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022-芸能事務所キョニュ~ン

 アイネスと優凛によれば、総合レプレプ研究所の爆発は、燃えた破片が四方に飛び散る程のかなりの爆発だったらしい。

 しかも、周辺の森林が多少燃えてしまったりと……まあ、地上ではそこそこの被害が出ていたようだ。

 にも拘わらず、その情報はテレビで流されることもなく、地元の新聞の片隅に小さく掲載された程度だった。


 あれから十日程が経過したけど、あの出来事の真相を知るのは僕達とレプテリアン共だけかもしれない。

 地元民も、無名の研究所に設置されていたソーラーパネルが爆発した、という程度の出来事としか思っていないようだ。

 警察でも、総合レプレプ研究所は倒産し、給料不払いにより一部の社員がソーラーパネルに火をつけた、という事になっているらしい。

 しかも、関係者は全員が何処かに雲隠れし、誰一人として見つかってはいない、という感じのようだ。

 少なくともアイネスが調べた限りではそうなっていたらしい。


 当然ながら、総合レプレプ研究所の下に地下空間が存在している事には誰も氣付いてはいないようだ。

 まあ、あれはイメージで地上に近い部分は埋めておいたから、誰かが本氣で穴を掘らない限りは発見される事などはないと思うけど……。


 普通に考えれば、意味もなく十メートルとか掘っちゃう物好きなんてそうそう居ないよね?


 因みに、現在猛スピードでセイクリッドネストの拡張作業を行っている。

 主に僕とドワーフ達でね。

 今年中には、総合レプレプ研究所の地下空間と繋がる予定。

 中学卒業後の事を考えた上でね。


 アイネスの推測によれば、何らかの組織の働きかけにより、総合レプレプ研究所関連の情報をマスコミがもみ消した可能性が高いらしい。

 警察も同じ組織の意向により、捜査を短期間で打ち切った、と考えられるそうだ。

 正直なところ、彼女の推測が正解なのかどうかは僕には分からない。

 でも、その可能性は十分にあり得る……そう思っている。

 アイネスも継続して調査を進めるらしいし、その内新たな情報が入るかもしれない。


 まあ、それはさて置き、世のオタク共は大々的に売り出し中だったレプ乳キョキョンが突然解散してしまった事に大騒ぎしている。

 しかも、全員が海外に行ってしまった、と……まあ、そんな情報がネットでは流れている。

 僕もレプ乳キョキョンのユリアちゃんが結構好みだったから凄くショックなんだ。


 まあ、それもさて置き、夏休みも十日程が過ぎ、明日から八月……。

 地下空間の拡張やら何やらと、セイクリッドネストでやるべき仕事はまだまだ沢山あるけれど、そろそろ何処かに遊びに行きたい氣分。

 惑星イアにも結構長い事行っていないし……。 


 などと思いつつ、セイクリッドネストの僕の部屋へと続く通路を歩いていると……。

 

「ん?」


 角を曲がったら、扉にもたれ掛かっている人影が見えた。

 丁度、僕の部屋の前だね。


 三歩戻り、軽く髪を整える。


 一日の仕事を終え、部屋に戻って来た僕……。

 そして、そんな僕の帰りを今か今かと首を長くして待ちわびている超人氣グラビアアイドルの優凛。


 ああ、何とロマンティックな展開だろうかっ!


 しかも、アイネスはドワーフ達と打ち合わせの真っ最中だろうし、マキアとルキアはもやしの収穫をすると言っていた。

 つまり、暫くは誰の邪魔も入らないであろう最高のタイミングっ!


「くふふふ……遂にこの時が来たかっ!」


 歩みを再開する。


 真っ直ぐな通路を一人颯爽と歩く僕。

 そして、彼女の耳に足音が届いたであろうタイミングを見計り、さりげな~く話し掛ける。


「あれ、優凛じゃん、そんなとこに座っちゃって……ふっ、どうしたんだい?」


 こちらを振り向いた優凛……。

 すると、その美しい瞳にはキラキラと輝く涙がっ!


