表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マッチポンプで世界が変わる!?  作者: オーメル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

236/304

配信説明会①

「――お待ちしていておりました」


 格納庫。四人が姿を現したことで、室内の人間全てに緊張が走る。

 それは渡辺・啓介も、全員集合した子供組も一緒だ。社員に守られる形で先頭をレッドが進み、後方左右にフローとバゼルが歩く。

 最後尾にはミンが静々と進み、形としては菱形に近い。

 確かな存在感を周囲に放ちながら進む彼等を意識せずにはいられず、見れば誰しもが心に圧を生じる。

 別段敵対している訳でも、ましてや意識して見られている訳でもない。無意識に垂れ流される静かな圧の集合体が、並の人間の意思を砕こうとしていた。

 

「待たせたな。 少々入り口で問題が生じた」


「そちらは此方にお任せください。 適切な処置を行いますので、敢えて手を出さずとも解決致します」


「そうであってほしいものだ。 ……無駄な手間など此方は掛けたくないのでね」


 開口一番。

 レッドからの比較的柔らかな言葉に真摯に対応すれば、横からフローが辛辣な言葉を投げ掛ける。だが、この場合正しいのはフローだ。

 甘い対応をすれば付け入るのは相手側。ここまでなら許されると増長し、更なる追求を始めるのは想像に難くない。

 潰せる段階で潰す。それが妥当であり、厳しくすればする程に人は次の手を考える。その考える時間こそが、ヴェルサスとフォートレスが安穏としていられる瞬間だ。

 こっそりとフローは渡辺社長だけに威圧を少し強く送り、彼はその圧に二度は無いということを理解させられた。

 

 今回捕縛された記者達は喚くであろうが、対応は厳しくせねばならない。

 さて、軽く言葉を交わした後にレッドは周囲を見渡す。格納庫には無いカメラや照明器具、特設のステージが用意され、機体にはパイロットは入っていない。

 修理の準備があるし、そもそも動かすだけの理由が無い。パイロットも今は自分の部屋で休んでいる最中だ。

 

「配信時間は三十分を想定しています。 事前に奈々さん達に告知を任せましたので、配信場所には既に万では済まない観客が姿を見せています」


「流れは?」


「先ずは現状の説明。 その後に機体や基地の紹介。 次にヴェルサスの誰かによるアラヤシキの紹介をお願いしたいのですが……」


「それはミンに任せよう」


「解りました」


 短い時間の中で迅速に配役を決め、そしてステージに渡辺社長とヴェルサスが並ぶ。

 これが警報であれば奈々が中央に立つが、今回は直接的に怪獣とは関係が無い。

 子供組は見学兼観客の反応を見ることに努め、流れが怪しくなればクルスと蓮司が手に持つスケッチブックに文字を書いて見せる。

 配信は全て予定通りに進むとは限らない。待機の段階で流れるコメントは荒れに荒れ、大海原の嵐に匹敵する様相だ。

 ただの配信者が同じ状況になれば、大炎上と表現しても良い。botすら巻き込んだ荒波を蓮司達は静かに見つめ、特に問題無しと手で丸を作る。


「それでは十秒後に始めます」


 社員の一人が声を発し、ヴェルサス以外の全員が唾を飲む。

 五秒前までは声で伝え、それ以降は指を折って伝えていく。最後に全ての指が折れ、配信開始ボタンが押された。

 正面のカメラを通し、配信画面には渡辺社長達の姿が映る。

 それだけでコメント欄は湧きに湧き、勢いを加速させてまともに読ませない。蓮司達は時折コメント欄を巻き戻しながら確認するが、それだけではとても間に合わない。

 

「親愛なる皆様。 突然の配信にも関わらず見に来てくださり、社の代表として感謝致します。 私はこのフォートレス・ONEの社長、渡辺・啓介と申します」


 そして――


「ヴェルサス代表・レッドだ。 今回の話の中には彼等では説明出来ない部分がある。 よって、此方の者が直接話をさせてもらう」


 レッドが緩やかに視線を横に動かし、ミンを見る。

 カメラは静かに彼女を映して、その美貌を衆目に晒す。美少女の登場は常に人々を魅了するものだが、彼女は若いながらの美しさを前面に押し出した。

 民衆向けの優し気な微笑を送れば、コメント欄に彼女を褒め称える言葉が溢れる。 

 中には下心塗れの言葉も存在し、それを見た鳴滝は僅かに不快を露にした。ネットの海であれば嫌でも見るような言葉だが、それがヴェルサスの者に向けられたとなれば気分の良いものではない。

