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マッチポンプで世界が変わる!?  作者: オーメル


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馬鹿二人

「見事な荒れ地! 実に開発し甲斐がある!!」


「実に同意ですな!!」


 荒れ地に二人、肩を組みながら叫ぶ男達が居る。

 その後ろには数十人程度のフォートレスの社員と幾人かのヴェルサスメンバーが居て、男達に呆れた眼差しを向けていた。

 購入した土地は元は畑だったが、今は持ち主が死亡して相続人も売りに出している。それを格安で買取り、本日開発に乗り出した。

 荒れ地はその名の通り、見た目は人の住める場所ではない。畑だった名残はあるも、草木は茂り放題で自然動物や虫が蔓延る安全とは言えない場所だ。

 そんな場所に行っても精々キャンプを楽しむくらいしか出来ないものだが、勿論此処には遊びに来た訳ではない。


「さて、では諸君。 これから我々はこの地に工場や道を作り、新たな生産拠点とする」


「説明は事前にしてあるから大丈夫だと思うが、各人安全管理は徹底するように」


 組み合っていた腕を解き、バゼルと渡辺社長は集まった面々にフォートレスで行った説明を再度行った。

 今回、この地に新たな工場を建てる。施設の製作は本来ヴェルサスのメンバーだけで行われていたが、今回からはフォートレスも積極的に参加することとなった。

 完成した施設の所有権は原則としてフォートレスの物となり、ヴェルサス側の権限よりも渡辺社長の権限の方が強くなる。

 よって、メンバー達が無断で生産品を変えることも内装を弄ることも出来ない。そして逆にフォートレス側は好きなタイミングで商品を変えることも、設備を増築することも可能だ。

 

 この工場の完成により、生産速度は五倍となる予定だ。

 滞りがちな予約品達も高速で出荷が可能となり、更なる利益を見込めるだろう。この段階で消費した資金は土地代だけで、これから燃料代等が掛かってくる。

 事前に渡された図面には幾つかの建築物が描かれ、詳細な位置や用意すべき材料の数や名前が記載されていた。

 それらは実際、工場を動かせるだけの要素が揃っている。しかし、参加する作業員達は明瞭な怪しさを感じていた。

 その理由は、第一として渡辺社長が張り切っていることだろう。


 社長が張り切ることはあっても、態々現地にまで来ることはない。

 進捗をフォートレスで聞きながら完成を楽しみにする程度で、だからこそこの場に居ることが異常なのだ。

 もう一つの理由は、ヴェルサス内でも最高位に位置する人間が指揮を執っている。

 バゼルの姿は久方振りに見たが、彼の身体から放たれる濃密な重圧は変わらない。多少なりとて身構えていたお蔭で気絶することはないが、だからといって気を抜くなんて真似は絶対に無理だ。

 

 最後に、この場所には子供組の姿もある。

 全員が参加し、彼等は基本的には窓口担当の彩斗が面倒を見ることになっていた。事前に厳しく注意されているのかその表情は硬く、けれど興味津々な様子も確認出来る。

 彩斗本人も近くに居るが、子供達に顔を向ける回数は少ない。周りからは放任をするつもりかと思われ、子供組は彩斗の感知内に入っていることを知っているので放任されているとは思っていない。

 

「……実際、どう思う?」


「いや、この段階で新しい工場を建てるって……どう考えても例のアレじゃん?」


 蓮司の僅かな声を隣で聞いていた奈々が答える。

 それは鳴滝もクルスも解っていたことで、けれど真実を知っている人間は僅かなのだろうとも周囲の雰囲気から察してもいた。

 生産施設はフォートレスの人間に向けた建前――ではない。

 もっと広い範囲の、それこそ世界に向けた建前だ。実際に工場の生産能力は高くはないし、増やせる時に増やしておくのは納得の出来る話。

 けれど、その裏で蠢いている別の計画があると皆は確信している。それがどんなものかを知る術は存在しないが、無いと考える馬鹿は居ないのだ。


「今は世間から余計な勘繰りを受けたくないのでしょう。 ここは我々も、普通の工場を作る気持ちで居た方が怪しまれることはないかと」


「余計な思考が余計な動きを生むということですね。 了解しました」


 奈々を除いた女性陣二人の会話に、蓮司も頷く。

 ヴェルサスが作ってくれると解った以上、協力しないなんて選択は蓮司達には無い。此処に子供組が居ることは不思議ではあるが、暇だったとでも告げておけば表面上は尋ねられないだろう。