「……あれ?」


 何故か泣きながら鳥の丸焼きに噛り付いていた。

 上唇が鼻水でテカテカと光っている。


「あ、ズテバァン……やっどぼどっで来だので」


「……そ、それ……泣くほど美味しいの?」


 よくよく見て見れば、彼女の足下には空き瓶が転がっていた。

 どうやら僕の部屋の前で真っ昼間から一人酒盛りをしていたようだ。


自棄食(やけぐ)いじでるど……ぐずぐず」


「あ、そうなんだ……で、何でまた?」


「え~んえ~ん」


 酔っ払いと駄々っ子がガッチリと融合しちゃってるね。

 これは相当に手強そうだよ。


 でも、ここは彼女の話をちゃんと聞いてあげるべき場面……だよね?

 そうすれば、きっと次の機会に繋がるはず……だよね?


「まあ、兎に角、僕の部屋に入りなよ」


「うん……じゃあ、おしっこ貸じでね」


「……え?」


 よろけながら立ち上がると、蛇行しながらも一目散にトイレに駆け込んだ優凛……。

 部屋の中から流れて出て来た空氣があり得ない程に酒臭い。

 

 僕のロマンティック返せよっ!



 優凛が酒に走ってしまった理由……やはりと言うべきかグラビアアイドルとしての仕事の件だった。

 今のところ、何故か芸能事務所キョニュ~ンは潰れてはいないらしい。

 ただ、優凛の仕事は全く無いそうだ。

 スケジュールは真っ白で、仕事が入る氣配すらないらしい。

 稼ぎ時の夏休み期間中だというのに……。


 とは言え、そんな彼女に対して僕ができる事と言えば、只々話を聞いてあげる事ぐらい。

 目一杯頑張ったとしても、彼女が所属するキョニュ~ンにクレームの電話を入れるぐらいが関の山だろうね。

 所詮は中学生でしかない僕にできる事と言えばその程度しか思いつかない。


 そうそう、彼女が合法的にお酒を飲める歳だったのにちょっと驚いた。

 ササラお姉ちゃんと同い年だと思っていたのだけれど……。

 あ、でも、同じ高校三年生だというのは変わりないみたいだね。

 優凛の売り文句に”現役女子高生グラビアアイドル”っていうのがあるしね。

 まあ、きっと色々な事情があるのだろうね。


 ああ、早く優凛の新しいグラビアを見たいなあ……。




~約半月後。


 芸能事務所キョニュ~ンが十日前程から完全復活したらしい。

 新たな経営陣も決まり、通常通りに営業しているようだ。

 そのお陰で、優凛のスケジュールもかなり埋まったそうだ。


 一方、僕はセイクリッドネストに入り浸りだ。

 特に急ぎの仕事はないのだけれど……何となく来ちゃうんだよね。


「あら? 随分と不機嫌そうね」


 部屋の扉を開けるアイネスがソファーに座っていた。

 約束した憶えはないのだけれどね。

 きっと彼女も何となく来ちゃうのだろうね。


 でもね、アイネス専用の部屋もちゃんとあるんだよ?


「……単なる寝不足だよ」


 だってさ、ここ最近、優凛が頻繁に念話を繋げて来るんだ。

 仕事が入って嬉しいのは分かるし、僕もそんなに嫌ではないけれど……。

 でも、毎晩はちょっとキツいよね。

 だって、僕は夜九時には寝るタイプ……。

 だけど、優凛はそれよりも遅い時間に繋げて来るんだ。

 

「あら、何か悩み事でもあるのかしら?」


「いや、そういう訳じゃないけど……」


 一々詳細に説明する必要はないよね。

 優凛だって、何時までも深夜に念話を繋げては来ないだろうし……。


「ああ、そういう事……つまり、寝不足の原因はこのあたしなのね」


「……へ?」


「うふふ……」


 ひょっとして、この小娘はアンポンタンなの?


 いやいや……【夜明けのストラーダ】の作家は兎も角、アイネスの脳ミソは超高性能だよね。

 って事は、態とボケてる感じ?


