009-要修正グラビアアイドル
校長先生の一件から一週間程が経過した。
やっぱりね、あの洞窟は校長先生が所有する土地建物と繋がっていたんだ。
しかも、調べてみたら、彼は奥さんと子供二人の四人家族……。
そして現在はその全員が行方不明。
つまり、今回も一家全員がレプテリアンだったと考えるのが妥当……そんな状況さ。
因みに、レプテリアンの計画に優凛タンが関わっていたという事実はないよ。
でもね、奴等は何らかの形で優凛タンを利用するつもりでいた、とアイネスは考えているみたいなんだ。
となると、ヤバイ……よね?
奴等の計画とやらが何なのかはさっぱり分かっていないけれどさ。
でも、その計画が今も続いているとしたら、優凛タンが危険って事だよね?
レプテリアンもまだまだ何処かに潜んでいそうな氣がするし……。
まあ、それはさて置き、今日はセイクリッドネストに来ている。
日曜日だから、朝からずっと地下空間の拡張作業をしていたんだ。
この作業にもかなり慣れたからね。
結構なペースで進んだと思うよ。
因みに、午後からは読書をする予定。
そろそろ本格的に人員増強しないと皆が大変そうだからね。
だから、一発でその問題を解決できそうなアイデアを探しているんだ。
個人的には、四月中にはある程度のメドを付けたいな、と思っているんだ。
ゴールデンウィークは何の氣兼ねもなく、思う存分楽しみたいからね。
そうそう、ドワーフ達が言っていたんだけれど、セイクリッドネストがある切り株山って超巨大な木の化石らしいんだ。
何でも珪素を主体とした樹木だったらしく、それが根本の辺りで折れた後に化石化した事で現在のような姿になったらしいのだけれど……。
本当なのかな?
でもね、土の中から大量の水晶は出て来たんだ。
僕は実際にドワーフ達が採掘していたのをこの目で見たからね。
彼等が言うには、元々根っ子だったものが化石化した事で水晶となったらしいんだ。
まあ、正直なところ、切り株山が超巨大な木の化石なのかどうかは僕には分からないよ。
でもさ、ロマンは感じるよね。
まあ、そんなこんなで、今は休憩をしているところだよ。
お昼ご飯を食べ終え、皆でゴロゴロ……まあ、そんな感じ。
「ねえ、ステファン?」
「うんん……何かな、アイネス?」
「プレイアのエイリアスってどうなったのかしら?」
「プレイア……? ああ……トンカツ屋で遭遇した謎の宇宙人プレイアの事ね……」
あの異常なまでの美しさと感じ取れた途轍もなく深い何か……。
そして、まるで全てを見透かしていたかのような瑠璃と紫の異色瞳……。
あの時目にした美貌が脳裏にありありと浮かぶ。
「ええ、そうよ。確かプレイアのエイリアスって、数ヶ月以内には完全に消えてしまうのよね?」
「うんうん……本人がそんな風な事を言っていたね」
「まだ貴方の中には纏える状態で残っているのかしら? あたしまだ彼女の顔を知らないのよ。今後の為にもちゃんと記憶しておきたいわ」
「うーんと……まだ在るみたいだ。でも、ちょっとだけだよ?」
「ええ、分かっているわ。数秒で構わないわ」
「了解。じゃあ、へ~ん身っと!」
プレイアのエイリアスを纏うと何となく変な感じがする。
特に何かが起こる訳ではないけど、心地好くはないね。
だから、殆んど纏った事はないんだ。
「驚いたわ……あたしが信仰する女神アルシェミナ様にも匹敵するような美貌じゃない!」
「えぇえぇ、アイネスの言う通りですわ! ステファン様が女神になられましたぁ!」
「アイネス姉もマキア姉もちょっと大げさ……って思ったけど、ホントだね! あれぇ、光ってない?」
「うんうん、金粉が舞ってそう! プロが修正したグラビアよりも断然綺麗っ!」
想像していた通りの反応だよ。
やっぱり誰の目にも驚嘆に値する美貌として映るんだね。
でもね、もう限界。
ホント何なんだろうね、この変な感覚は……。
「ああ、もうこれ以上は耐えられませんわ。では、へ~ん身っ!」
皆が残念そうな顔をしている。
でも、仕方ないよね。
この僕がおっぱい見る氣にすらなれない位なんだからさ。
「ところで、優凛……貴女のグラビアも修正してあるかしら?」
「え? そういう事ってあるのですか?」
「あー、それボクも氣になる!」
アイネスが投げかけた際どい質問の答えに、エルフ姉妹も興味深々と言った感じだ。
食いつくような目で優凛タンを見つめている。
ホント、アホな質問するよね。
超人氣グラビアアイドルの優凛タンに限って…………ん?
