、こちらへ向き直った。
「……あいつらはどうした?」
俺は俯いて言った
「死んだよ。全員な……」
俺はポツリとそう言った。
そんな俺の顔はまるで───
「全てを諦めたような顔だな」
大陸王は俺に近づき、続けてこう言った。
「言いたい事があるなら、全部吐き出せ。苦しいかもしれないが、それでも言わんよりはマシだ。言ってみろ。」
瞬間、俺の目から涙が溢れ出した。
俺は、まるで子供のようにして大陸王に抱きつくと、これまでの事を話した。
「……なるほどな」
「俺のせいだ……俺が弱いから……あいつらを守れなかった……」
俺は全てを吐き出した事で、喪失感は薄れたのかもしれない。
だけどその代わりに、今度は怒りがやってきてしまったようだ。
「お前のせいじゃ無い。そして、あいつらのせいでもない。誰のせいでもない。……それだけは理解しろ」
大陸王は、続けてこう言った。
「それを理解した上で、お前はどうしたいんだ、ロイン」
俺はそれを聞き、理解した。
俺が次に取るべき行動というものを。
「俺を強くしてくれ……もう誰も失わないくらいに強くしてくれ……俺はもう……誰も失いたく無い」
俺は頭を地面に擦り付けるように、真剣に、土下座をした。
「いいだろう。この、最弱の大陸王が、お前を強くしてやる」
こうして、俺の修行の日々が始まった。
「そうだお前、さっきの話の時に、焼け跡がどうとか言ってただろ?」
大陸王は、突如そんな話を持ちかけてきた。
「あぁ、いやあれは、二人を殺したやつの正体でも掴めるかと思って言ったんだけど、さすがにあれだけじゃなぁ……」
俺は、無理かぁ……という風にして肩を落とす。
「いや、それなら予測はついてる」
大陸王はそう告げた。
俺は驚くようにして、でも嬉しそうに大陸王の肩を掴んだ。
「ほんとか!!」
「まだ断定はできないがな……いや、ほとんど確定といってもいいかも知れんな」
大陸王は、何かを思い出したかのようにして、顎に指を置き、空を見上げた。
そしてそのまま顔を戻してこう言った。
「あれはおそらく、『炎神』によるものだ」
「……炎神?」
俺はそう問う。
「遥か昔から名を連ねてきた、伝説の人族だ。名の通り、火魔術の扱いに長けており、『神証』を持つ10の神の一人でもある。お前の話を聞く限り、それだけの跡を残せるような魔術士は、俺の知る限り何処にもいない」
……それで消去法で『炎神』が出てきたと。
だけど、それじゃ断定はできない。
もっと他に、確定的な何かがないと……
「証拠不十分だな……何か断定できるものってのが無いからしょうがないんだが……」
「……迷ってはいたが、お前がそこまで言うならいいぜ。断定できる証拠ってやつを教えてやる」
大陸王は、ニヤニヤと笑みをつくり、そう言った。
「だが一つ、お前がこれを聞いてどう思うかは別だ」
「……何をだよ」
「アンドリューのことだ」
「……はぁ」
アンドリューが何だってんだ。
あいつは死んでも、一生俺の友達で、親友で、ダチなんだ。
今更何を言われようが、俺の心が揺らぐとでも思って───
「───アンドリューは生きている」
「ッ!?」
……えっ!?えっ!?どういうことだ!?
あいつが生きてるって!本当なのかよそれは!
「どういうことだよそれ!?生きてるって本当なのかよ!?」
俺はまたもや、大陸王の肩を掴んでそう尋ねる。
「本当だ。無属性魔術士で、更に魔族因子をも持つ男が、炎何かで死ぬわけがないだろう」
「……でっ、でも!だとしたら何でアイツはいなくなったんだよ!生きてるってのなら、一体どこにいるんだよ!」
正直、理由だとか位置情報なんてものはどうでもよかった。
ただ一つ、『あいつが生きてる』という結論さえ決まっているのなら……それだけで俺はもう嬉しくて嬉しくて嬉しくて……
「それは分からん。ただ、これだけは保証してやる。あいつは生きてる!」
俺は、泣いて泣いて泣きじゃくった。
一つの事実。
生きているという事実を知れただけで、俺は舞い上がりそうなくらい嬉しくて……
「感情を表現しきれねぇ……って顔してんな」
大陸王は、笑顔でそう言った。
「じゃ、じゃあシェリアは!?」
「それはおそらく……」
大陸王は、最後の一言を言わずに止めた。
俺は察したように、俯いて泣いた。
「ぐあぁ〜〜……」
大陸王は、しょうがねぇなぁ……とでも言わんばかりに、頭の後ろをポリポリとかいた。
「うぅ……うぅ……」
そして俺に近づくと───
「───バコッ!!」
俺の顎を、下から上に向かって殴り上げてきた。
「痛った……!何しやがる!」
俺はいきなりのことに愕然とした。
「何ふぬけたこと言ってやがる、お前が言ったんだぞ、『俺を強くしてくれ』ってな。受けたなら俺は何でもやってやる。やらないのは俺が悪い。だがな、やれないのはお前が悪い!」
そう言って大陸王は、俺に向かって再び拳を突き出してきた……
……ここから、三年にも渡る長い長い修行が、始まるのであった。
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