 ならば、ノッてあげないとね!

 だって、僕の方がちょっとだけ年上だもんね。

 

「そうそう、ベットの上に変な縮れ毛が落ちててさ……やっぱりアレってアイネスの――」


「――そういうのは生えていないわ!」


 ――マ、マジですかぁぁぁぁぁっ!


 す、す、凄いこと聞いちゃったね!

 女体の神秘に近づいてる?


「そ、そ、そ、そうなんだ……あはは」


「あら? 何動揺しているのかしら? ふふっ……ステファンったら意外と初心なところがあるのね」


 ――か、揶揄(からか)われてましたぁぁぁぁっ!


 と、と、年下少女に遊ばれている場合じゃないよね?

 しょ、勝負はまだまだこれからだよね?


 年上の威厳ってやつを見せつけてやらないとねっ!


「お、おほん……えーと、じゃあ、何でアイネスが原因だと思ったんだ?」


「そうね、はじめに謝っておくわ……ごめんなさい……でもね、まさか寝れなくなってしまう程の大事だとは全く思わなかったのよ」


「ふーん……じゃあ、まあ、許してあげるよ」


 どう?

 器がデカい感出てる?


 無条件で許し、余裕の笑みを浮かべる。

 これぞ年上ってな感じだよね?


「ありがとう、ステファン……次は、鼻毛くらいで止めておくわ」


「……鼻毛? まあ、そうしてくれたら助かる……のか? で、一体何をしたの?」


「あのね、昨日あっちの家に行ったでしょ? その時に、優凛の新しいグラビアにこっそり落書きしちゃったのよ。何となくあの笑顔が腹立たしくて……」


 ――マ、マジですかぁぁぁっ!


 それって、まだ未発表のやつだよね?

 撮りたてホヤホヤの画像を優凛が態々印刷して届けてくれたやつだよね?


 でもでも、動揺の色を見せちゃいけないよね?

 と、と、年上の威厳ってやつを見せつけてやらないとねっ!


「そ、そ、そ、そうなんだ……あははは……き、昨日は優凛のグラビアを見ずに寝ちゃったんだよね」

 

「あら? 毎晩欠かさずクロコちゃんに話し掛けているのよね?」


 ――ガーン!


 何で知っているの?

 アイネスには話してない……よ?

 ハッカーだとそんな事まで分かっちゃうの?


「……」


「あら、言葉を返せないなんて……うふふ……図星だったようね」


 ――か、鎌を掛けられちゃいましたぁぁぁぁぁっ!


 ま、まだまだだよね?

 ここからが本番……だ、だよね?


 と、と、年上の威厳ってやつを……。


「あはは……因みに、どれに落書きしちゃったのかな?」


「五枚全部よ!」


「あ……」


「全ての顔とお腹をへのへのもへじにしてやったわ!」


 ――バーカ! バーカ! バーカ!


 ああ……何かもうどうでもよくなっちゃた。

 話題変えよっと。


「……ところで、キョニュ~ンって何で潰れなかったの?」

 

「とあるハゲのファミリー企業が資金を出したのよ」


「とあるハゲ……?」


「元代議士……数年前までは政界のドンと呼ばれていたハゲよ。引退し、息子に跡を継がせたようだけれど……あのハゲ、何かと怪しいわ」


 嘗て……と言うか、【夜明けのストラーダ】の作中で、アイネスは酷い目に合っているからね。

 ハゲを目の敵にしているんだ。


 まあ、それはさて置き、ちょっとばかり臭うよね。

 元代議士とやらは人間じゃないかもしれないね。


「くふふふ……新たな蜥蜴がのこのこと姿を現した……つまりは、そういう事だな?」


「ええ、その可能性が高いわ。調査がある程度進み次第、皆の前で報告するつもりよ」


 どうやらキョニュ~ンと優凛の問題はまだ解決には至っていなかったようだ。

 想像していたよりもずっとずっと根が深いのかもしれない。




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