「そ、そ、それは…………えーと……あははは……な、な、内緒……かな?」
「ふーん……ねえ、ステファン?」
アイネスがじーっと僕を見つめている。
そして、動揺を露わにした優凛タンを指差しながら……。
「な、何だよ」
「うふふふ……あたしの勘では百パーセント修正済みよ!」
「――ぼ、僕にその話題を振らない欲しいなっ!」
あまりにも危険過ぎる話題だよね。
こんな時はガラッと雰囲氣を変えて、強引に話題をすり替えてしまうのがベターな選択だよね。
そうそう、プレイアのエイリアスを纏ったらやっぱり変な感じがしたし、ついでに確認しておこっと。
「くふふふ……一応確認しておくが、プレイアのエイリアスを纏う前と後で、僕に関する事で何か変わった事はあるか?」
「うーん……ボクは何にも変わっていないと思うよ、ステファン様」
「わたくしもルキアと同じですわ、ステファン様」
「うんうん、私も特に氣になったところはないよ。うふふ……ありがとう、ステファン君」
ありがとう……って、もしかして話題を変えた理由に氣付いちゃった感じ?
僕、優凛タンに感謝されちゃってる!?
ああ~、ノリノリにノッて来たよぉぉぉ!!
「ふむふむ……となると、プレイアのエイリアスは僕に悪戯はしていない……くふふふ……まあ、分かってはいたが…………ところで、アイネス、一応君の意見も聞いておこう」
「うふふ……かなりイメージが変わったはずだわ」
アイネスの表情は至って真面目だね。
となると、洞察力の鋭い彼女には何らかの変化が感じ取れて……いる?
あれれ、無駄にカッコつけてる場合じゃなかったりする?
「マ、マジで?」
「ええ、大マジよ。だって、ステファン――――優凛のグラビアが修正済みだって知っちゃったじゃないっ!」
「――おい、アイネス、ちょっと黙っててくれる?」
~あっという間にゴールデンウィーク。
ゴールデンウィーク初日の本日、僕は海辺にほど近いとある場所にやって来ている。
実はね、優凛タンの付き人として今日一日頑張る事になったんだ。
何でも、彼女が所属している芸能事務所のスタッフだけでは数が足りないんだってさ。
因みに、僕の護衛としてアイネスが漏れなく付いて来ているよ。
所謂オマケというやつだ。
「ねえ、優凛タン、これからこの場所で一体何をするの?」
目の前には木々に囲まれた青々とした芝生が広がっている。
何も無く誰も居ない十メートル四方程のエリアだ。
だが、その木々の向こうには幾つもの人影が見え隠れしている。
それに、時折キラキラとした光の反射も……。
「えーとね……抽選で選ばれたファンの人達があの木々の向こう側から思う存分写真撮影をする、って言う企画なの。だから、ステファン君は芝生の中には入らないでね」
「ふむふむ……要は撮影会って事だね。じゃあ、僕達は暫くこの場所から見学していればいいのかな?」
「うん、ステファン君はそうだね。でもね、アイネスには、もしも変な人が近づいて来ちゃったら、私の事を守って欲しいの」
「ええ、了解したわ。要はステファンが優凛に近づいたら殺っちゃってもいいのよね?」
「――そ、そうじゃないと思うけどっ?」
あれれ?
もしかして、僕の方がオマケだった感じ?
優凛タンが本当に必要としていたのは、僕を誘うと漏れなく付いて来るアイネスの方だったの?
だが、それでも構わんっ!
だって、これから目の前で始まるのは優凛タンの撮影会だもんね!
ならば、グラビアアイドルが水着にならないはずがないっ!!
「天氣も良いし、氣温も高めだし……ぐひひひ……水着になれない理由なんて一つもないよね」
のびのびに伸びてしまっているであろう鼻の下を片手で隠しながら腰を下ろす。
この場所からならば、最高の眺めを期待できそうだよ。
優凛タンが一瞬にして着替えを済ませた。
さすがはイグジストと言っておこう。
だが、それじゃないっ!