 コメント欄の様子はヴェルサスの人員も把握済みだ。ミンがネットに接続し、そのままレッド以外の面々の網膜にコメントを表示している。

 レッドだけはマスクに表示し、素直な住人の反応に内心苦笑していた。


「皆様初めまして。 私はヴェルサスの空中拠点・アラヤシキの制御兼艦長を務めているミンと言います。 今回は技術的な説明を省いた紹介となりますので、詳細な情報開示は行いません。 機密故の黙秘と思っていただいて結構です」


 幾分か強気な発言だ。

 だがヴェルサスにはそれが許される。少しでもヴェルサスの技術に触れた者であれば、それが世に出た場合の世界の行く末が容易く想像出来るものだ。

 不満を示すコメントが大量に流れるが、それでも致命的と呼ばれる程には荒れていない。

 残りのフローとバゼルも無難に自己紹介を行い、早速渡辺社長による説明が始まった。


 先ず最初にすべきことは確認だ。

 東京で起きた出来事。それが示す未来の可能性。直接聞いた者にも再度思い出させる目的で彼は語り、内容に一切の嘘は含まれない。

 怪獣が何故人を襲うのか。そもそもあの時に出て来た存在は何なのか。そして、今後敵はどのような動きを見せるのか。

 予測を交えながらも、渡辺社長の言葉に誰もが引き込まれる。

 何せそこには真実がある。隠すことの出来ない人間の闇が、悪徳の山が、地獄の惨状が、ダイレクトに全て並んでいるのだ。

 全人類に責任がある。逃げようと思って逃げられるものではないし、立ち向かわなければ今を継続することは出来ない。


 渡辺社長は敢えて改善を求めなかった。

 この事態を未然に防ぐには、やらねばならぬ改善が難し過ぎる。不可能の域にある要求をしたところで無理だと結果が返ってくるだろう。

 そうするくらいならば次善策。即ち、怪獣を永遠に倒し続ける道を選択する他にない。


「我々は彼女の言葉を聞き、即座に行動に移しました。 生産拠点の地下に施設を設け、対抗兵器を開発したのです。 勿論これらはヴェルサスの協力無くしては不可能であり、現在も施設は完成しておりません。 辛うじて機体を出撃するゲートを構築出来ているのが現状です」


 本当の中に嘘を混ぜる。

 ヴェルサスであれば最速で地下施設を作ることも難しくはない。過去の大地震時に提供された大型3Dプリンターは一日もあれば二階建ての家の八割を完成させることも可能で、一週間以上もあれば機体の開発と地下施設の製作を平行して進めることも出来ないとは言えなかった。

 カメラが動き、機体が映される。

 三機が並ぶ光景は正しく壮観。テレビが当時未知の存在として報道した姿が目の前に現れ、当然のように鎮座している。

 空想の産物が現実に現れた為か、コメントの湧き具合も最高潮だ。空我が出てきた時でもこれほどの騒ぎにはならなかったろう。

 

 やはり明確に大型の怪獣を倒した実績がある。今も姿を隠して出撃しない空我と比べ、怪獣の規模が違うのだ。

 それに怪獣も大きいだけで弱い個体ばかりではない。装甲を破損させながらも挑む槍兵の雄姿は記憶に新しいものだ。


「今映っておりますのは、我々とヴェルサスの意見を統合して開発された機体達です。 便宜上Gシリーズと呼ばれ、それぞれG-01からG-03と番号が振られています」


 熱を込めるように語りつつ、場の支配権を強めていく。

 誰も彼もがのめり込んでいくような配信を作ることで悪感情を払拭させていき、自分達は必死であるのだとアピールすることで好印象を刷り込む。

 材料は無数にある。選ぶべき語彙も自然と湧き上がる。今この場において、渡辺社長は演技派俳優も真っ青な役者として振る舞っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