 ――それに、今回の作業において年齢差による力の格差は無い。


「先ずは私達が準備した補助装備一式を装備してください。 資材は事前に設置しておいた機械が作り出しているので、担当のエリアにまで全て運んでから別けることを推奨します。 なお最初から破損していた場合や誤って破損していても再度生成は可能ですので、その点は御心配なく」


 荒れ地だらけの土地であるが、購入して暫くした後に開発エリアとは関係の無い場所に事前に生成装置を設置している。

 小型の発電機に接続されている生成装置は鈍い音を立てながら空気中の微小な分子を吸収し、内部で別の物質に変換して吐き出していた。

 それらは今は適当に地面に置かれているので、サイズを計測しながら運ぶ場所を決めなければならない。

 巨大な塊となっている資材も多く、そのような物を運ぶには人の手では難しい。

 重機を用いてトラックに一度乗せ、現地まで運ぶのが普通だ。その道理を無視するには、人体に補助器具を装着する他ない。


 今更ヴェルサスの技術力には驚くつもりはなく、彼等は鈍色の金属ケースに収められた器具を一つずつ腕や足に装着させていく。

 パワードスーツのように全体を覆う装備ではなく、今回貸し出されている装備は腕と足だけを覆う機械だ。それを装備したまま一番大きなコンクリートの板を持つと、まるで発泡スチロールの箱を運んでいるような感覚を味わった。

 重さを感じず、足取りも軽い。太腿までをカバーしてもらっているお蔭で服が土で汚れることもないままだ。

 

「おお、こいつは楽で良いな」


「背負った場合は元の重量を感じるだろうが、腕で持っている限りは何個でもいけそうだ」


「いやぁ、こういうのが自衛隊の頃にあったらなぁ」


 社員達の感想は悪くない。中には技術者として日々生活していた社員も存在し、どうにかこうにか自分達の技術で再現出来ないかと資材よりも器具を見ていた。

 子供達も装備は一緒だ。蓮司の場合はFMCを用いればもっと大量に運べるが、今は緊急の時ではない。

 何が起こるか解らないのだから、切り札は常に取っておくべきだ。ヴェルサスメンバー達も純粋な筋力だけで資材を運び、特に目立つ様子は無い。

 そのまま約半日を掛け、資材運びは無事に終了した。器具達に搭載されていたバッテリーは一割を下回り、社員達も歩き続けた所為で休息込みでも息が荒い。

 

 三つ分の建造物を作る為に少々急いだ結果だ。本当ならばもっと遅くとも良いが、張り切っている馬鹿が二人居る所為で一日目から疲れることになった。

 既に陽が落ち始めている。暗くなっても照らせる設備はあるにはあるが、今はまだ夜遅くになるまで作業する程ではない。

 やって来た際の車で社員達を全員帰し、その場には子供組とヴェルサスメンバーだけが残された。


「バゼルさん、張り切り過ぎですよ」


「そうか? いや、そうだったかもしれん。 つい気持ちが急いてしまったよ」


「完成を待ち望んでいるのは解っていますが、だからといって急がせては先にフォートレスの方々が参ってしまいます。 渡辺社長にも明日には注意しますが、指揮者として体力配分は考えてください」


「解った。 ――普段のお前達で考えた所為だな、これは」


 残った面々から、早速彩斗はバゼルに説教を行う。

 この場を澪から任せられた以上、過剰労働は断じて認める訳にはいかない。積極的に動く様子に、子供組は尊敬の眼差しを向けていた。

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