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マッチポンプで世界が変わる!?  作者: オーメル


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SUN馬鹿集合

「コイツ、火の中で……ッ」


 炎の放射は続いている。

 今もなお人型は全身を焼かれ、そのまま全てが灰となる筈であった。仮に失敗するにせよ、その身体は深刻な火傷を負って満足に動けなくなる。

 しかし、星のバックアップとは彩斗達の想像を超えていた。

 火の海に溺れながら回復していく身体。いや、これは回復などと呼べる次元には居ない。

 進化している。生まれ変わっている。新生し、新たな生物として産声を上げようと構築を続けている。

 異常な光景だ。これを人類に見せれば己の目を疑っただろう。

 左肩から肉が盛り上がり、巨大な楕円にまで成長した肉塊は腕の形へと自身で整える。

 顔面にも波打つような変化が訪れ、それはやがて頭髪の無い人の顔となった。

 

 黄金の瞳を光らせ、耳を痙攣させ、細身から脱却した巨体は彩斗を見据える。

 そこには明確な敵意があった。決して飾りなどではない、本物の感情を表に引き出すことが出来る瞳がある。

 で、あるならば。当然ながら視力も有り、人型は彩斗を認識して火の海を上へと泳ぎ出した。

 火という障害物を突き抜けて外に飛び出し、彩斗の片腕を掴んで海中へと叩き付ける。


「っぐ!」


 肺に溜まった空気が全て抜ける。

 全身に巡る衝撃で視界が一瞬だけブラックアウトし、されど彼自身の精神力だけで取り戻してみせた。

 その瞬間に見えたのは、敵の拳。

 彩斗が意識を喪失した刹那の時間の中で移動し、止めを刺すべく拳を放っていた。

 直撃の間際にバゼルが土の壁を間に挟む。それで僅か程度でも時間稼ぎが出来ればと思うも――敵は意に介さずに土壁をあっさり破壊して彩斗の顔面を殴り付けた。

 直撃も直撃。マスクという最終防御膜があるとはいえ、それでも死なずに水底に落ちれたのは奇跡に等しい。

 怪獣への直撃すら防ぐマスクだったからこそ耐えれたのだ。ただし、マスクが映す情報群は全て消えてしまったが。


 これで他の者と通信することは出来なくなった。

 バゼルの通信機を使えばまだ大丈夫であるが、他にもマスクの破損によって機能が停止している部分もあることだろう。

 完全停止まで約二発。そう予想して、海底の土を蹴って海上へと浮上する。

 その彩斗の姿を、相手は最初から予測していた。


「後ろだ!」


「――ッ!! こんちくしょう!」


 口の中を切ったのか、鉄の味が口内に広がっている。

 咄嗟に振り返り、突撃している姿を彼は捉えた。炎を両腕に纏い、密度を増して火球を放出。一瞬で出来た火球の攻撃を相手は片腕で弾くも、その先に彩斗の姿は無い。

 一体何処だ。そう首を左右に振る背後に、彩斗は既に移動していた。

 飛ばされる方向を予測した上で火球を隠れ蓑とし、背後に回った段階で蹴りを放つ。

 鋭く強烈な蹴りは人型に突き刺さり、背骨を折りながら共に落下していく。

 このまま一緒に落ちては体勢が崩れる。その判断で空いた足で飛び跳ねようとするも、人型は関節を折り曲げながら足を掴んだ。

 首が百八十度に回転し、人体では有り得ない方法で敵は彩斗を視界に収める。そして口を開け、内部で出来上がった舌が急速に伸びた。


 足を掴む腕は強い。

 伸びる舌の速度も決して舐められるものではなく、彩斗は舌を打ちながら足を畳んで首を狙った攻撃を避ける。

 そのまま相手の背中に手を当て、勢い任せに火炎を放出。急速に周辺酸素を吸収しつつ、風の勢いも使ってほぼ至近距離で焼いた。

 マグマにも匹敵する熱に人型は痛みに呻くも、それでも掴む腕から力は抜けない。

 意地でもこのまま落ちてやる。歯を食い縛って耐える仕草をする人型に、彩斗の背に冷たいものが流れた。


「バゼルッ!」


「解っている」


 彩斗が叫ぶ。

