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マッチポンプで世界が変わる!?  作者: オーメル


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人理変革急転直下

 ――緊急発表です!先日、人間の身体を持った未知の生物が東京上空に現れました!!

 ――渡辺社長は正式に未知の人間を怪獣と断定し、今後更なる激しい戦闘が予測されるとコメントしております!

 ――怪獣の襲来が絶えないのは人の悪意が原因か!?

 ――各分野の博士達が見解を発表しています。星が意思を持つ確率は零に近く、思考や感情発達に関する器官は発見されていません。

 ――〇〇教の司教です。今こそ我々は原罪を払う時が来たのです。


 津波が如くに発生する情報の数々。

 あの少女とレッドの語らいは東京中に広まり、各々が好きなように想像して拡散している。

 二人の言葉によって星には意思があることが明かされ、怪獣を嗾けているのが誰なのかも露になった。人々は自分が立っている大地そのものが敵であることを知り、壮大過ぎる話に付いていけていない。

 代わりに、重鎮足る日本の大臣は早急な説明をフォートレスに求めた。

 渡辺社長の冷静な会見放送は知っていなければ出来ないことであり、汗一つも流さずにいた姿からは全てを知っていると察することが出来る。


 当然ながら情報の共有は急務だ。渡辺社長も流石にこれは沈黙を貫けぬと正式に説明に向かい、重鎮達に驚きの真実を告げている。

 怪獣が人間を襲う理由は即ち、人々の悪意を排除せんが為。星による介入で怪獣はますますの力を付け、再度世界中の人間を襲うだろう。

 解決策は人が悪意を持たないことのみ。それは説明をしている渡辺社長も聞いている大臣達も不可能だと解っている。

 

「何故隠していたのかだけ、教えてはくれませんか」


 大臣の一人の短くも的確な質問に、渡辺社長もそうですねと呟く。

 黙っていたのはこれがヴェルサスの機密に直結しているから。それと同時に、人は危機に直面しなければ真実をありのままに理解しない。

 これが荒唐無稽な話であると誰もが思う。到底信じられぬものではないと切り捨て、結局人は失敗するのだ。

 そうなるくらいなら、危機が目の前に迫った段階で説明した方が信憑性が増す。件の代弁者も同じ説明をしたからこそ、最早それを嘘と断じることは不可能だ。

 我々の最大の敵は星そのもの。あるいは、人の悪意そのもの。

 どちらかを滅さねば怪獣は人を襲い続け、戦いは終わらない。けれど星も悪意も決して消えはしないものであり、戦いは永遠に続くだろう。


 何百年も何千年も、もしかすれば何万年先まで。

 遥か壮大な戦いの歴史の幕が開けたのだと渡辺社長は語り、誰しもが彼の言葉に激動の世を脳裏に過らせた。

 説明を終えた渡辺社長は早急にフォートレスに戻り、直ぐにレッドに連絡を取る為彩斗に電話する。

 彩斗はあの時には既にヴェルサスの本拠地の移動の手伝いをしており、この騒動そのものを画面越しで見ていた。

 窓口役として彼は渡辺社長の要請に了と返し、二日後にはレッドをフォートレスを召喚。何故かフローとバゼルも居たが、そんなことは構うものかと社長室で四人は顔を見合わせた。


「……とんでもないことになりました」


「ああ。 既に事態は機体を隠すことだけでは済まなくなっている」


「日本の慌てようは可愛いものだ。 海外では既に悪行を働く者に神の裁きをと宗教家達が動き出している。 更に刑務所への襲撃、悪名が轟いている有名人への暗殺未遂事件、人間同士の疑心」


「これまで半ば無視していたものを突き付けられたのだ。 反応が過敏となるのは当然だな」


 渡辺社長は三人の態度に違和を覚える。

 彼や彼女は非常に落ち着き払っていて、今回一番精神的に揺さぶられたであろうレッドも激情を浮かべてはいない。

 

