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マッチポンプで世界が変わる!?  作者: オーメル


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Fake Sun&True Sun

『先程澪様とバゼルさんが球体の撃破に成功しました。 これで地上に残っている敵生体は粘体のみです』


「で、後は宇宙って訳か……」


 遥かな空を飛び、ミンが送る情報に従って彩斗は粘体が居る場所を目指す。

 既に粘体はかなりの距離を稼ぎ、道中の無人島をも呑み込んで巨大化を果たしている。

 計画上のサイズは精々山一つ分だったものが、今では小国の土地を全て溶かすことが出来る程までに成長していた。

 四体の敵生体を生み出してしまったのは失敗だ。今ならば彩斗は強く思う。

 被害は彼本人の予想を大きく上回り、死者も無数に出てしまった。人形も量産機達の避難に集中させてしまった所為で大部分が消失している。

 今では彼等は海の底で自決プログラムを起動していることだろう。回収されることを恐れて自動的に発生するよう仕込まれたそれは、即ち人形にとっての死を意味する。


「ちなみにだが、粘体の周囲にもう人は居ないのか?」


『人形を総動員させて量産機に乗っている者達は全員避難させました。 ですが、そのままでは粘体が加速した場合対処出来ないので最低限の人形が配置されています。 ……それと、殿として蓮司君が残っているようです』


「何? 誰も止めなかったのか」


『申し訳ございません。 止めようとはしたのですが、本人が強引に居残りを決めてしまいまして……』


 ミンの申し訳無い声が耳に入る。

 彼女としては一度しかない命を守る為に退かせたかったのであろうが、蓮司は一度決意した事に関しては貫こうとする頑固さがある。

 この誰が死ぬかもしれない状況において、量産型の機体はあまりにも場違いだ。

 元からそうであると向こうは思っているが、事態は彩斗達の予定よりも危険度が高まっている。

 量産機程度で強化の入ったアーキタイプを撃破するのは不可能だ。

 故に、澪の技術を盛り込んだFMCが殿をするのが一番適当ではある。彼ならば生き残る確率は他よりも高い。


「まぁ、仕様が無い。 此方も急ぐ」


『観測時に変化を発見次第、即座に報告致します。 宇宙側にも目を光らせますので、粘体に意識を向けてくだされれば』


「解った。 じゃあ一度通信を切る」


 マスクの通信が切断されたと同時、炎の出力を上げた。

 パーカーの性能のみで加速する身体は想像以上に頑強だ。少し前までは感じていた圧力が今ではまったく苦しくない。

 仮にこの状態で奥の手を使ったとして、彩斗は自身への負担がかなり軽くなっていると漠然と確信した。

 空から直接向かうことで、一直線に粘体を発見することが出来る。

 他に邪魔者は居ないのだ。あの星が何かをしていれば有り得るが、流石に適当な動物を邪魔者に仕立て上げる余裕は無いようだ。

 完全把握が済めば怪獣達への干渉も止む筈。そこまでは管轄外だとされてしまえば、残念ながら自力で解決せねばならない。


 遥か遠く、いよいよ粘体の居る場所の空域に近付いた。

 遠くには緑色の濁った物体がゆっくりと動いている。その周囲を無数の杭や壁によって妨害する蓮司の姿も見え、彼の身体には未だ明確なダメージは刻まれていない。

 傍には彼の手伝いをする人形達の姿もある。指示出しをしているのは主にオムニックであり、その手には巨大なハンマーが握られていた。

 

「話をするにせよ、一度足止めは必須。 ……やってみるか!」


 パーカーの性能を限界まで引き出し、それと同時に自身の内にあるモノも引っ張り出す。

 何も無い場所から炎が出て来る様は不可思議この上ないが、それが逆に彩斗に自覚を促す。自分はもう、人間という枠組みからは外れているのだと。

 今ならば疑似的にパーカーの限界を超越することも可能だ。普段は短い時間でしか使えない限界突破の炎を、今この瞬間に発動する。

 発現、収束、形成。青くなった炎を矢の形で整え、頭上で狙いを定めた。

 とはいえ、粘体の的は大きい。速度も遅いとなれば先ず外すことはないだろう。


『総員に告ぐ。 三秒以内にその場から離れろ』


 無差別に通信を飛ばす。

 彼の声が届いた人形達はいの一番に離脱を始め、一瞬遅れて蓮司も傍を離れる。

 三秒を口で数え、殺意を込めて粘体へと矢を投げた。真っ直ぐに進む矢は巨大で、されど初速から勢いがある。

 ゆっくりとした姿などそこには無く、一直線の矢は狙い違わずに粘体の身体に突き刺さった。

 ――瞬間、矢は崩れて炎が粘体に広がる。

 油など無いにも関わらず、炎の海は広がり続けて対象を蒸発させていく。


『レッドさん!』


 遠くから蓮司の声が聞こえ、そちらに視線を移す。

 一目散の傍まで来た彼は、荒くなった呼吸を一度整える。その間に他の人形達も続々と集結していき、彩斗を中心に空中で円を描いた。

  

