第34話 仲間
鬼族の侵略、それは一日にして終結した。
幸か不幸か、被害が出たのは学校だけだったようだ。
死亡者の数、およそ50。
負傷者の数、3。
生存者の数、およそ500。
優秀な先生方のおかげで、生徒のほとんどは学校外へ避難することができた。
避難した生徒達の証言によると、鬼族の侵略途中で、『青い何か』が空を飛んでいたのを見かけたと何人も言っていたそうだ。
そして、それが元凶なのではないか、とも言われている。
だがしかし、死亡者が50人も出たことは、国にとっての致命的損害であり、騎士団にとっても不名誉なことであった。
当然、住民からの騎士団への非難の声も多数上がっていた。
騎士団長は現在、長期に渡る遠出をしており、参加ができなかったそうだ。
そして、この戦いにおいて優秀な功績を収めた者がいた。
数々の生徒を救助し、身を捨ててまでして助けだした男。
その名は───
「───ランガー・ベイル」
ヒビの入った、崩れかけた、そんな校舎の中に響きわたった名前。
「……そして、この悲惨な事件において、敵の首領である鬼王と戦い、事件に終結をもたらしてくれた救世主───」
紙に書かれたことを読み上げる人物。
それは、この学校の校長であるゼナスだった。
そして、今から読み上げられるであろう者達が横並びにして立っていた。
そしてそれを、他の生徒達は見守っていた。
「───アンドリュー。そして、カーナ・シーベルト」
そう、これは受賞式であった。
まぁ、こんなことをして何になるのかは分からないが。
あいつを倒したのは、俺でもカーナでもない。
あの騎士団長とかいう奴だ。
「そして今回の功績を讃え、ランガー・ベイル君を、四天に加えたいと思う」
周りは歓喜の声で溢れかえっていた。
「それに加えて、四天は五天へと変えようと……」
「それなら大丈夫です」
俺はそう言った。
この空気の中、そんなことを言っていいのかとは思ったが、ここしか無いなとも思った。
「四天は一人分飽きます。だって俺、明日には学校辞めるんで」
途端、周りはざわついていた。
何せ、自分で言うのも難だが、俺はこの学校じゃあ結構有名人であった。
「ちょっと待って、アンドリュー君!それはいったいどういう……!?」
「後のことはレイス先生から聞いてください。それじゃあ俺はこれで……」
俺はそう言うと、ステージから降り、逃げるようにして早々と校舎から出た。
途中で、カーナ達の声が聞こえた気がしたが、そんなのはお構いなしだった。
「……さてと、準備しなくちゃな」
俺は今、宿屋にいる。
そこで荷物をまとめていた。
「……………」
気づくと、荷物を入れる手を止めていた。
……今思えば、俺は結構あいつらに浸透してたのかもしれない。
シェリア、ロイン……あいつら以上にとは言わずとも、それに匹敵するほどのものではあった。
どこか、心の奥で、今ならまだ戻れるかも、といった思いがあった。
後悔は……していない、わけではない。
もっと一緒にいたかった。
もっと一緒に遊びたかった。
もっと一緒に笑っていたかった。
……だけど、もうそれはできない。
もしかしたら、シェリアとロインに会えれば、俺のこの心の隙間を埋められるのかもしれない。
だけども……できることなら……
「全員一緒がよかったな……」
俺はそう、ぽつりと呟いた。
……疲れたや。
……もう寝よう。
そうして俺は、ベッドに潜り込み、寝床に就いた。
「……いないか」
朝になり、俺は起きた。
部屋を見渡すが、いつもいるカーナの姿は見当たらなかった。
「行くとするか……」
俺は、エドワードと約束していた王国の入り口に向かった。
入り口には、移動用の馬車が待ち構えていた。
そしてその前に、エドワードは立っていた。
「遅いぞ、遅刻だ……と、言っている」
エドワードは俺にそう言った。
こいつの言葉は、曖昧でよく分からなかった。
語尾に……と、言っているなんてつける理由が分からない。
「誰が言ってんだよ。まるで伝言でも言わされてるみたいだな」
「まぁ、実際の所そうだからな」
エドワードがそう言うと、俺はキョトンとした。
何を言っているのかが、理解できなかったからだ。
だが、まさか!?とも思った。
「ほら、お待ちかねの仲間だぞ」
エドワードはそう言って、馬車の入り口を開けた。
「よっ、アンドュー!」
中から、最近よく言われるあだ名が聞こえてきた。
しかし、言った本人は、いつものあいつではなかった。
それは、グリムだった。
予想外の事に、俺は驚きを隠せなかった。
「ア、アンデュー!……なんちゃって!」
次に姿を現したのは、グリムの後ろに隠れていたルーナだった。
ルーナは、少しどきまぎしながら俺のあだ名を言った。
……可愛い。
「な、何でお前らが……!?」
俺は驚きを隠せない様子でそう言った。
「勿論、アンドリューに着いていくからだよ!」
グリムは元気よくそう答えた。
俺はまだ戸惑いつつも、振り返ってエドワードの方へと向いた。
エドワードはそれに気づくと───
「……まぁ、そういうことだ。素直に受け取ってやれ」
───と、言った。
「はぁ……分かったよ」
俺は、しょうがないなと言って、馬車に乗り込んだ。
俺は馬車に乗り込むのと同時に、あることに気がついた。
「……それにしてもカーナのやつはどうしたんだ?」
「確かにどうしたんだろう」
「途中まではついてきてたんだけど……」
グリムとルーナもよく分からないようで、俺の問いに対して疑問を浮かべる。
エドワードはその問いに、こう答えた。
「あぁ、彼女なら別の馬車で移動してくるそうだよ。何せ、この一台には入りきらないからね」
それに対して俺は、なるほど……と答えた。
「それじゃあ出発するが、準備はいいな?」
エドワードの問いに対し───
「おう!」
「はい!」
「うん!」
───全員が別々の言葉で返事をした。
ここから俺の……いや、俺達の新たなる冒険の旅が、また始まるのであった。
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