「レッド殿。 あの少女は……」


「見た目は俺の妹だが、中身は星の代弁者だそうだ。 ……中身が違うのなら、俺は彼女を妹として見ることはない」


「ならあの激情は嘘であると?」


「……」


 レッドの言葉は真実だが、彼の全てを表したものではない。

 相手が本人ではないと解っている以上、殺すことに否は無いのだ。ただ、最も再現されてほしくない人物を再現した事実に彼は怒りを抱いている。

 今は烈火を表に出さずとも、戦場で暴れる機会があれば力のままに暴走するかもしれない。

 その際の被害は、流石の渡辺社長も考えたくはなかった。

 黙りこくった彼に静かに息を吐きつつ、今後の事について思考を巡らせる。


「貴方達の過去についてを私は詮索しません。 終わっていることをあれこれ言うよりも、今は先ず今後の動きです」


「道理だな。 回顧に浸るより先に未来だ。 兎に角、この状況で常時隠し続けるという真似は出来なくなった」


「ええ。 下手に隠し続けてはGシリーズに対して妙な不信を抱かれてしまいます。 早々に所属元を明かし、彼等が確りと人類の味方であることを証明しなければなりません」


 正体を明かすのはもっと先の話に本来はしていたが、所属不明のロボットが様々な国の傍で戦い続けることは人々の不安を煽る。

 そうなる前に発表し、安心と協力を取り付けた方がスムーズに事態は動く。

 特に蓮司達子供組が考えた案を実現するには人類同士の協力は不可欠。こんな状況になってしまったが、逆に団結をし易くなったと言える。

 とはいえ、いきなりフォートレス所属であると発表するつもりはない。今現在はヴェルサス所属とし、フォートレスに貸している体とする。

 その方が余計にフォートレスに擦り寄る輩が増えるだろう。今最も頼りになるのは間違いなくヴェルサスと通じているフォートレスであり、今後も彼等の商売が枯れることはない。


「レッド、事態が事態だ。 防衛の為、輸送速度の為、アラヤシキを直ぐにでも移動させるぞ」


「露見は避けられんな。 バゼル、ルートを算出しておいてくれ」


「了解した。 予定短縮の航行となれば、あいつらも喜ぶだろうさ。 俺も勿論、な?」


 Gシリーズだけでは戦力が足りない場合がある。アラヤシキには人員を国外へ飛ばす為の加速レールが備わっているが、全員を一斉に飛ばすだけの数は無い。

 地下に新たに作った機体用の加速レールを利用すれば、超能力者達の派遣もよりスムーズになる。

 バゼルは戦意を露にした狂相を浮かべていた。新たな闘争の気配を歓迎し、早く来いと願っているようでもある。

 このあたりは彼の良い部分だ。日常の中では異常者として見られる気質も、こと危機的状況であれば頼りに映る。

 

「地下基地も未だ完成とは言えない。 レッド、バゼル、本拠地を移動させた後に技術班を此方に回せ」


「仰せのままに、女王様」


「では此方は市井の方達向けに明かせるだけの情報を明かしましょう。 これからは――普通の方々の協力も欠かせません」


 各々がすべきことを定め、行動を開始する。

 フォートレスはヴェルサスへヘイトが向かないよう情報操作を開始し、その間にフローとバゼルは本拠地の移動準備を始めた。

 レッドは一人下に降り、訓練室に足を運ぶ。

 そこでは無数の人間が己の身体を鍛えている姿が見え、中には子供組も真剣な顔で混じっている。

 子供組の今日の教師はアントだ。模擬戦を行い、指摘しつつ動作を修正する作業を現在は行っていた。


「アント」


「これはレッド様。 お話はもう御済ですか?」


 恭しく頭を下げるアントの姿を他所に、子供達は一斉にレッドを見る。

 中でも蓮司の彼を見る目は強烈だ。敗北を刻み、寝ている間に全てが終わってしまったからこそ強くならねばと燃えている。

 反対に不安な眼差しで見ているのは奈々。未だ情報発信役としてでしか彼女は活躍しておらず、戦闘経験は何一つとしてない。

 レッドは子供組を見渡し、さてと内側で呟く。

 

 澪が語った激励。それはつまり、人類そのものを追い詰める行為であった。最早彩斗が想定する以上の規模で事態は大きく、同時に速度も求められてしまっている。

 彼等が少しでも安穏として暮らすには、実力を身に付けるしかない。

 今でもかなりの力はあるだろうが、所詮はそこまで。不安を抱かず、勇気を持って前へと進める人材に彼等は成長せねばならない。

 

「アント、暫くの間俺はこの子達の育成に回る。 その間出て来るであろう怪獣の討伐をお前に任せたい」


「っは、畏まりました。 では楓にも話を通してチームで対処します」


「本拠からも増援が来る。 そちらとチーム編成をしておけ。 四人一組だ」


「解りました」


「頼む。 ――ではお前達、これから忙しくなるぞ」


 言うだけ言い、彼は瞳に炎を灯しながら四人を見やる。

 彼の言葉には、拒否を許さぬ圧があった。

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