「蓮司。 お前には退避命令が出ていた筈だが」


『命令違反についてはすみません。 でも、ここで皆に任せるのは違うと思うんです』


「その結果として死ぬとしてもか」


『死ぬつもりはありません。 切り札も確り残しています』


 右腕のFMCを軽く撫でつつ、力強い声で彼は答える。

 此処は本当の戦場。死ぬ可能性が十分にある場所だ。出来ることなら、彼にはそんな戦場に立たせたくはない。

 だが、本人の決意は固いまま。実際に殿として活動していた以上、もう逃げろと言うことも出来はしない。

 溜息を吐く。そこに諦めの色が混じっているのを蓮司は感じ取り、強かな笑みを瑠璃の兜の内側で浮かべる。

 

「オムニック。 我々の負傷者は何人だ」


『死者十名。 重軽傷者二十五名。 無事な者は十五名になります』


 オムニックの報告は正確だ。彩斗からの直接の命令であるのだから、間違えるような愚など自身が絶対に許さない。

 死者十名。つまり自決プログラムを作動させ、その身を空気に変えた者がそれだけ居ることになる。

 更に怪我人も多数存在し、彼等はオムニックの指示で今頃はアラヤシキに退避していることだろう。

 彩斗と蓮司を含め、現在の戦力は十七名。

 その人数だけで強化されたアーキタイプを倒さねばならないが――それは彩斗の力がこれまでよりも弱かった場合である。


「そうか……よし、皆聞け。 一部の者には既に伝えたが、どうやら相手は星の力を更に与えられたようだ。 意識だけで俺に干渉もしてきている」


『ッ、大丈夫なんですか?』


「ああ。 だが強化されている以上、これまでよりも厄介になったのは明白。 三体は撃破されたものの、フローとバゼルの消耗は激しい。 此処に参戦するのは不可能だと思っておけ」


 フローとバゼルが参加不可能。

 それが示すのは、やはり激戦の二文字。蓮司はただ敵の動きを抑えることだけに尽力していたが、それだけでも敵の触手の回避に意識の殆どを引っ張られていた。

 倒すだなんてとても不可能だ。少なくともFMCの出力限界までモザンの力を使ったとしても攻勢に転ずるのは無理だったろう。

 だが、その粘体は今炎の海の中で藻掻き苦しんでいる。海水を吸い込んで消火に充てているものの、火の勢いが弱まることはなかった。

 急速に進む蒸発。海水を取り込むよりも先に、このままであれば蒸発によって粘体自体が消えるだろう。

 

 だが、そこで終わってくれぬのが怪物だ。

 足りない部分は強引に消火する。粘体自体に被害が及ぶものの、炎を内部に溜め込んだ粘液で消火して最小限に抑え込む。

 自身の完全消滅と比べれば少々のダメージ程度痛手ではない。このまま海水を吸収して元に戻せば、彩斗の炎は無意味に成り下がるだろう。

 ダメージはあった。だが、今の彼だけでは足りない。もっと多くの火を導入しなければ脅威の粘体は排除出来ない。


「ッチ、やはりこれでは足りないか。 追加で火を足せば――」


『なら、俺も手伝います』


 粘体が動き出そうとしている。火が消え、人が住む場所へと侵攻を仕掛けるのだ。

 それを許すことはない。足りないならばもっとと考え、新たな矢を作ろうとした彼に蓮司が協力を口にする。

 言わんとする意味は彩斗には解っていた。元より、相手の属性が水である以上は何時か切ろうとしていた筈だ。

 そして、宇宙の敵を鑑みた場合において温存は必須。

 なるべく少ない炎で敵を倒せるのであれば、彩斗の中の選択肢は一つしかない。


「この戦闘が終わり次第、アラヤシキに戻れ。 ……二度目の命令違反は許さん」


『了解! じゃあいきます!!』


 蓮司は意識を切り替える。FMC内にある全ての警告を承知した上で、彼は皆が見ている前で叫ぶ。


『制限解除、起動!』


 ――Over drive. THE・SUNRISE.

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