帰郷 2
イブキとカズキの背を見送って、シュウは気を引き締めた。村の大人は入り口の様子を遠巻きに見ていて近づかなかったが、子供たちは好奇心のが強いせいか、徐々に近づいてくる。
「……お前ら、カズキたちは家に戻ったぞ」
「わかってるよ」
「馬すごい」
「そっちの人強そう」
シュウは呆れて頭をかく。
「分ってんなら、家の手伝いしてこい」
追い払うように手を振ると、不服そうに子供たちは口をすぼめた。けれど、最近は嫌だとは言わない。男達がいなくなって、近くで戦が起こっていたと知って、村の空気が変わっていったことに、子供だって気付いていた。母親達は村を出て行かなかったぶん、子供たちは安心して村に残っていた。
いつか村を出て行く子もいるだろう。そう思うとシュウは大切に育てたいとも思うようになった。
「私のことなら気を使わなくていい。馬に乗るくらいなら構わない」
そう言って男は一頭、手綱をシュウに渡す。
「や、……うん。悪い。……甘やかしたくはないんだが」
馬が動くと、飛びつかんばかりにはしゃぎ始める。男が子供を一人、二人と馬に乗せていく。
「……確かに、この村で育ったのなら」
男はぽつりと呟いた。
「……この村は、まぁ自由過ぎるからね。その責任は一人一人重いけど」
ふと、男が訝しげにシュウを見る。
「よく見ればイブキに似ているな。雰囲気も」
シュウは少し、驚いた。そんな事を言われたのは恐らく初めてだろう。知っているのはシュウと母と、イブキだけ。イブキは父親似だが、シュウは母親の血を色濃く受け継いだのだろう、誰も似てるとは言わなかった。
「……異母兄弟。姉貴の父に母が助けられて、仲良くなって、おれが生まれたって」
シュウは姉弟と言われても気にはしなかった。けれどイブキを見ていると、それは裏切りのようにも見えて、シュウとシュウの母親は口を閉ざしていた。
「おれは、小さかったからよく覚えてないけど。姉貴と父は仲が悪くて。姉貴は中々帰って来なかったんだ。姉貴は優しいから何も言わないけど。本当は、嫌なんだと」
「……それは無いだろう」
そう断言する男に、今度はシュウが疑問の目を向けた。
「あいつは自由がいいと言ったよ。不用意に干渉しなければ嫌われることは無いだろう」
「……確かに。間違っていない」
村の大人はほっとけばいいと、その一言。それはイブキに対してだけの言葉でもあった。子供たちが森で迷ったときは村人総出で探し回るが、イブキに関しては何もしなかった。今思えば、それは異様な、異質な光景でもある。
「でも、なんで……」
「……近いうち、貰うか世話になるかどちらかだ」
よろしく頼むと言われて思考が止まり、シュウは目をひん剥いた。
「……いつの間に」
イブキに変わった様子はなかった。けれど村と関係ない男が嘘を言う利点もない。シュウは疑い半分で、狼狽しながら頷いた。
「……まぁ。大事にしてくれるなら」
「こっちは逃げられないよう必死なんだがな」
頼りない言葉が溜息と共に零れたのを聞いて、シュウは内心そうだろうな、と頷いた。
ここまで読んでいただきまして有難う御座いました。色々と消化不慮な部分が多く、上手く描けなかったのに心苦しくも思いますが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。