「えーっ! み、水着じゃないの?」
「あははは……そんなに驚かなくても……えーとね、芝生の中央でこの黄色いミニのワンピースを脱ぐところから撮影が始まるの」
「そ、そういう段取りだったのね」
優凛タンの隣にやって来たアイネスが黄色いワンピースの裾を摘まんだ。
そして、軽く笑みを浮かべ……。
「とっても素敵よ、優凛……バナナよりも黄色が似合っているわ」
「……あ、ありがとう、アイネス……あはは」
「うんうん、バナナよりもバナナに見えるよ、優凛タン!」
「――っ!」
無言のまま僕を睨んだ優凛タン……。
もしかして、バナナが好きじゃない……?
一方アイネスは笑みを浮かべ、うんうんと首を縦に振ってくれている。
「でも、優凛……貴女ってば大勢のファンの前で水着になっちゃっても大丈夫なのかしら?」
「うーん、確かに心配だよね……生優凛タンの生水着には相当な破壊力があるだろうし……」
「だ、大丈夫よ……私のファンはマナーが良い方……だと思うし……」
すると、アイネスが悪戯な笑みを浮かべた。
「くすっ、そういう意味じゃないわ。だって、優凛、貴女ってば――――要修正グラビアアイドルじゃないっ!」
「「――ア、アイネス、ちょっと黙っててくれる?」」
撮影会が始まり、芝生の中央で様々なポーズを数分間とり続けた優凛タン……。
その後、はにかむような笑みを浮かべながら、ワンピースの裾を摘まんだ。
そして……。
「うひょ~! 来た来た来た来たぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ステファン、ちょっとはしゃぎ過ぎよ!」
「で、でもさー、遂に優凛タンの――」
「静かにして! ちょっと様子が変じゃないかしら?」
芝生エリアを囲んでいる木々……。
それらが激しく揺れ始めた。
だが、強い風が吹いている様子はない。
「……木も……興奮している……とか?」
「馬鹿なの? そんなはずないじゃない」
そうこうしている間に、お臍の辺りまで捲り上げられていたであろう黄色いワンピースが一氣に脱ぎ捨てられた。
すると、純白ビキニの優凛タンがっ!
「むほほ~んっ!」
音楽に合わせ、踊り始めた優凛タン♪
こちらに向けていたお尻を左右に揺らしたかと思うと、身体をグルッと回転させた。
すると、可愛らしいお臍の下には、綺麗な綺麗な紋様がっ!
「――うひょひょひょぉぉぉぉぉぉっ、淫紋じゃ~んっ!!!」
――バンザーイ! バンザーイ! バンザーイ!
左右に揺れ続ける優凛タンのお尻……。
待てども待てども回転してくれない。
「も、もう一度淫紋を……」
うっかり願いを声に出してしまった瞬間、状況が一変した!
木々が暴れ出し、無数の木の葉が芝生エリアを舞う。
「あらあら……優凛が心配していた通りに……。でも、ステファンは正氣を保っている……これも予想していた通りね」
ファンに向かって手を振っていた優凛タンが一瞬にして硬直した。
こちらからは見えないけど、恐らくは表情も凍り付いているはずだ。
木々をなぎ倒すかのような勢いで、ファン達が一斉に芝生エリアに雪崩れ込んで来る!
「じゃあ、ステファン、そこでジッとしているのよ。ちょっと仕事して来るわ!」
目にも止まらぬスピードで芝生エリアに飛び込んだアイネス。
その身体は既に紫色の魔力で包まれていた。
「――マ、マジで? こ、こんなところで魔法をっ!?」
アイネスを起点とし、扇状に広がってゆく紫の波動。
錯乱状態にあるファン達を容赦なく薙ぎ払う――――!
アイネス・ダークネスは、僕がこの世界に現界させたダークエルフ……ファンタジーな存在だ。
そして更には、アダマンタイトキャットのマテリアルとも融合を果たし、彼女の戦闘力は飛躍的に向上している。
どこぞの国の軍隊でさえ、彼女には敵わない程に……。
そんな彼女が……。
進化したイグジストがその力を行使してしまえば――――!