 それと同時に、遠くから様子を見ていたバゼルが土を操作。砕かれた土達は砂のような細かさで人型に纏わり付き、首を絞める輪となった。

 そのままどんどんと圧縮させるが、元々人型に呼吸の概念は無い。どれだけ絞めたところで煩わしさを感じる程度。

 それでもバゼルがここに輪を作ったのは、圧縮を進めて首の面積を狭める為。


「……ナイス!」


 口角を釣り上げつつ、彩斗は片手に炎の手刀を作る。

 炎の操作は既に慣れた。片腕で大火力を維持しつつも、もう片方の手にマグマが如き熱を纏わせて首を溶断した。

 飛んで行く首は依然として生きている。そもそも核がそちらにあるので、頭部を完全に破壊しない限りは肉体を壊しても意味が無い。

 それでも、核と肉体の繋がりが断たれた。人型の身体から力が抜け、彩斗は敵の拘束から脱することに成功する。

 何処とも繋がりが無い肉体が直ぐに消えることはないが、放置していれば自然と腐敗して消えていく。

 星は人の殲滅は望んでいるものの、自身に過剰なまでのダメージを刻みたいとは考えていない。よって、腐敗する肉体を海の生物が捕食したとしても何の問題もない。

 強いて言えば、肉体が硬過ぎて殆どの生物の歯が通らないことだろうか。

 

「再生まで時間は掛かるってのが設計通りだが……」


「どうやらその設計は無視されているようだな。 見ろ」


 彩斗が着地した先に移動したバゼルが、指を差す。

 その先に居るのは首から下が水で出来た人型。まだ殆どが水と解る状態だが、足元は海水と融合している。

 つまり、水を材料にボディの復活を行っているのだ。その修復も速く、最早何処が遅いのかを比べたい程。

 呑気に休んでは完全復活される。潰すのであれば完全回復される前に出るしかない。

 しかし、彩斗は自身の息が荒くなっていることをここで気付いた。

 戦闘に集中しているあまり、自分の体力量を把握していなかったのだ。嘗てのままよりも更に体力は伸びた筈だが、極限の緊張や焦りが彩斗の体力を容赦無く奪い続けていた。


「今は一時休め。 ……ここからは俺だ」


『――悪いけど、それは違うかな』


 彩斗を一度休ませる必要がある。

 そうなれば、必然的に前に出るのはバゼルだ。任せろと凶悪な笑みを浮かべ、その自信は突然の通信によって阻害された。

 途端、人型の形をしていた水が氷結する。首も丸ごと凍らせ、人型は何が起きたのかと目を見開いて驚愕していた。

 遥か上空から透明な氷の槍が人型に落ちる。

 鋭さを追求した天からの一撃。衝突と同時に全ての氷が砕けるが、それでも人型の頭部は幾分か拉げるだけであった。


「想定よりも硬いのはどうなんだい……」


「あいつ進化しやがったんだよ。 もう最悪だ」


「なに、難度が多少上がった程度だろう。 ……それに、此処に到着したのであれば無事に品は届いたという訳だ」


 バゼルと彩斗の頭上。

 声の持ち主である澪は、頭痛を堪えるように頭に指を当てている。

 ともすれば溜息も吐きそうで、まぁそうだろうなと彩斗も似た心境だ。それでも、こうして彼女が到着した時点で勝利の確率は間違いなく高まった。

 彩斗の目が彼女の着ている物に向く。

 白のメタリックな印象を与えるパーカー。彩斗やバゼルが着ているパーカーよりも戦闘を意識したそれは、他者にスタイリッシュな印象を与える。

 Advanced suit。

 彼女が作った物の中でも至高に分類される装備品は、それ故に現状は二着しか誕生していない。


「直ぐに着替えてくれ。 もうあいつ動き出しそうだし」


 二枚の黒カードが二人に投げられる。

 二人は片手で一枚を掴み、復活の進む人型に視線を移す。海水による構築に失敗したものの、今度は氷を素材として用いて構築を進めた。

 澪が追加で氷による停滞を始めるが、それは敵にとって好都合。氷を素材に定めたからこそ、その氷を呑み込んで再生を加速させる。

 舌打ちが澪から漏れた。

 これでは彼女の能力は決定打にはなりえない。二人は即座にカード側面のボタンを押し、スーツを呼び出した。

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