「……や、殺っちゃったよ」
「あら、ステファンったら……あたしがそんなへまをすると思うの?」
いつの間にか隣に戻っていたアイネス……。
その表情は平然としている。
……あれ?
「で、でも……普通の人間があんなものを食らっちゃったら……」
「うふふ……大丈夫よ、威力も範囲もちゃんとコントロールしておいたわ」
ほんの一瞬、たったの一撃であんなに強そうだったレプテリアン三体を真っ二つにぶった切っちゃったんだよ?
グラビアアイドルオタクなんて一溜まりもないって思うのが普通だよね?
「そ、そうなの? じゃあ、水鉄砲から核ミサイルまで威力を自由に調節できちゃう感じ?」
「くすっ……まあ、そんな感じよ」
「って事は、あの人達は氣絶しているだけって事?」
「ええ、そうよ」
「ああ良かった……安心したよ」
「まあ、それはさて置き、実は……と、その前に、貴方には説明しておく必要があるわね。あのね、優凛は……」
イグジスト女子四人の中で優凛タンは最弱。
と言うより、そもそも戦闘能力を高めようなどという志を彼女は持っていない。
それでもイグジストはイグジスト……。
望む望まぬに関係なく、彼女の中には突出したポテンシャルが存在していた。
そんなこんなで、いつの間にか人々を魅了する能力が生まれていたらしいんだ。
でもね、イグジストとして何の鍛錬もしていなかった彼女には、それをコントロールする術がなかったんだってさ。
そのせいで、彼女の周囲ではちょくちょくとトラブルが起きてしまっていたらしいね。
始めは、マネージャーやスタッフに軽く抱き着かれる程度だったらしい。
でも、それが日に日にエスカレートしてゆき……。
イグジストはマテリアルとの融合が可能。
そしてその融合を果たしたイグジストの下腹部には独特な紋様――淫紋――が出現するらしいんだ。
初耳の情報だけれど、マテリアルの核とやらがその紋様なんだってさ。
そう言えば、青スライムの核がどうのこうのと優凛タンが以前言っていた氣がするね。
淫紋は常に浮き出ている訳ではないんだってさ。
通常は、イグジストの精神状態によって現れたり消えたりするみたいだね。
でも、優凛タンの淫紋だけはそうではないらしい。
常に浮き出たままで、一瞬たりとも消える事がないんだってさ。
つまるところ、そんな優凛タンの淫紋の状態こそが今回の騒動の原因……。
そういう事らしいよ。
「……まあ、そんな訳なのよ。だから、ステファン、貴方には優凛が氣絶している間に、彼女の淫紋を人目に触れないようにして欲しいのよ」
「ああ……りょ、りょ、了解…………そ、それで……ど、ど、ど、どんな風に隠すのが一番効果的なのかな?」
激しくドキドキしているっ!
だって淫紋だよ?
優凛タンのお臍の下だよ?
などと考えていると、アイネスがちょっとだけ怖い表情を見せた。
「どう隠す……? そうね……ビキニのパンツをお臍の方に思いっ切り引っ張り上げてしまうのが一番効果的だと思うわ」
「えー、そんな事をしちゃったら…………って言うか……ぼ、ぼ、僕がそれをやっちゃって……ゆ、ゆ、許されるの?」
「絶対に許されないでしょうね。目を覚ました優凛にコテンパンに殺られてしまいなさいっ!」
「ア、アイネス? この状況でふざけてる?」
「貴方が馬鹿な事を聞いて来るからよ。そこに落ちているワンピースを被せるだけで済む話でしょ?」
「……ちょっとテンパってたみたいだね」
焦ると人ってアホ化しちゃうよね……。
兎にも角にも、問題は解決した。
実はね、今日のイベントにアイネスが付き添う事は以前から決まっていたみたいなんだ。
そんなこんなで、優凛タンは僕に一日付き人をお願いしてきた……まあ、そんな流れだったみたいね。
でもね、今回のイベントにはもう一つ別の理由もあったみたいなんだ。
そしてそれは、淫紋の効果等を調べる為だったらしいよ。
確かに氣になるよね。
だって、ファンが一斉におかしくなってしまったのは紛れもない事実だからね。
それにマテリアルと融合した全てのイグジストには淫紋が存在しているらしいし……。
今後の為にも更なる調査が必要かもね。




